海産渦鞭毛藻Scrippsiella hexapraecingulaにおける細胞外被の構造と形成
関田 諭子(細胞生物学研究室)

 Scrippsiella hexapraecingulaの遊泳細胞は原形質膜のすぐ内側に分布する扁平なamphiesma小胞の内部にある鎧板(thecal plates)と呼ばれる細胞外被をもち,細胞の形態を保持する。遊泳細胞が基物に定着すると,鎧板よりさらに内側に厚いpellicleと呼ばれる層を形成してシストとなり,内部で新たな遊泳細胞が形成され,pellicleと鎧板の一部を割って抜け出てくる。渦鞭毛藻の生活環における原形質膜とamphiesma小胞の起源,および鎧板とpellicleの形成過程は今までにほとんど解明されていない。本研究では,S. hexapraecingulaのシストにおけるamphiesma小胞の形成過程およびその内部で形成される鎧板の構造を凍結置換固定法や超薄切片法等によって電子顕微鏡で調べ,以下の結果を得た。
 鎧板はセルロースミクロフィブリルを含んでいた。遊泳細胞の定着後,速やかにpellicleが形成された。pellicleはamphiesma小胞の融合と崩壊によって生じたと考えられる膜に覆われた。定着後4時間でpellicleの内側に新たな膜(原形質膜)が出現した。細胞質には起源不明の多数の小胞が観察された。原形質膜のすぐ内側に沿って扁平な小胞(発生初期のamphiesma小胞)が出現した。その小胞の細胞質側表面に沿って2-4本の微小管が配列した。小胞は細胞表面方向に拡大した。定着後10時間で新たな遊泳細胞が形成されたが,セルロース性の鎧板は未発達であった。

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関田諭子・峯一朗・奥田一雄:「渦鞭毛藻Scrippsiella の細胞外被の構造と形成」,日本植物学会中国四国支部大会,松山(1997)

関田諭子・堀口健雄・峯一朗・奥田一雄:「海産渦鞭毛藻Scrippsiella hexapraecinglaの細胞外被の形成」,日本植物学会第61回大会,習志野 (1997)

関田諭子・堀口健雄・奥田一雄:「渦鞭毛藻の鎧板形成とそこにセルロ−スが存在する証拠」,日本藻類学会第23回大会,山形 (1999)

関田諭子・堀口健雄・峯一朗・奥田一雄:「渦鞭毛藻Scrippsiella hexapraecingulaのセルロ−ス性鎧板の微細構造」,日本植物学会中国四国支部第56回大会,高知 (1999)