生物学概論 I (物部キャンパス) 2008
10/7 の質問

このページには,みんなの質問への回答を載せます。「回答」 は 「解答」 ではありません。 “正解を
教える” のではなくみんなの質問に返事をするという意味です。わからないことはわからないと書きます。
みんなが自分で調べてわかったら,逆に私に教えてください。回答を読んでわからないことがあれば
再質問も歓迎します。
系統分類学に関しては,私自身が素人同然なので,みんなと一緒に勉強を
したいと思います。講義や回答の中に間違いもあるかと思います。気づいた人は質問票の中ででも
講義中でもよいので指摘してください。鋭いツッコミをした人には加点します。
この質問・回答欄に載った
事柄が期末試験の問題のネタに使われることもあります。分量が多いときは大変だと思いますが,
必ず読んでください。

二人以上から同じ質問をもらった場合,一人の質問をピックアップしてここに載せますが,同じ質問を
した人には同じように点数を加算します。また,来週は宿題を集めますが,宿題には可能な限りコメント
をつけて翌週にお返ししますので復習に使ってください。宿題の点数は甘めにつけますから,何か
書いて出してください。中途半端であっても,出さないよりは出した方がよいです。

それから,質問をくれた人へ直接回答を届ける気持ちをあらわすために,質問した人の名前を載せて
います。名前を載せてほしくない人は,質問票にニックネームを書いてください。その場合でも,本名を
書くのは忘れずに! 質問票は出欠確認を兼ねています。



生物の系統と分類

(栗原君) 現在もやはり 「五界説」 は有力なのでしょうか? 問題点があるということで,改善して新しい
  分類方法を作る動きはありますか?
 〜似たような質問: デメ君
(石井君) これから先,五界説から六界説のように,もっと詳しく分類される可能性はあるのでしょうか?
 〜同様の質問: 山下さん,芝野君
 (答) たとえば原生生物については,新しい枠組みで,系統を反映した分類をしようという試みが
  真剣に行われています。ただ,まだまだたくさんの異なる意見があって,簡単には決着しそうに
  ありません。さらに,そうしてできる分類体系は,素人には複雑すぎて,しかもほとんどが肉眼では
  点にも見えないくらいの単細胞生物であるため,日常的な感覚とかけ離れています。ですから,
  そういう新しい分類体系が完成したとしても,生物学の入門段階ではやはり五界説を一度は勉強
  するんじゃないでしょうか?ちなみに,1959 年に Whittacker が五界説を発表してから,1977 年には
  Carl Woeseモネラ界真正細菌界古細菌界に分ける六界説を発表しています。

(三原さん) 二界説の頃にはある界に分類されていた生き物が,五界説の頃には違う界にいることや
  その逆の生き物はいるんですか?
 (答) 例えば,二界説の頃にはカビやキノコは植物の特殊なかたちと考えられていましたが,五界説
  の中では,植物と菌類真菌類)は別々の界に属するようになりました。そのような例はたくさん
  あります。

(則近さん) 分類で,ドメインは初めてききました。このドメインは,いつ頃からできた言葉なのですか。
 (答) さっきも出てきた Woese さんが 1990 年に作りました。

(宮本さん) 今の分類の傾向として,系統を調べることの方が重要視されているのですか。
 (答) もともと系統は重要視されていたのですが,系統関係を類推するのはとても難しかったのです。

