渦鞭毛藻Amphidinium属の一種における細胞分裂の微細構造
高橋　亜由（細胞生物学研究室）

　渦鞭毛藻類の二分裂による無性生殖は，細胞が泳ぎながら分裂し，娘細胞は母細胞の細胞外被の半分を受け継ぎ，残りの半分を新しく形成する。しかし，二分裂による細胞分裂の過程は，ほとんどが鎧板を持つ有殻渦鞭毛藻類での報告である。したがって，鎧板を持たない無殻の渦鞭毛藻類における細胞分裂の詳しい報告はない。
　そこで，本研究では，無殻の渦鞭毛藻Amphidinium属の一種を用いて，二分裂による細胞分裂の過程を調べた。核分裂および細胞質分裂の過程を次の4つのステージに分けた：(１)細胞分裂前の遊走細胞；（2）染色体が分裂し，細胞後端（hypocone）が拡大する過程；（3）染色体の移動とhypoconeにおいて分裂溝が形成される過程；（4）細胞前端（epicone）において分裂溝が形成され始め，分裂が完了するまでの過程。それぞれのステージで微細構造を観察し，本種が渦鞭毛藻類で一 的にみられる核分裂の様式をもち，新しい細胞外被は，分裂溝で形成されるのではないことが明らかになった。