葉状緑藻ヒトエグサ類の栄養細胞の構造
山岡将大(細胞生物学研究室)

yamaoka アオサ目アオサ/アオノリ属の葉状緑藻は二層の細胞層からなり,細胞内には藻体外側に側壁性の葉緑体が,内側には液胞が,それらの間には核やその他の細胞小器官を含む中央原形質塊が存在する。この中央原形質塊は葉緑体に沿って,あるいは貫通している複数の細胞質の「すじ」により細胞縁辺の薄い細胞質層と結ばれており,また,全体がうごめくような運動を行っていることが知られている。一方,緑藻ヒトエグサ類は,外見上はアオサ/アオノリ属と類似するが,一層の細胞層からなり,異型世代交代を行うことから,異なるヒビミドロ目に含まれている。本研究では,ヒトエグサ類の3種(ヒトエグサ,エゾヒトエグサ,シワヒトエグサ)の栄養細胞の構造を光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡を用いて調べた。
 ヒトエグサとエゾヒトエグサでは,藻体の一方の側面に沿って側壁性の葉緑体が存在したが,核を含む原形質は,ヒトエグサでは葉緑体を液胞の間に,エゾヒトエグサでは液胞を挟んで葉緑体の反対側に存在した。一方lシワヒトエグサの葉緑体は細胞の両端や中央部などさまざまな場所に存在した。また,ヒトエグサの生細胞では原形質塊の運動が確認されたが,原形質塊と縁辺細胞質とを結ぶ「すじ」の存在は確認できなかった。

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