多核緑藻バロニアにおける微小管の破壊と再構築の過程
細木佳奈 (細胞生物研究室)

 一般に,細胞表層微小管(CMT)は細胞壁のセルロースの配向を制御し,細胞の成長方向の決定に関与すると考えられている.しかし,多核緑藻バロニアでは,セルロースの配向変化に関係なく,CMTは常に一定方向に平行配向する.本研究では,バロニアのCMTの役割を明らかにするために,微小管破壊剤アミプロフォスメチル(APM)を用い,CMTのターンオーバーの過程を間接蛍光抗体法によって調べた.
  APM処理後,0, 2, 4, 12, 24, 48hで細胞を固定してCMTを観察した.コントロールでは,CMTは0.73μmの一定間隔で平行配列した.APMで処理した細胞のCMTも一定間隔で平行配列したが,その間隔が大きくなる様式でCMTが破壊された.CMTの間隔はAPMの処理時間と比例した.APM処理12 hで5.3 μmの間隔となり,48 hでほとんどのCMTは破壊された.また,12 hまたは48 hのAPM処理後,細胞を6, 12 hまたは48, 72 h APM-free で培養し,CMTを観察した.12 hのAPM処理後,6 hおよび12 hの培養で,CMTは平行配列のまま再構築し,その間隔が1μmまで回復した.しかし,48 hのAPM処理後,再構築するCMTは,コントロール細胞とは全く異なる様々な配向を示した.以上の結果は,CMTの配向を維持する機構がCMTの存在そのものに依存することを示唆する.

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