糸状紅藻フタツガサネのバンド成長における開口分泌の観察
上杉 真紀(細胞生物学研究室)

 イギス科に属する単列糸状紅藻は,それぞれの細胞が縦方向に伸長する際水平方向帯状の限られた一部分のみが伸長する,バンド成長と呼ばれる局所的な成長様式を示す。バンド成長において細胞壁の伸長が細胞の限られた部分に局在する機構を明らかにするために,イギス科紅藻フタツガサネを用いた研究が行われている。これまでに,バンド成長部位にゴルジ小胞の開口分泌が集中して見られることが化学固定試料において観察され,また,微小管・アクチン阻害処理を行った細胞ではバンド成長に代わり散在成長によって細胞が伸長することが示されてきた。本研究では,バンド成長を行う細胞の微細構造を新たに凍結置換法を用いて観察し,バンド成長部位に開口分泌が集中して存在することを確かめた。また,凍結置換法により初めて細胞骨格阻害処理を行った細胞についても微細構造の観察が可能となり,バンド成長部位への開口分泌の集中が微小管・アクチン阻害処理により見られなくなり,代わって開口分泌様の構造が細胞側面の様々な部位で観察されるようになることが分かった。

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峯一朗・湯浅健・上杉真紀・奥田一雄:「単列糸状紅藻における細胞のバンド成長の研究」,日本藻類学会第27回大会,三重(2003)3月29日