渦鞭毛藻Scrippsiella hexapraecingulaにおける鎧板の変異パターン
高平 雅基(細胞生物学研究室)

 渦鞭毛藻の細胞外被は,原形質膜(PM),アンフィエスマ小胞(av)および微小管から構成される。avはPMを裏打ちして細胞周縁全体を取り囲む構造で,有殻の渦鞭毛藻類では,このavの中でthecal plate(鎧板)が形成される。鎧板の有無と,鎧板が存在する場合には鎧板の配列様式,形,数が渦鞭毛藻類の目,属レベルの分類のために重要な形質となる。分類の重要な指標になるということは,これらの形質が多様であると同時に,欠く分類群で変異が少なく極めて安定していることを意味する。しかし,avがどのように配列し,どのように鎧板の形を規定するかについてはほとんど何も分かっていない。
 そこで,まず本研究では,有殻渦鞭毛藻Scrippsiella hexapraecingulaを用い,通常の培養条件下における鎧板の変異について解析した。鎧板配列が変異していた細胞の割合は約15%であった。変異を起こした細胞452個体を観察し,鎧板の変異パターンについて解析した。ほとんどの変異は上殻で起こっており,鎧板の数が増加した細胞が多くみられた。変異パターンを7つのタイプに分けた:鎧板が(i)1個増加,(ii)2個増加,(iii)3個増加,(iv)1個減少,(v)1個増加し,かつ1個減少,(vi)形だけ変異,(vii)著しく変異。それぞれのパターンごとに,鎧板が変異した場所を解析した。その結果,変異の起こりやすい場所と起こりにくい場所のあることが明らかとなった。

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