多核緑藻タンポヤリの分割細胞分裂における微小管の挙動
宮武史明(細胞生物学研究室)

miyatake 分割細胞分裂は緑藻ミドリゲ目を分類する形質の一つであり、1つの細胞が同時に複数の娘細胞を形成する細胞分裂様式である。多核緑藻タンポヤリ(Chamaedoris orientalis)はミドリゲ目に属し、その分割細胞分裂は藻体の直立茎先端部と側枝で起こることが知られている(長谷部、2011年度卒業論文)。それによると、直立茎の原形質表面に濃緑色と淡緑色の帯が交互に出現し、淡緑色部分がくびれることで原形質がいくつかに分断する。分断した原形質は膨張して直立茎の細胞壁内に一列に配列し、嬢細胞に発達する。このように、分割細胞分裂は原形質の運動を伴うので、細胞骨格の関与が考えられる。本研究では、まずタンポヤリの細胞骨格を固定・染色する条件を検討し、分割細胞分裂における微小管を間接蛍光抗体法によって観察した。
藻体を切断して傷害治癒を誘導した細胞断片を用い、パラフォルムアルデヒド(PFA)とグルタルアルデヒド(GA)を種々の濃度で含む固定液で固定し、抗チューブリン抗体と抗アクチン抗体およびそれらの二次抗体で微小管とアクチンを染色した。その結果、8%PFAと0.05%GAを含む固定液が微小管の観察に適することが分かった。未分裂細胞では、微小管は細胞の長軸方向に平行に配列した。分割細胞分裂の開始後、原形質がくびれ始める両側の部分で細胞長軸と師直方向に配列する微小管の束が出現した。その微小管から短い微小管がブラシ状に出ていた。原形質のくびれ部分の微小管は顕著に波打っていた。原形質がくびれて分断した原形質では、側面の微小管は細胞の長軸方向に微配列したが、分断面の微小管は放射配向した。

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