海洋生命・分子工学英語ゼミナールは,3 年生が原著論文の科学英語を読む練習をする
演習科目です。2017 年度の担当も湯浅 ・ 市川 ・ 藤原の 3 人です。
藤原担当分では,基礎的な教科書にも引用されていて講義にも出てくるような,歴史的に重要な論文を
中心に読みます。 “読みやすいこと” や “読んで楽しいこと” も重視して選んでいます。
味わって読んでください。
2018
年度
下記の論文を読みました。
Dishevelled phosphorylation, subcellular localization and multimerization regulate its role in early
embryogenesis.
U. Rothbacher, M. N. Laurent, M. A. Deardorff, P. S. Klein, K. W. Y. Cho & S. E. Fraser (2000)
The EMBO Journal vol. 19, pp. 1010-1022.
〜 両生類の受精直後の胚では,精子侵入点の反対側で β-カテニンが核に入ることで,そちらが背側に
なります。通常,Wnt → Frizzled → Dishevelled(Dsh)と続くシグナル伝達経路が β-カテニンを
核に入れるのですが,両生類の胚では背側で Wnt や Frizzled などの機能を阻害しても背側は正常に
形成されます。 Dsh は受精直後の表層回転によって将来の背側に濃縮しますが,ただ濃縮すれば
Dsh って活性化するものなんでしょうか? それについて調べた論文です。『細胞工学』を受講して
いない人は,受講していた人 or 藤原にいろいろ質問しに来てくださいね。もちろん,『細胞工学』
を受講した人も,遠慮なく質問に来てください。
[ 参考文献 ] 課題論文に関連するいくつかの論文です。余力のある人は是非読もう!
ただし,『細胞工学』をやっていない人にはちょっと難しいかも。
Xwnt-11: a maternally expressed Xenopus wnt gene.
M. Ku & D. A. Melton (1993) Development vol. 119, pp. 1161-1173.
Injected Xwnt-8 RNA acts early in Xenopus embryos to promote formation of
a vegetal dorsalizing center.
W. C. Smith & R. M. Harland (1991) Cell vol. 67, pp. 753-765.
2017
年度 下記の論文を読みました。
Genome engineering using the CRISPR-Cas9 system.
F. A. Ran, P. D. Hsu, J. Wright, V. Agarwala, D. A. Scott & F. Zhang (2013)
Nature Protocols vol. 8, pp. 2281-2308.
〜 CRISPR-Cas9 システムを利用したゲノム編集は,ノーベル賞の可能性も高いと言われる画期的な
テクノロジーです。最先端の技術なので“最初の論文”ではなく,読みやすさを考えてこの論文を
選びました。それでもちょっと難しいかなぁ〜?
2016
年度 下記の古典を読みました。
Studies on the chemical nature of the substnace inducing transformation of pneumococcal types.
Induction of transformation by a deoxyribonucleic acid fraction isolated from Pneumococcus Type III.
O. T. Avery, C. M. MacLeod & M. McCarty (1944)
Journal of Experimental Medicine vol. 79, pp. 137-158.
〜 とてもとても有名な論文です。著者名を見ただけで,何について研究してどんな成果が得られたのか,
もうわかってしまうね。別の授業などで既にみんなよく知っているはず。その分だけ読みやすい…かな?
2015
年度
下記の論文を読みました。
RNA regulons in
Hox 5' UTRs confer ribosome specificity to gene regulation.
S. Xue, S. Tian, K. Fujii, W. Kladwang, R. Das & M. Barna (2015)
Nature vol. 517, pp. 33-38.
〜 リボソームが,この mRNA は転写する,この mRNA は転写しない…という区別をするなんて,ちょっと前
なら誰も考えないことでしたが,そういうことが実際にあるということがわかってきています。
〜 最新の成果ですが,簡潔明瞭に書かれているので,英語論文購読の題材としてもとてもよいと思います。
Nature 誌には『要旨』の和訳サービスがあり,web 上で閲覧できます。見たければ,これまでに勉強した
情報処理の技術を駆使して,自力で手に入れよう。
[ 参考文献 ] 課題論文を紹介した記事です
Entry signals control development.
J. D. Dinman (2015) Nature vol. 517, pp. 24-25.
2014
年度
下記の論文を読みました。
Removal of maternal retinoic acid by embryonic CYP26 is required for correct
Nodal expression during
early embryonic patterning.
M. Uehara, K. Yashiro, K. Takaoka, M. Yamamoto & H. Hamada (2009)
Genes & Development vol. 23, pp. 1689-1698.
〜 マウスにおいて,母性のレチノイン酸分解酵素 CYP26 が働かないようにすると,
一つの体がなんと二つに!?
2013
年度
下記の論文を読みました。
Ectopic expression of the proto-oncogene
int-1 in
Xenopus embryos leads to duplication of
the embryonic axis.
A. P. McMahon & R. T. Moon (1989)
Cell vol. 58, pp. 1075-1084.
〜 マウスの原がん遺伝子
int-1 の mRNA をカエル胚の腹側に注入すると背側構造が重複し,
二次胚ができる! 背腹極性を確立するための Wnt シグナル経路の役割が解明される発端
となった画期的な論文です。
2012
年度
下記の論文を読みました。
The Snail repressor establishes a muscle/notochord boundary in the
Ciona embryo.
