葉状緑藻カワノリの形態に与える培地組成の影響
西岡侑哉(細胞生物学研究室)

nishioka  緑藻カワノリPrasiola japonia Yatabeは太平洋側に注ぐ河川の上中流域の岩上に生育し,一層の細胞層からなり薄く広がる葉状の藻体に発達する。高知県津野町の四万十川の個体から確立された培養株は,一般的な淡水培地では細かいしわを持つ藻体に発達するが,ミネラルウォーターを用いた培地では比較的平たい形態を示すことが経験的に知られている。
 本研究では,培地によりこのような形態の違いが生ずる原因を明らかにするために,硬度の異なる二種類の培地で培養した小さな藻体断片の成長過程における形態変化を詳しく観察した。その結果,培養開始3週間以内に,硬度の低い培地で培養した藻体断片で,葉状体の湾曲が高硬度の培地より顕著に観察されるようになった。また,光学横断面の輪郭における曲がりの程度を数値化することにより,このような形態の違いを定量的に評価することが可能となった。

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