多核緑藻バロニアの成長にともなう細胞伸長様式の変化
岩佐 圭二 (細胞生物学研究室)

 多核巨大細胞性緑藻バロニア(Valonia utricularis)の藻体は、こん棒状の巨大細胞が連なって出来ており、室内培養においても同様の形態を示す。細胞の切断により誘導される傷害治癒反応により、球形細胞が形成されるが、この球形細胞も成長に伴ってこん棒状になる。球形細胞がこん棒状の細胞に成長するとき、成長部 が局在しない散在成長から局所的な成長へと細胞の成長様式が変化することが予想される。本研究では、この変化を明らかにするために、大きさ約1 mmの球形細胞の成長における細胞の大きさと形態の変化を観察し、それに伴う細胞成長の局在性を調べた。
 球形細胞は、3〜4日間は球形のまま大きくなり、10日〜20日後にこん棒状の形態に成長した。細胞表 に塗布したマーカー粒子の間隔変化の解析により、こん棒の両端あるいはどちらか一方の先端とその周辺の成長 が他の部分よりも4倍以上大きくなることが明らかになった。球形細胞の表層微小管は短く、ランダムに配列したが、細胞の成長と形態変化に伴い細胞全体に伸びる密な並行配列へと変化した。
 以上の結果から、本藻では細胞末端周辺への成長局在化により、細胞の形態が球形からこん棒状へと変化し、その変化には表層微小管の配列変化が伴うことが示された。

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