(栗田さん) ワカメやコンブは緑色をしているし,植物の仲間だと思っていたのですが,なぜゾウリムシ
  などと同じ界に分類されているんですか

 (答) ワカメやコンブなどを含む藻類は最初のうち植物として扱われていましたが,葉緑体の構造や
  その内部の分子の性質,鞭毛の形などを調べてみると,陸上植物とは相当違った生物であることが
  わかってきたのです。それで,藻類は植物ではないということになっています。ワカメやコンブがゾウリ
  ムシと近縁だとする説は, 1999 年に Cavalier-Smith さんが提示しました。主として,鞭毛の構造の
  類似性と,どちらのグループも紅藻類の共生を起源とする葉緑体をもつという共通点などが根拠です。
  ゾウリムシではそのような葉緑体は既に失われていますが。ゾウリムシなどの繊毛虫は,マラリア原虫
  に代表されるアピコンプレクサ原虫渦鞭毛藻と近縁と考えられています。これらの生物は細胞膜の
  内側にアルベオールと呼ばれる構造を持っているのが共通点です。・・・で,アピコンプレクサ原虫や渦
  鞭毛藻は紅藻に起源すると考えられる色素体をもっており,この点でワカメやコンブなどの褐藻類
  似ているのです。

(貫さん) こんぶなどの藻類は海中で生息していますが,陸上の植物と違って光のあたる量が違うと
  思います。これは閾値の違いですか。
 (答) どの程度の明るさや波長の光で光合成をするかは,生物の種によってかなりの多様性があり
  ます。同じ陸上植物でも,日向でないと育たないものもあれば,日陰を好むものもありますよね。

(竹之内君) 門は,脊索動物門ではなく脊椎動物門と習ったが,どっちが正しいのか?脊索動物門には
  ホヤは含まれるのか?
 (答) 専門的な質問ですね。いまでは,頭索類ナメクジウオ),尾索類(ホヤなど)と脊椎動物を
  一まとめにして脊索動物門とする方が一般的です。

(蝶野君) 人間は分類学によるとどういう表現になるのか?
 (答) 脊索動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科となります。ヒト科には,チンパンジー属,ゴリラ属などいくつか
  の属とともに,ヒト属も含まれます。ヒト属の中で,現生の種は私たち Homo sapiens しかいませんが,
  絶滅した種として,ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis),直立猿人(Homo erectus)などが
  います。ちなみに,現生人類は日本人もその他のすべての人種・民族も全部 Homo sapiens という単一
  の種になります。

(脇さん) ワニ鳥類に近いということは,は虫類と鳥類の祖先は同じなのか。
(森田君) トリをは虫類の中に含むべきか議論になるということですが,綱や目などの区別の階層を
  増やすことで解決しないのですか。
 〜似たような質問: 磯本さん
 (答) そのとおりです。鳥類の祖先は恐竜(爬虫類)です。恐竜自体は絶滅しましたが,考えように
  よっては,鳥類こそが恐竜の生き残りと見ることもできます。ワニ類は恐竜と近縁です。それで
  現生の動物の中ではワニと鳥類が近縁だというわけです。森田君の質問に対しては,「爬虫類」
  という分類群をあきらめて,トカゲとヘビで 1 グループ,カメが 1 グループ,ワニが 1 グループ,
  鳥類が 1 グループというようにすれば,現生の動物の分類に関する限り,取りあえずの問題は
  回避できるかも知れませんね。こんなことを言ったら,分類学者の人に怒られるかも知れませんが。

(石田さん) 中学では変温動物の中では虫類,恒温動物の中で鳥類というように分類していたような
  気がしますが,生物の系統分類ではそういった機構よりも,DNA の配列が一番優先されるという
  ことですか?
 (答) DNA の配列についても,下の西村さんと上枝さんへの回答に書いたように万能ではあり
  ません。一方,個体や細胞の形態や機能を基準にして分類するときには,その形態なり機能なり
  が分類学上どの程度重要かという重みづけが必要になります。ある形態や機能は,独立に獲得
  される場合(収斂進化)があるからです。鳥類と哺乳類は恒温動物(自分で体温を作るという意味で
  内温動物といいます)ですが,これも独立に獲得されたと考えられます。また,爬虫類の中で,鳥類
  と最も近縁な恐竜のいくつかのグループも内温動物だったのではないかという説があります。
  みんなのよく知っている例では,コウモリと鳥類はどちらも翼をもつけれども,これは収斂進化で
  あって,近縁性を示すわけではない・・・ということがあります。第 4 回以降の講義で出てきますので
  お楽しみに。形態や機能を基準にして分類するときには,どの形質に着目するかというところが
  難しいのです。

