渦鞭毛藻Alexandrium hiranoiの細胞外被のミクロフィブリルの比較
桑原圭大(細胞生物学研究室)

 海産渦鞭毛藻Alexandrium hiranoiは,遊走細胞のステージを不動細胞のステージが交代する生活環をもつ。 遊走細胞の細胞外被は,複数の鎧板と呼ばれる板状の構造をもち,不動細胞は遊走細胞の細胞外被を脱ぎ捨て,新しく形成された原形質膜の外側にペリクルと呼ばれる厚い細胞壁を形成することが知られている。本種のペリクルの主成分はセルロースミクロフィブリル(CMF)であることが明らかにされているが,遊走細胞の鎧板の成分は不明である。そこで,本研究では,遊走細胞の細胞外被である鎧板の成分を明らかにし,不動細胞のペリクルのCMFの形態と比較することを目的とした。
 本種の遊走細胞の鎧板と不動細胞のペリクルからミクロフィブリル(MF)を化学的に抽出し,ネガティブ染色により,それぞれのMFの形態的特徴を明らかにした。さらに,鎧板から抽出したMFが,セルラーゼの一種に金粒子をつけたプローブ(CBH-I gold)により標識されたことから,CMFであることが明らかになった。鎧板のCMFの幅は,平均3.9±0.25nmで1.0〜16.8nmの間で変化した。また,不動細胞のペリクルのCMFの幅は,平均1.9±0.13nmで1.0〜9.2nmの間で変化した。

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