緑藻ハネモの成長部位形成過程における原形質流動
榊原 慎太郎(細胞生物学研究室)

 植物の先端成長では,円筒形の細胞の長軸方向に配列する細胞骨格に沿った原形質流動が細胞の成長に重要な役割を果たしていると考えられている。本研究では先端成長における原形質流動の役割を明らかにするために,多核緑藻ハネモ配偶体の二つの先端成長部位形成過程(側枝形成,小球体の発芽)における葉緑体運動をタイムラプスビデオで観察,解析した。
 ハネモの先端成長部位には葉緑体を欠く透明帯が存在する。継続的に先端成長が行われている主軸では二方向性の活発な葉緑体運動が観察された。一方,側枝形成において主軸の側面に新たな側枝の隆起や透明帯が次々と形成されるとき,あるいは原形質塊から生じた小球体の発芽,再生に見られる成長部位形成過程においても,新たな成長方向への葉緑体運動が見られず,成長が進み円柱状の形態に発達した後ではじめて微小管細胞骨格に沿った成長軸方向への葉緑体運動が見られるようになった。このように葉緑体レベルの原形質流動には新たな成長部位形成との関連が見られなかった。新たな成長部位の位置決めや初期発達過程では,透明帯を中心とする微小な領域における細胞内構造,原形質運動が重要な役割を果たしている可能性が考えられる。

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