(大石君) ワニとトリは近縁であるという話でしたが,DNA ではどれくらいの差があるのでしょうか。
 (答) すぐ下の西村さん,上枝さん,神田さんへの回答を読んでみてください。調べる遺伝子に
  よって,どの程度配列が保存されているか(どの程度配列が変化しにくいか)が違います。
  かといって,全 DNA 配列を比較することも無理です。ほとんどが意味のない(or 意味があるのか
  ないのかすらわからない)配列で,どの部分とどの部分を比較していいかもわからないからです。
  ・・・なので,どれくらいの差があるかというのを単純に数字で示すことはできません。

(西村さん) リボソームの配列による形態比較ができることはわかったのですが,これによって分類も
  正確にすることは可能ですか?
 (答) DNA や RNA の配列による系統分類も万能ではありません。遺伝子の配列は中立ではなく,
  そこから作り出されるタンパクの機能に対しては淘汰圧選択圧)がはたらきますから,全ての遺伝子
  の配列が時間に比例して同じスピードで変化していくわけではありません。それで,調べる遺伝子
  によっては得られる結論が異なってしまう場合もあります。できるだけたくさんの遺伝子について
  総合的に調べることがいまの技術では可能になっていますが・・・。それと,次の上枝さんが指摘した
  ような問題もあります。そちらもあわせて読んでみてください。

(上枝さん) DNA を調べることで系統を調べるという話があったのですが,私はミトコンドリア DNA
  使っていると聞いたことがあります。これは正しいのですか?
 (答) すぐ上の西村さんへの回答にも書いたように,遺伝子の配列は,その機能に対して淘汰圧
  受けますから,時間が経っても変化しにくい(変化した場合に生存できない確率が高い)遺伝子と
  比較的変化しやすい遺伝子とがあります。ミトコンドリア DNA は比較的変化しやすいので,近縁の
  種どうしや種内での系統関係・親戚関係などを調べるのによく使われます。一方,リボソーム RNA
  の中でも(数種類あると講義で言いましたね),短い RNA (5S rRNA といいます)の配列は非常に
  変化しにくいので,遠縁の生物どうしの系統関係を吟味するために使われます。それで,今日の
  スライドで見てもらったような,ドメインや界といったレベルでの系統関係を推測するためには,
  5S rRNA の配列がよく使われるのです。

(神田さん) DNA 配列情報は,その生物のリボソーム RNA を用いて調べますが,リボソームの RNA の
  数と DNA の数が大きく異なるのに,なぜそこから DNA の全ての情報が得られるのでしょうか。

 (答) 神田さんの言うとおりで,確かに,リボソーム RNA の配列は,全 DNA 配列と比較すれば,
  取るに足らない,ごく一部分です。すぐ上の上枝さんへの回答を読んでみてください。実際には
  全部の配列を比較するのは困難で,比較的保存されている部分(多くの場合それは何かの遺伝子
  なんですが)を比較することになるのです。。。

(和田さん) 動物の分類はよく聞くので何となくわかりますが,植物の場合はどういったところで分類
  されるのですか。
 (答) 植物は,後半の岡本先生の授業のメインテーマなので,岡本先生に質問してください。
  私自身,植物のことはほとんどわかりません。ごめんなさい。

真正細菌と古細菌

(栗原君) 原核生物の細胞が真核生物の細胞に比べ構造が単純なのは,真核生物の細胞にしか
  ないような組織が必要ないからですか? それとも進化がおくれているのですか? 
 (答) 進化が遅れているということはありません。真核生物の細胞は大きくなりました。スペースが
  大きくなったので,内部での物質の輸送などが非効率的になりがちです。それを解決するのが
  細胞内にある膜構造です。原核生物と真核生物は,それぞれに違った戦略と方法で進化の歴史
  を作ってきたと考えるべきだと思います。どちらかが優れていてどちらかが劣っているのでは
  ありません。なぜなら,どちらの生物も地球上では大いに繁栄しているのですから。

