多核緑藻バロニアにおける核分裂の起こる時期と場所
松本 崇(細胞生物学研究室)

 緑色植物ミドリゲ目に属するバロニアは,大きさが数センチメートルに達する巨大細胞からなる。原形質は細胞壁に沿って薄く拡がり,その中に多数の核と葉緑体がほぼ均一な密度で分布する。バロニア細胞の成長と核の分裂に伴い,核の分布密度を一定にするしくみの存在が予想されるが,核分裂がいつ,どのように起こるかは明らかにされていない。本研究では,バロニアにおける核分裂の時期および領域をDAPI染色によって調べた。
 14時間明期と10時間暗期で培養したバロニアの細胞を,明期開始後0, 6, 12, 18時間で固定した。顕微解剖によって個々の細胞に含まれる原形質の大部分をカバーグラスに貼り付け,DAPIによる染色後,蛍光顕微鏡で核を観察した。明期開始後6時間および12時間で固定された細胞で核分裂が観察された。核分裂は原形質の一定の範囲で同調的に起こった。核分裂領域および未分裂領域における核の分布密度はそれぞれ約600個/mm2および約400個/mm2であった。細胞の基部または頂部に近い領域で核分裂が起こる傾向があったが,異なる2つの領域で同時に核分裂が進行する場合もあった。また,核分裂領域の周辺部で分裂中の核が多数観察された。

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