黄緑藻フウセンモ属の一種におけるセルロースミクロフィブリルの微細構造と形成
柴垣 里加子(細胞生物学研究室)

 セルロース性細胞壁を形成する植物では,セルロースミクロフィブリル(CMF)は原形質膜で直接合成・結晶化される。それにはセルロース合成酵素複合体(TC)と呼ばれるタンパク質顆粒が関わっている。TCには形態の異なるいくつかのタイプがあり,同じ系統群に属する植物種は同じタイプのTCをもつことがわかってきた。しかし,黄緑藻綱においては,まだ一種しか観察されていない。そこで,淡水生黄緑藻フウセンモ属の一種(Botrydium stoloniferum)を用いて,CMFの形態とTCの配列様式を明らかにすることを目的として実験を行った。
 ネガティブ染色を施したCMFを透過型電子顕微鏡で観察したところ,CMFの厚さは約1.9 nmでほぼ一定であるが,幅は3〜40 nmの間で変化するリボン状の形態をもつことがわかった。原形質膜の観察にはフリーズフラクチャー法を用いた。その結果,Botrydium属で初めてTCが発見された。TCは合成途上のCMFの軌跡の先端に存在し,PF面のみで観察された。このTCは,5〜10列の顆粒列がCMFに対して斜め方向(約134度)に階段状に並列していた。TCの長さは40〜130 nmであるのに対し,幅は45±3 nmであまり変化しなかった。このことから,TCは原形質膜上を動きながらCMFを合成し,TCの長さ(顆粒列の数)が合成するCMFの幅を決定していると考えられる。

題目一覧へ

柴垣里加子・関田諭子・奥田一雄:「黄緑藻フウセンモの一種のセルロ−ス合成酵素複合体の構造」,日本藻類学会第24回大会,長崎 (2000)