セルロースミクロフィブリル（CMF）は一般に植物の原形質膜に結合するセルロース合成酵素複合体（TC）によって合成・結晶化されると考えられている。現在までに多数の植物種でTCの構造が研究されてきた結果，同じ系統群に属する種は同じタイプのTCをもつことが明らかになってきた。黄緑藻綱植物でTC構造が明らかにされたのは，ミスココックス目に属する１種とフシナシミドロ目に属する２種である。
本研究では，黄緑藻綱トリボネマ目に属するHeterococcus brevicellularisのTC構造を明らかにすることを目標とし，細胞壁構造，CMFの同定と形態，及び原形質膜褐断面の顆粒配列を透過型電子顕微鏡を用いて調べた。
超薄切片法により，Heterococcus brevicellularisの細胞壁は３層構造であった。細胞壁から化学的に分離したミクロフィブリルがセルロースであることを，CBH-I gold標識と電子回折によって明らかにした。CMFの厚さは約1.4 nmでほぼ一定であるのに対し，幅は1.5〜8.3 nmの間で変化した。フリーズフラクチャー法により，原形質膜割断面を観察した。TCは確認されなかったが，特徴的な顆粒配列の存在が明らかとなった。
関田諭子・内藤知恵・奥田一雄：「黄緑藻トリボネマ属の一種のセルロース合成酵素複合体の構造」，日本藻類学会第29回大会，京都（2005）3月28日