◆ 魚肉軟化と細胞外マトリックス分解 ◆

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 1.魚肉の軟化とは?  2.冷蔵中の筋肉構造の変化  3.体を支える細胞外マトリックス
 4.コラーゲン分解に関わる酵素  5.魚の組織中のコラーゲン分解活性  6.産卵期のアユでの活性発現
 7.刺し身の軟化に関わる酵素活性  8.軟化に関わる酵素遺伝子  9.TIMP (MMP阻害タンパク質)
10.死後でも生きている? 11.今後の課題 12.お礼

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7.刺し身の軟化に関わる酵素活性

■ 金属およびセリンプロテアーゼが魚肉の軟化に関わっている

   魚肉の軟化がタンパク質分解酵素の作用で生じるとすれば、これらの酵素の阻害剤が筋肉内で作用すれば軟化が抑制できるのではないかと考えました。そこで、京都大学の木下先生らのグループは、金属プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼの阻害剤をそれぞれヒラメの動脈に注射し、15分放置後、魚を〆て、直後と6時間冷蔵後の硬さを比較しました(Kubotaら, Fish. Sci., 67, 965-968 2001, 下図)。


   セリンプロテアーゼやシステインプロテアーゼ阻害剤を注射した場合は、冷蔵6時間後にBreaking Strength(硬さの指標)が対照同様減少しましたが、金属プロテアーゼ阻害剤を注射した場合はその硬さの減少が抑制されました。1.10-Phenanthrolineを注射するときに溶かしていた1% Ethanolだけを注射しても抑制は起きなかったことから、この軟化抑制はプロテアーゼ阻害剤によるものと考えられます。この結果は、魚肉の軟化に金属プロテアーゼが関与することを示していました。
   一方、水産総合研究センター中央水産研究所の山下先生らのグループはティラピアを材料とし、心臓からプロテアーゼ阻害剤を全身に流す還流法を用いて、セリンプロテアーゼ阻害剤などに効果が見られることを明らかにしています(参照)


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