渦鞭毛藻 Heterocapsa pygmaea の細胞外被の微細構造
近藤 悠一郎(細胞生物学研究室)

 渦鞭毛藻の遊走細胞の細胞外被は,種によって様々な構造を示す.しかし,基本的に,その構造は,原形質膜(pm),アンフィエスマ小胞 (av),微小管からなる.avは原形質膜を裏打ちして細胞周縁全体を取り囲む構造で,有殻渦鞭毛藻はこのavの内部に鎧板 (tp)を形成する.渦鞭毛藻のいくつかの分類群では,ecdysisと呼ばれる現象により,遊走細胞は細胞外被の大部分を脱ぎ捨て,不動細胞を形成する.この時,細胞外被の構造は大きく変化する.
 本研究では,海産渦鞭毛藻Heterocapsa pygmaeaの遊走細胞の細胞外被構造および,ecdysisによる細胞外被構造の変化と新たな細胞外被の形成過程を明らかにすることを目的とした.H. pygmaea の遊走細胞の細胞外被の構造は,pm,tpを含むav,および微小管からなり,pmの外側にはbody scaleが存在した.avは,それぞれ一つのtpを含む独立した小胞であった.遊走細胞がecdysisによって不動化すると,pmと av の外膜は部分的に崩壊し,avの内膜が互いに融合して細胞質全体を取り囲む連続する膜(npm)になった.また,それと同時に,三層構造からなる連続する層(pellicle?)が出現し,その後,その内側にやや電子密度の高い層(pellicle?)が肥厚した.ecdysis 後 約30分で,npm の内側に新しいavが出現し始め,その後,大きく扁平な小胞に発達した.

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