緑藻バロニアの細胞骨格タンパクについて
青木 裕二(細胞生物学研究室)

 バロニア(Valonia utricularis)はミドリゲ目に属する海産の多核藻類である。バロニアの細胞には微小管やアクチンフィラメントが存在し,それぞれ細胞の形態形成に深く関与している。動物細胞では,ミオシン,スペクトリン,α-アクチニン等のアクチン結合タンパクがよく知られているが,植物細胞では,それらの存在や機能を明らかにした報告はほとんどない。本研究では,バロニア細胞において,アクチン,ミオシン,スペクトリンのイムノブロットによる検出と,間接蛍光抗体法によるこれらのタンパク質の細胞内分布の観察を試みた。
 綱アクチン抗体を用いたイムノブロッティングでは,ニワトリ砂嚢由来のアクチンと一致する分子量約46 kdの位置に単一のバンドを検出した。抗スペクトリン抗体を用いたイムノブロッティングでは,約70 kdの分子量の位置にバンドが2本確認できた。同様にミオシンの存在を調べたが,抗ミオシン抗体が特異的に結合するバンドは確認できなかった。間接蛍光抗体法で観察したバロニア栄養細胞のアクチンフィラメントは核や葉緑体の周辺に沿って全体的に網状に配列していた。抗スペクトリン抗体が結合する部位は網状のアクチンフィラメントに沿って分布したが,その蛍光像は粒子状であった。

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