多核緑藻マガタマモの不動胞子形成における微小管とアクチンフィラメントの挙動
松末 茂隆(細胞生物学研究室)

 多核緑藻マガタマモの栄養体は,細胞が傷つけられると原形質が収縮して不動胞子を形成し,環境の変化に対応しようとする。本研究はマガタマモの不動胞子形成時における細胞骨格の挙動を,アクチンフィラメント(AF)と微小管(MT)を間接蛍光抗体法によって観察することで,明らかにしようとするものである。
 傷害を受けていない細胞においては,AFは網状に葉緑体を取り囲み,MTは核の周りに放射状に位置する。細胞をハサミで切断すると,約30分で原形質の収縮が始まった。まずAFが束状になり,次にMTも束状になった。AFの網状配列とMTの放射状配列は消えた。収縮が終わりに近づき,原形質が球状のかたまりになると,アクチンとMTの蛍光は顆粒状を呈した。また,AFとMTが束状になったとき,両者はほぼ同じ場所で観察されたが,MTが存在していない部位にもAFが確認された。このことから,MTよりもむしろAFが原形質の運動を誘導していると考えられたので,阻害剤実験を行った。微小管阻害剤中では不動胞子が形成されるに至ったが,アクチン阻害剤を用いた時には,原形質に変化は起こったものの,不動胞子形成までには至らなかった。これらのことから,アクチンが原形質の収縮を司っていることがわかった。

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