多核緑藻ハネモの先端成長および側枝形成における細胞骨格の役割
尾里 博和(細胞生物学研究室)

 ハネモ(Bryopsis plumosa)の配偶体は,主軸と側枝からなる多核緑藻である。藻体の主軸や側枝の先端成長部位には葉緑体を欠く分厚い原形質の層(透明層)が存在する。側枝は主軸の先端から基部方向0.16 mmの主軸側面が膨らみ,透明層をもつ新たな先端成長部位が生じることによって形成される。このように,主軸の連続的な先端成長と規則正しい側枝の形成によって全体として羽状の藻体が発達する。
 本研究では,ハネモの先端成長と側枝形成における細胞骨格の役割を明らかにするために,微小管(MT)とアクチン繊維(AF)を間接蛍光抗体法により観察し,細胞骨格阻害剤による先端成長・側枝形成部位の形態的変化を調べた。
 細胞表層MTは主軸の長軸方向に平行配列したが,先端の透明層ではランダムに配列した。側枝突出時にも主軸にみられるMTの平行な配列は保たれた。短時間のコルヒチン処理は側枝の向軸方向への傾斜を阻害し,長時間の処理では藻体の至る所に透明層を伴うこぶ状の突出が現れた。原形質内層のAFは,葉緑体を縫うように配列したが,透明層においては約3 µmの大きさの領域を囲むように存在した。サイトカラシンD処理により透明層は消失し,先端成長,側枝形成が見られなくなった。これらの結果から,MTは側枝の形成部位の制限と伸長方向の調節,AFは主軸や側枝の先端成長に関与する透明層の維持にはたらくと考えられる。

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峯一朗・尾里博和・奥田一雄:「緑藻ハネモの先端成長部位形成と原形質流動」,日本藻類学会第31回大会,神戸市,2007年3月

峯一朗・尾里博和・奥田一雄:「多核緑藻ハネモの先端成長部位形成と原形質流動」,日本植物学会中国四国支部第66回大会,高知(2009)5月17日