S. Fujiwara, J. C. Corbo & M. Levine (1998)
Development vol. 125, pp. 2511-2520.
〜 ホヤの転写抑制因子 Snail が,
Brachyury 遺伝子の脊索特異的発現に貢献していることを
示した論文。レポーター解析やゲルシフト解析の方法と結果がわかりやすいです。
2011
年度 下記の論文を読みました。
Isolation of a transforming sequence from a human bladder carcinoma cell line.
C. Shih & R. A. Weinberg (1982)
Cell vol. 29, pp. 161-169.
〜 ヒトのがん細胞の DNA をマウスの繊維芽細胞に導入すると,マウスの細胞ががん化する!
がんの原因は DNA にあるのだということを明快に示した実験であり,がん遺伝子
ras の
発見につながった研究。
2010
年度 下記の論文を読みました。
Point mutations define a sequence flanking the AUG initiator codon that modulates
translation by eukaryotic ribosomes.
M. Kozak (1986)
Cell vol. 44, pp. 283-292.
〜 真核生物の mRNA における翻訳開始点のコンセンサス配列は!?
真核生物の翻訳開始のメカニズムに迫る!
*
課題 No. 1 の解説 *
課題 No. 2 の解説 *
課題 No. 3 の解説 *
課題 No. 4 の解説 *
課題 No. 5 の解説
2009
年度 以下の論文を読みました。
The developmental capacity of nuclei transplanted from keratinized skin cells of adult frogs.
J. B. Gurdon, R. A. Laskey & O. R. Reeves (1975)
Journal of Embryology and experimental Morphology vol. 34, pp. 93-112.
〜 分化した表皮細胞の核を,除核した未受精卵に移植して,クローンカエルを作る!
教科書にも載っている重要な研究です。 Gurdon さんは,関連する論文をたくさん書いて
いますが,pdf を無料でダウンロードできるので,これを読むことにします。
→ レポート課題 No. 1 の解説は
こちら → レポート課題 No. 2 の解説は
こちら → レポート課題 No. 3 の解説は
こちら → レポート課題 No. 4 の解説は
こちら → レポート課題 No. 5 の解説は
こちら
2008
年度 以下の論文を読みました。
Induction of germ cell formation by
oskar.
A. Ephrussi & R. Lehmann (1992)
Nature vol. 358, pp. 387-392.
〜
oskar mRNA を本来と違う場所に局在させると,そこに生殖系列細胞ができる!
→ レポート課題 No. 1 の解説は
こちら → レポート課題 No. 2 の解説は
こちら → レポート課題 No. 3 の解説は
こちら → レポート課題 No. 4 の解説は
こちら → レポート課題 No. 5 の解説は
こちら
2007
年度 以下の論文を読みました。
Potent and specific genetic interference by double-stranded RNA in
Caenorhabditis elegans.
A. Fire, S. Xu, M. K. Montgomery, S. A. Kostas, S. E. Driver & C. C. Mello (1998)
Nature vol. 391, pp. 806-811.
〜 RNAi 技術発明の第一報!!
→ レポート課題 No. 1 の解説は
こちら → レポート課題 No. 2 の解説は
こちら
2006
年度 以下の論文を読みました。
Early cellular interactions promote embryonic axis formation in
Xenopus laevis.
R. L. Gimlich & J. C. Gerhart (1984)
Developmental Biology vol. 104, pp. 117-130.
〜 両生類の背腹を決めるのは植物極側の割球である! 実験発生学の真髄!!
2005
年度 以下の論文を読みました。
The
bicoid protein determines
position in the Drosophila embryo in a concentration-
dependent manner.
W. Driever & C. Nusslein-Volhard (1988)
Cell
vol. 54, pp. 95-104.
〜 世界で初めて実証されたモルフォゲン Bicoid の濃度勾配とその生物学的意義!
→ レポート課題は
こちら
→ レポート課題の解説は
こちら
[ 参考 1 ]
A gradient of bicoid protein
in Drosophila embryos.
W. Driever & C. Nusslein-Volhard (1988)
Cell vol. 54, pp. 83-93.
[ 参考 2 ]
Background to bicoid.
Peter A. Lawrence (1988)
Cell vol. 54, pp. 1-2.
2004 年度
以下の 2 編の論文を読みました。
Altering the genome by homologous recombination.
M. R. Capecchi (1989)
Science
vol. 244, pp. 1288-1292.
〜 相同組換えによる遺伝子ターゲッティングの発展を概観した初期の総説!
→ レポート課題は
こちら
→ レポート課題の解説は
こちら
Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined
specificity.
G. Kohler & C. Milstein (1975)
Nature vol. 256, pp.
495-497.
〜 モノクローナル抗体の発明!!
2003 年度
以下の 2 編の論文を読みました。
Evidence from reversal of handedness in
C. elegans embryos for
early
cell
interactions determining cell fates.
W. B. Wood (1991)
Nature vol. 349, pp. 536-538.
〜 割球の配置を変えると左右が逆転する!? 線虫の左右は細胞間相互作用で決まる?