高浸透圧処理による緑藻ハネモの配偶子放出誘導
尾崎 知栄(細胞生物学研究室)

 多核管状のハネモ配偶体は主軸と多数の側枝を持つ。成熟すると,側枝が配偶子嚢へと文化し,中心液胞の周りの細胞表層にある原形質が厚い配偶子層へと変化する。暗期の後,光を当てることにより,液胞膜が崩壊し,配偶子の活発な運動が配偶子嚢全体に広がるとともに,配偶子嚢全体が基軸方向に収縮した後,光照射後5〜7分で,配偶子が水中に放出される。本研究では光を照射せずに本藻の配偶子放出を人為的に誘導する方法として,様々な浸透圧調節剤を用いて高浸透圧処理を行い,放出誘導の有無や反応の様子を調べた。
 その結果,0.4〜0.6 MのNaClやKCl,あるいは1.0〜1.2 Mのショ糖やマンニトールを加えた人工海水による30〜120秒の処理により,光を当てることなく配偶子の放出が誘導され,液胞膜崩壊,配偶子運動,配偶子嚢収縮も光による放出誘導と同様に観察された。放出する配偶子嚢の割合は長時間の処理で少なくなる蛍光が見られ,また,処理条件により配偶し放出までに要する時間が4分〜60分と変化した。

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峯 一朗・尾崎 知栄・奥田 一雄:「高浸透圧処理による緑藻ハネモの配偶子放出誘導」,日本藻類学会第34回大会,茨城県・つくば市(2010)3月21日