ミカヅキモの成長過程におけるセルロース合成酵素複合体の集合パターン
鍋島 由美(細胞生物学研究室)

 ミカヅキモ(Closterium ehrenbergii)では,細胞分裂によって生じた娘細胞は速やかにその半細胞を成長させる。半細胞が成長するときに形成される細胞壁は一次細胞壁,成長終了直前から形成される細胞壁は二次細胞壁と呼ばれる。ミカヅキモの細胞壁セルロースミクロフィブリル(CMF)は,原形質膜に存在するロゼット型のセルロース合成酵素複合体によって形成される。一次細胞壁形成時には単独のロゼットまたは数個のロゼットが一列直線状に配列してCMFを形成するのに対し,二次細胞壁形成時にはロゼットはヘキサゴナルアレイと呼ばれる集団となってCMFを形成すると報告されている。しかし,ロゼットの集合がどのように起きているのかは分かっていない。本研究では,ミカヅキモの成長過程で変化するロゼットの集合パターンをフリーズフラクチャー法によって調べた。
 一次細胞壁形成時では,CMFは細胞成長方向に対して直角にお互いに平行に配列し,単独のロゼットあるいは2-10個のロゼットが一列に配列するのが観察された。一次細胞壁形成が進むにつれ,形成される一本一本のCMFも太いものが多くなり,配列方向も平行からランダムへと変化した。二次細胞壁形成が始まると,お互いに平行に配列するCMFの集団が束となり,個々のCMFの幅の集団はランダムな方向に形成された。この時,4-9個の一列直線状に配列するロゼットの集団がお互いに2-6列速報に結合しているのが観察された。

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鍋島由美・峯一朗・奥田一雄:「ミカヅキモの成長過程におけるセルロ−ス合成酵素複合体の集合パタ−ン」,日本藻類学会第22回大会,下田(1998)