Phaeothamnion confervicolaにおけるセルロースミクロフィブリルの微細構造と形成過程について
中村 亙(細胞生物学研究室)

 黄色植物門の属するPhaeothamnion confervicolaは褐藻と黄緑藻の両方に極めて近縁であると考えられているが,細胞壁にセルロースミクロフィブリル(CMF)が存在するかどうかは報告されていない。本研究では,Phaeothamnion confervicolaにおいて,CMFの有無,CMFの形態,セルロース合成酵素複合体(TC)の形態を明らかにする目的で行った。
 ネガティブ染色法によって細胞壁に幅6〜16.6 nm(平均11.5 nm),厚さ3〜6.2 nm(平均4.3 nm)のリボン状ミクロフィブリルの存在を確認した。電子回折の結果,そのミクロフィブリルはCMFであることが判明した。
 次に,そのCMFを形成するTCを発見するために,フリーズフラクチャー法によって原形質膜PF面及びEF面のレプリカ像を観察した。原形質膜PF面及びEF面にCMFの軌跡が,PF面のミクロフィブリルの軌跡の先端に顆粒の集合体が観察された。その集合体では,直径2〜11 nmの顆粒が2列〜3列直線状に配列していた。一列を構成する顆粒数は6〜11個であった。
 褐藻は1列直線状のTCをもち,黄緑藻は斜め階段状のTCをもつことが報告されているが,本研究で観察された顆粒の集合体はそれらとは異なるTCであると断定した。本研究結果から,黄色植物におけるTC構造の進化について考察した。

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