巨大細胞性黄緑藻フシナシミドロの細胞壁微細構造
金田 直樹（細胞生物学研究室）

　先端成長を行うフシナシミドロから単離された細胞壁は，先端成長部位では伸びやすく，成長しない円筒形部分では強度が強く伸び難くなっているが，細胞壁のプロテアーゼ処理によりその強度が弱められることが示されている。本研究では，本藻の円筒形細胞形態を維持するために必要な細胞壁の強度を支える仕組みを明らかにするために，プロテアーゼ処理による細胞壁微細構造の変化を，透過型電子顕微鏡（TEM）と走査プローブ顕微鏡（SPM）を用いて観察した。
　細胞の先端成長部位および円筒形部分において，細胞壁のセルロース微繊維（CMF）はさまざまな方向に配列しており，その配列方向には規則性が認められなかった。酵素処理を施さなかった細胞壁内面のTEM試料では最表層以外のCMFは不定形の基質成分に埋め込まれていたが，この基質成分は酵素処理により除去された。細胞壁外面ではCMFの層が不定形の構造により部分的に被われていたが，この被覆構造も酵素処理により除去された。また，SPMにより内外面の不定形成分表層の凹凸をより詳しく観察するとともに，酵素処理による細胞壁構造の変化を定量的に評価することが可能となった。