ワカメの胞子体発生初期における成長と細胞構造の特徴
有澤拓人(細胞生物学研究室)

arisawa ワカメ(Undaria pinnatifida)は、コンブ目チガイソ科に属する褐藻であり、巨視的な胞子世代と微視的な配偶世代が交代する生活史をもつ。食用にされるのはワカメの胞子体にあたる。大きく成長したワカメは茎と葉部の境目の中肋の領域で細胞分裂がおこる介在成長を行うことが知られているが、発生初期の胞子体の細胞の分裂と成長に関する研究はほとんどない。本研究では、ワカメの受精卵から発生した胞子体の幼体を用い、幼体各部位の細胞分裂の頻度と細胞の大きさ、細胞分裂と明暗周期との関連性および切り離した幼体各部の成長の有無を調べた。
 10℃、8時間明期16時間暗期の培養条件では、長さ15 mmの発生初期の胞子体の成長速度は0.23 mm/dayであった。細胞壁を生体染色した幼体を9部位に分け、各部位で分裂した細胞を観察した結果、分裂細胞の割合は幼茎と葉部の境目の中肋部位で最も大きく、6.4%であった。明期開始時から暗期終了時まで3時間毎に幼体を核染色し、核分裂中または核分裂終了後隔壁形成前の細胞の割合を部位別に計測した結果、暗期開始後3で核分裂の頻度は29%となり、最大であった。幼体を茎部、葉部の上部、中部、下部の4の部分に切り分け、それぞれ2週間培養した結果、葉部の下部のみが成長した。また、電子顕微鏡で幼体各部位の細胞構造を観察した。

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