海産着生微小緑藻アワミドリの細胞成長と細胞の微細構造の特徴
内門 千鶴(細胞生物学研究室)

 アワミドリ(Blastophysa rhizopus)は分類学上の位置が未だに確定していない海産の微小な多核緑藻であり,主に紅藻の体表面に着生または体組織に内生している。4本または2本の鞭毛を持つ生殖細胞を放出することが知られているが,細胞の微細構造については明らかにされていない。
 本研究では,アワミドリの成長過程を観察するとともに,細胞の微細構造,特に細胞壁中のセルロース微繊維の形態と配列様式を電子顕微鏡で調べ,以下の結果を得た。1. 細胞の成長は管状の匍匐枝の伸長によるが,細胞質はその伸長部に局在した。2. 細胞は1〜20個の核がランダムに分布している多核体であった。3. 細胞質層はミドリゲ目多核緑藻細胞と異なり,1層であった。4. 細胞壁はいくつかの層をなした。5. 細胞壁繊維要素は直角に交叉する配列ではなかった。6. 化学処理によって得られた不溶性の繊維成分は,セルラーゼの一種(CBH-I)を結合させたコロイダルゴールドによってラベルされることから,セルロースであると同定された。7. セルロース微繊維の幅は平均10.1 nmで,厚さは平均4.2 nmであった。8. フリーズフラクチャー法によってセルロース合成酵素複合体の観察を試みた。これらの結果に基づき,アワミドリの成長様式,細胞の微細構造,セルロース微繊維の大きさなどの点について,他のいくつかの緑色植物と比較し,アワミドリの細胞の特徴を明らかにした。

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