紅藻2種の配偶子表層の組織化学的性質
大西 美智子(細胞生物学研究室)

 紅藻類の受精は,鞭毛を持たない不動精子と,雌性配偶子上に形成された卵細胞の受精毛が接着,融合することによって行われる。これまでに,イギス目イギス科の精子のレクチン処理と,雌性配偶体の特異糖処理により,配偶子接着が阻害されることが知られている。だが,雌性配偶体における糖鎖結合活性や,他の多くの分類群の紅藻における配偶子表層の組織化学的性質は不明である。
 本研究では,同じイギス科カザシグサGriffthsia japonicaとカギノリ目カギノリBonnemaisonia hamiferaの雌雄配偶子表層の組織化学的性質が傾向標識レクチンと蛍光標識糖鎖プローブにより調べられた。今回使用した14種のレクチンのなかで,マンノースを特異糖とするレクチンConAとLCAのみが精子表層に結合した。一方,雌性配偶体では,カザシグサは受精毛を取り巻くように形成される毛状葉にマンノース蛍光標識プローブの結合がみられた。また,カギノリでは,雌性配偶子上の受精毛自体にマンノース蛍光標識プローブが結合した。
 以上のことから,これらの紅藻の受精において,精子の表層糖鎖と受精毛,またはそれを取り囲む毛状葉の表層レクチン様物質が受精における相互認識に関与していることが示唆される。

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