灰色植物Glaucocystis属の一種におけるセルロースミクロフィブリルの形
榎元 健司(細胞生物学研究室)

 セルロースミクロフィブリル(CMF)は,原形質膜に結合するセルロース合成酵素複合体(TC)によって合成される.現在までに,様々な生物からTCが発見され,同じ系統に属する種は同じ構造のTCを持つことが明らかになってきた.しかし,灰色植物のTCについての研究はほとんどない.本研究では,灰色植物に属するGlaucocystis属の一種を用い,CMFの微細形態とTC構造を明らかにした.
 細胞から化学的に分離したCMFをネガティブ染色で観察した.本種は大きさの異なる2つのタイプのCMFを合成し,小さいタイプは幅6.7 nm・厚さ5.0 nmであり,大きいタイプは幅10 nm・厚さ6.6 nmであった.フリーズフラクチャー法により,本種のTCは原形質膜のPF面およびEF面に観察された。TCは、直径約6 nmの顆粒が直線状に2列をなして配列する構造であった.TCの長さは138 nmと550 nmの間で大きく変化したのに対し,TCの幅の変化は比較的小さく,12.5 nmー16.7 nmの範囲であった.また,TCには,長さの異なる3つのグループがあった.1つは138 nmー230 nmの長さをもつTCグループで,2つ目のグループは320 nmー380 nmの長さであり,3つ目はそれ以上の長さをもつグループであった.
 これらの結果は,長短それぞれのTCが大小それぞれのCMFを合成し,TCの長さとCMFの大きさとの間に密接な関係があることを示唆する.

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