(本橋さん) ペプチドグリカンがあることによって,どのような効果があるのですか?
 (答) ペプチドグリカンは硬いので細胞の強度を増して壊れにくくしています。また,浸透圧の調節
  にも役立っているそうです。

(中尾君) プロテオバクテリアの中の γ-プロテオバクテリアには大腸菌チフス菌など腸内細菌を
  含むとあったが,私たちの身近な飲み物で腸内と大きく関連している 「ヤクルト菌ビフィズス菌
  も含まれてるんですか?
 (答) ヤクルト菌もビフィズス菌もプロテオバクテリアではなくグラム陽性菌です。ヤクルト菌は
  バチルス綱に属しています。ビフィズス菌はアクチノバクテリア綱ビフィドバクテリウム目に属して
  います。アクチノバクテリア綱には他に放線菌目もありますので,そっちと近縁ということになります。

(後藤君) プロテオバクテリア根粒菌は植物の根に付きますが,植物にはどんなデメリット(影響)
  が及びましたか?
 (答) 根粒菌は,マメ科植物によくつきますが,これは完全に持ちつ持たれつの共生です。
  根粒菌は窒素を固定して植物に提供しており,植物は光合成で作った炭水化物などを根粒菌に
  与えています。

(川崎さん) らん藻は細菌だと聞いて驚いたのですが,植物とは違い器官などはないのですか?
 〜似たような質問: 大賀君
 (答) 藍藻は,たくさんの細胞がつながって,肉眼ではっきり見えるほどに大きくなる場合が多いの
  ですが,その細胞は 1 種類かあるいは 2 種類程度で,多細胞の植物のように細胞の機能分担は
  ほとんどありません。また,1 個 1 個の細胞を見ると,その内部に核はなく,複雑な膜構造も
  持ちません。明らかに原核生物なのです。

(本橋さん) らん藻は水中とかだけでなく,大気とかでも生きていけるのですか?
 (答) 比較的じめじめした道端に転がっているワカメのようなものを見かけたことがありますか?
  授業でもちょっと話しましたが,あれはイシクラゲという藍藻です。つまり,藍藻は水中だけでは
  なく,地面の上でも生きられます。

(長尾さん) 高校の生物で学んだ紅色硫黄細菌なども,特殊な環境に生きる古細菌に含まれ
  ますか?
 (答) いいえ。紅色硫黄細菌は真正細菌のプロテオバクテリアのグループに属します。確かに
  酸素がなくて,猛毒の硫化水素が噴き出すような苛酷な環境に住んでいますが。

(麓さん) 古細菌は沸騰したお湯など特殊な状況で見つけられたと言っていたが,沸騰することに
  よって常温の水のときの細菌から変化したということですか?
 (答) 実際に沸騰しているお湯に住んでいるというのではなく,沸騰しそうなくらい高温の水の中に
  住んでいるのです。また,真正細菌に熱をかければ古細菌になるというものではありません。
  それは,たとえば犬にお湯をかけたら猫になるといったようなことが起こらないのと同じです。
  そもそも別々の生物なのです。

(甲盛君) なぜ古細菌は厳しい環境下にしか存在していないのか?
 (答) わかりません。普通の環境においては,真正細菌の方が生存に有利だったために古細菌
  が割り込む余地がなかったのかも知れませんね。

(長尾さん) 原核生物がもつ DNA の末端どうしがくっついたのは,何かの突然変異が原因ですか?
 (答) それはいい質問です。どうしてなのか説明できません。たぶん誰にもわからないと思います。

