黄金色藻サヤツナギの一種におけるロリカ形成に及ぼすカルシウムイオンの影響
日置 美穂(細胞生物学研究室)

 Dinobryon sociale var. americanaはロリカという細胞外被構造をもつが、ロリカを脱ぎ捨て、ロリカをもたないまま遊泳する場合もある。
 DY-V MediumとPESの2種類の培地で本種を培養したところ、DY-V MediumよりもPESで培養した細胞のほうが、ロリカをもち、群体を形成する頻度が高かった。これら2種の培地の組成を比較すると、DY-V Mediumには、Caイオンが存在するが、本来は自然海水を栄養強化するPESは、Caイオンを含まない。これにより、培地中のCaイオン濃度がロリカ形成に影響を及ぼしていることが推察された。本研究はロリカ形成と培地中のCaイオン濃度との間の関連性を明らかにすることを目的とした。DY-V Mediumに含まれるCaイオン濃度を標準濃度として、様々なCaイオン濃度に設定した培地を作製し、細胞を培養した。その結旺、標準濃度の1/1000倍のCaイオン濃度で、ロリカを形成する頻度が最も大きい(約70%)ということがわかった。さらに、標準濃度の1/1000倍で培養した細胞を種々のCaイオン濃度に設定した培地に移植した結旺、増加した細胞数およびロリカ形成細胞数はともに標準濃度の1/10倍で最大であった。この場合、ロリカ形成率は約90%であった。
 電子顕微鏡により、ロリカが形成される細胞の後端部に大きな液胞が存在したが、ロリカの前駆物質と考えられる構造は観察されなかった。
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