多核緑藻ハネモの配偶子放出における配偶子排出運動
吉松 公彦(細胞生物学研究室)

 海産緑藻ハネモ(Bryopsis plumosa)の配偶子嚢は最外層にあるクチクラ,細胞壁,配偶子の詰まった層,及び大きな中心液胞からなる。暗期に成熟した配偶子嚢は次の明期に光を受けると,液胞の崩壊が起こり続いて配偶子の運動が開始する。この運動が活発になり配偶子嚢全体に広がった後,放出孔が破れ配偶子は強制的に放出される。本研究ではこの配偶子の放出運動の原因を明らかにするために,配偶子の放出をビデオ画像に記録し,無処理の配偶子嚢やさまざまな処理を施した配偶子嚢の配偶子放出速度を測定した。
 その結果,光照射直後に切断した配偶子嚢では配偶子放出は起こらなかったが,照射後の時間経過とともに無処理の配偶子嚢と同様な放出が見られるようになった。光照射前に切断し膨圧を解除した後,再度結紮した配偶子嚢においても放出は起こった。さらに放出直前に化学固定を施しても無固定の場合と同様の放出運動が観察された。また,配偶子放出前にクチクラが細胞壁より剥離して膨らんだ場合,このクチクラを破った後配偶子嚢を切っても顕著な放出運動は起こらなかった。
 これらの結果から,配偶子の放出運動は光照射前に配偶子嚢内に存在する膨圧ではなく照射後に発生する「力」によるものであること,放出運動自体には細胞の生死は無関係であるが,配偶子嚢がクチクラに包まれていることが必要であることが考えられる。

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峯一朗・吉松公彦・小馬場宏晃・奥田一雄:「多核緑藻ハネモの配偶子流出運動」,日本藻類学会第28回大会,札幌(2004)3月29日