巨大細胞性黄緑藻フシナシミドロの枝形成と細胞壁伸展性
竹崎 那依子(細胞生物学研究室)

 丈夫な細胞壁で被われている植物細胞の成長は、その細胞壁の伸びやすさ(伸展性)や強度によって左右される。先端成長を行う巨大細胞性黄緑藻フシナシミドロでは、細胞の局所的成長部位であるドーム状の先端部位の細胞壁が他の円筒形部分よりも伸びやすくなっている。一方、この細胞の円筒形部分に光を局所的に照射すると、先端成長を行う枝を新たに形成させることができる。
 本研究では、細胞の非成長領域である円筒形部分で光照射により新たな成長領域が形成されるときの細胞壁伸展性や強度の変化を明らかにするために、(I)原形質の凝集、(II)将来の先端成長部位になる透明層の形成、(III)細胞表面のドーム状突出、(IV)円筒形側枝の伸張、という枝形成過程の4つの段階で単離した細胞壁内部に圧力をかけて細胞壁の伸長や破裂する様子を調べた。
 光照射前の細胞壁は最高圧力(0.8 MPa)でも破裂せず、枝形成過程の(I)では半数の細胞が平均0.67 MPaで破裂した。以降、伸長・破裂させるのに必要な圧力は(II)で0.52 MPa、(III)で0.48 MPa、そして(IV)で0.59 MPaと概ね減少していった。また、加圧時の細胞壁の観察から、光照射前と(I)では細胞壁の伸長が見られなかったが、それ以降の細胞壁では伸長して破裂した。これらのことから、本藻の枝形成過程において細胞壁の伸展性が増大することが明らかになった。
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