新植物活性素剤KCと電解機能水が園芸作物の生育に及ぼす影響
石川 博史(発生学・細胞生物学講座)

 近年,環境保全型農業が注目を浴び,環境に優しい資材や産業廃棄物の有効利用に関心が高まりつつある。そこで,新しい産業廃棄物資材である醤油粕を原料として乾留して作られたKC液と,最近アルカリ水等で健康飲料として注目されている電解水に着目し,野菜栽培への利用について考察した。
 供試品種としてアブラナ科葉菜のチンゲンサイ,サントウサイ,コマツナとカブの5種を供試し,KC液と電解水が生育に及ぼす影響について調査した。なお,実験1〜4は湛液式水耕法で,実験5はシャーレ内で生物検定を行った。実験1では,KC液と溶液への通期の有無を調べるために,KCを0, 50000倍,5000倍に希釈した区を設け,それぞれに通気の有無処理を行い調査した。実験2では,KC液の処理時期の影響を調べるために,育苗期と定植後に分け,異なるKC液濃度を組み合わせて調査した。実験3では,種々の酢液の影響を調べるために,KC液,木酢液,竹酢液を添加し調査した。実験4では,機能水の影響を見るために,電気分解した酸性水とアルカリ水をそれぞれ10%,20%に希釈して調査した。なお,最初の2回はKClを,最後の2回はCaCl2・2H2Oを分解補助剤に用いた。4回目はKC溶液との混合処理について調べた。実験5では,KC液と機能水の生物検定を行うため,9 cmシャーレ内で各種濃度のKC液,機能水に浸した濾紙上で胚軸伸長に見られる生物検定を行った。
 通気の有無についてはKC溶液添加と関係なく,地上部,地下部ともに通気により生育が促進された。KC液は高濃度では成長抑制作用を示したが,低濃度では逆に促進作用を示した。育苗にはKC液処理の影響は小さく,定植期以降の処理濃度に大きく左右した。KC液に関しては,品種内で反応に差異が認められ,カブ,コマツナでは大きいが,チンゲンサイでは鈍い傾向が見られた。生育は竹酢液で最も促進され,続いてKC液の影響が大きかった。分解補助剤としてKClを用いた酸性水の場合,成長促進作用を示し,アルカリ水では阻害作用を示した。CaCl2・2H2Oの場合は,アルカリ水では促進作用を,酸性水では阻害作用を示したが,KC液を添加するといずれの酸性水でも生育は促進される傾向にあった。実験1〜4では,溶液のpHの差異は小さく,また,生育促進の大きかった区では無機養分の吸収量が大きかった。以上より,KC液や竹酢液に認められた成長促進についてはホルモン的作用と栄養補給的働きの両面が考えられ,機能水については,水の理化学的変化に見られる水機能の変化とともに分解補助剤による溶液への溶解も見られたので,今後,これについてのさらなる研究が必要と思われた。

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