黄緑藻Tribonema sp.におけるセルロースミクロフィブリルの微細構造と形成
菊地 悟郎(細胞生物学研究室)

 黄緑藻におけるセルロースミクロフィブリル(CMF)及びセルロース合成酵素複合体(TC)に関する研究は,今までにフシナシミドロについての報告があるのみである。黄緑藻の一種Tribonema sp.の細胞壁はフシナシミドロと異なり,H片と呼ばれる単位が細胞中央部でわずかに重なる特有の構造を持っているので,新しいタイプのTCが出現する可能性がある。
 Tribonema sp.から化学的に分離したミクロフィブリルは,幅約5 nmの細いサブフィブリルが5〜10本束になった構造を呈し,電子線回折からCMFであることが明らかになった。TCを見つけるため,フリーズフラクチャー法で原形質膜PF面及びEF面に見られるCMFの軌跡の先端部を観察した。Tribonema sp.では,フシナシミドロで報告されたような斜め階段状TCは観察されず,代わりにPF面でTC様構造が観察された。得られた結果から以下の架設を提出する:(1) PF面で2つの独立した顆粒列(TC)が時計回りおよび反時計回りに弧を描くように曲折してCMFを合成し,その結果CMFの幅が円をなす。(2) 2つのTCが合体し,1つの大きなTCを構築する。(3) CMF合成活性の高いTCは原形質側へ埋没する。

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