緑藻ハネモの配偶子放出における配偶子嚢の収縮
小馬場 宏晃(細胞生物学研究室)

 ハネモの配偶子嚢では,暗処理した後光を照射することにより配偶子放出が誘導される。光照射から配偶子放出までの5〜7分の間に,液胞内容物の流動,液胞膜の崩壊,配偶子嚢の収縮,配偶子の運動といった一連の過程が配偶子嚢において観察される。本研究では,配偶子放出に至るこれらの課程の中で液胞内容物の流動と配偶子嚢の収縮について着目し,顕微鏡ビデオ撮影を行い配偶子嚢の構造の経時変化を詳しく解析した。
 光照射後に最初に見られる配偶子嚢の形態的変化として液胞内容物の先端あるいは基部方向への一時的な流動が観察された。また,光照射から配偶子放出までに配偶子嚢の大きさが約10%減少した。配偶子嚢収縮の速度は一定ではなく,液胞膜の崩壊とともに急速な収縮が起こり,その後緩やかになり,配偶子の運動開始前後に再び収縮が急速化する傾向が見られた。また,人為的に配偶子嚢の収縮を起こさせるために外液の浸透圧を上げる処理を行った。その結果,0.5 M NaClを加えた人工海水に浸けた配偶子嚢では,光を当てることなく収縮が見られ配偶子放出が観察された。

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峯一朗・吉松公彦・小馬場宏晃・奥田一雄:「多核緑藻ハネモの配偶子流出運動」,日本藻類学会第28回大会,札幌(2004)3月29日