黄色植物Phaeothamnion confervicolaにおけるセルロースミクロフィブリルおよびセルロース合成酵素複合体の構造
末友 靖隆(細胞生物学研究室)

 Phaeothamnion confervicolaは褐藻綱に所属していたが,最近の分子系統学的研究により,新たに設立されたファエオタムニオン藻綱へ分類された。中村 亙(2000年度卒業論文)は,P. confervicolaが褐藻と構造の異なるセルロース合成酵素複合体(TC)をもつことを明らかにした。本研究では,P. confervicolaのセルロースミクロフィブリル(CMF)とTCの構造を詳細に分析し,CMFの形態とTCの構造の間の相関を明らかにすることを目的とした。
 P. confervicolaの細胞壁から単離したCMFの形態は扁平なリボン状を呈した。CMFの幅は6.2-20.0 nm(平均値は10.2 nm)の間で大きく変化したのに対し,厚さの変化は2.5-8.8 nm(平均値は4.3 nm)の範囲内であった。
 フリーズフラクチャー法によってP. confervicolaの原形質膜割断面を観察した。PF面には,CMFの軌跡の先端部にTCを構成する顆粒群が存在した。顆粒は2列または3列で直線状に配列し,TCによって列をなす顆粒の数が3-12(平均値は6.7)の範囲で変化した。また,1つのTCを構成する顆粒列の間で列の長さが異なる場合,TCの中心軸から外れた位置にCMFの軌跡が観察された。P. confervicolaでは,TCの顆粒列の数がCMFの厚さに,顆粒列の長さがCMFの幅の幅に関係することが推察された。

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関田諭子・末友靖隆・奥田一雄:「ファエオタムニオン藻のセルロース合成酵素複合体」,日本藻類学会第27回大会,三重(2003)3月29日

関田諭子・吉永臣吾・末友靖隆・村中愛麻・奥田一雄:「黄色植物におけるセルロース合成酵素複合体の進化」,日本藻類学会第28回大会,札幌(2004)3月29日