渦鞭毛藻Symbiodinium sp.の不動細胞の細胞外被構造
大迫雄大(細胞生物学研究室)

 海産渦鞭毛藻Symbiodinium属の多くは褐虫藻と呼ばれ,さまざまな無脊椎動物と共生する。共生性のSymbiodinium属の種は,宿主細胞の中では球形の不動細胞であるが,宿主から分離・培養すると,遊走細胞のステージと不動細胞のステージが交代する生活環を示す。しかしながら,同じ不動細胞でも共生期と自由生活期では細胞表層部分の構造が異なり,自由生活型の不動細胞ではペリクルと呼ばれる厚い細胞壁をもつことが明らかになっている。そこで,本研究では,自由生活型のSymbiodinium sp.の不動細胞の細胞外被の構造とその成分について明らかにすることを目的として透過型電子顕微鏡で観察した。
 本種の不動細胞は遠心によって人為的に誘導でき,遠心後,経時的に固定した不動細胞を観察した。その結果,不動化後徐々にペリクルが肥厚し,不動化後2時間で約153nmの厚さにまで達した。また,セルラーゼの一種に金粒子をつけたプローブ(CBH-I gold)により,ペリクルが金標識された。このことから,本種の不動細胞の細胞外被のペリクルには,セルロースが含まれることが明らかになった。不動細胞のペリクルからミクロフィブリル(MF)を化学的に抽出し,ネガティブ染色法により,MFの形態的特徴を明らかにした。さらに,そのMFが,CBH-I goldにより標識されたことから,CMFであることが明らかになった。CMFの幅は,平均3.9±0.13nm(最小値1.4nm,最大値9.5nm)で,非常に細い繊維であった。

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