渦鞭毛藻Alexandrium hiranoiの細胞外被の微細構造の変化
俵 慎也(細胞生物学研究室)

tawara  海産渦鞭毛藻Alexandrium hiranoiは,2本の鞭毛を持つ遊走細胞とecdysisと呼ばれる細胞外被を脱ぎ捨てる現象によって不動化し,原形質の外側にペリクルと呼ばれる厚い細胞壁を持つ不動細胞のステージが交代する生活環を示す。しかし,本種の生活環を通しての詳細な細胞外被の微細構造については明らかにされていない。本研究では,A. hiranoiの遊走細胞の細胞外被構造,不動化における細胞外被構造の変化の過程を明らかにすることを目的とし,超薄切片法を用いて透過型電子顕微鏡で観察した。
 本種の遊走細胞は,一番外側に原形質膜,その内側にアンフィエスマ小胞(av),avの内部には鎧板が存在した。また,隣り合うav同士は,密着してsutureと呼ばれる構造を形成していたが,個々のavはそれぞれ独立した小胞として存在した。
 本種の遊走細胞は,遠心によって人為的にecdysisを誘導することができる。遠心後の不動細胞を加圧凍結固定法により,経時的(直後,15分後,30分後,1時間後)に固定した。遠心直後の不動細胞では,新しい原形質膜の外側に電子密度が高く非常に薄い層(ペリクルI)が形成され,遠心15分後では,ペリクルIの内側に約37nmの電子密度のやや高い層(ペリクルII)が肥厚し始め,1時間後には,約215nmの厚さまで達した。ペリクルIの厚さ,構造に変化はなかった。また,遠心15分後の細胞から,原形質膜の内側にavが形成され始め,徐々に細胞表面を覆うように大きく形成された。

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