(永友君) DNA が直線と,輪になっているのがあるときいて気になったのですが,直線であることの
  利点,輪であることの利点というのはあるのでしょうか?
 〜同様の質問: 村上君,石川君,堀内さん,前薗君
(福井さん) 真正細菌と古細菌はどうやって DNA の複製を行うのですか。
(大林さん) 真正細菌と古細菌には DNA に末端がないと言っていましたが,DNA の構造をコピーして
  いく際,最後に末端どうしがくっつくのですか?
 (答) 利点を説明するためには,DNA 複製の仕組みを説明しなければいけませんが,それについて
  ここに書き始めるとそれだけで一日がかりになってしまいますので,私が担当する別の講義 「分子
  遺伝学」 の web テキストのページ
  http://www.s.kochi-u.ac.jp/~tatataa/genetics/contents.html 
  から,DNA 複製の PowerPoint ファイルをダウンロードしてください(ダウンロードは ここ をクリック)。
  ・・・で,直線状の DNA は,DNA 複製のたびに,両端を完全に複製できずに,少しずつ短くなって
  行きます。 DNA がある程度以上短くなると,細胞は分裂しなくなり,老化して,やがて死にます。
  多細胞生物においては,個体は一定の寿命をもち,生殖細胞だけが次世代へつながっていきます。
  個体の寿命は,細胞の寿命と関連しており,細胞の寿命は,DNA の末端が短くなることと関連して
  います。一方,環状 DNA には端がないので,何度複製しても DNA が短くなることはありません。
  それで,細菌は,永遠に細胞分裂を続けて増殖できます。環状 DNA の複製のときには,鋳型と
  なる元の鎖は,切れることはありません。つまり鋳型鎖の方には最初から最後まで “末端” という
  ものはできません。一方,複製のときに新たに合成される鎖の方は,最初はたくさんの断片で
  できています。それらの断片は,細胞の中の酵素の働きで連結されて,最終的に末端のない
  環状 DNA になります。

(松本さん) 真正細菌と古細菌は DNA 配列の鎖の形が,末端がなく似ているが,イントロンのある
  なしで DNA 上にどのような差が生じているか。
 (答) イントロンがあるのとないのとでは,遺伝子の発現の仕組みに大きな違いがあります。
  ただ,詳しいことは書ききれないので,これについても 「分子遺伝学」 のページ
  http://www.s.kochi-u.ac.jp/~tatataa/genetics/contents.html 
  から PowerPoint ファイルをダウンロードしてください(ダウンロードは ここ をクリック)。

(村山君) モネラ界の生物はどのくらいいるのですか。まだまだ見つかっていない新種もたくさん
  いそうですか。
 〜同様の質問: 濱口君
 (答) そうですね。真正細菌にしても古細菌にしても,まだ同定・記載をされていない種の方が,
  現在知られている種よりも圧倒的に多いはずです。

(高橋さん) モネラ界に属するものは全て真正細菌と古細菌に分類される?
 (答) 今のところそうですね。

(杉野君) 真正細菌と古細菌は似ている点が少ないのに同じ原核生物なのは,核がないからだけ
  なんですか。
 (答) そうですね。。。

(宮田君) 真正細菌と古細菌の共通祖先はどんな生物かわかっているのですか。またその祖先は
  新しいドメインになるのですか。
 (答) 共通祖先はまさに “生命の起源” というのとほとんど同じ意味になってしまいます。今は生き
  残っていませんので,それに対してドメインというものを設定はできないでしょう。

(福永君) 真菌とは真正細菌と同じですか。
 (答) いいえ違います。真菌はカビキノコのことで,真核生物です。一方,真正細菌は原核生物
  です。あとで,今日の授業の PowerPoint をダウンロードしてスライドをよく見てみましょう。

細胞の機能

(竹之内君) 核内からの RNA の運搬はどのように行われるのか?
 (答) 合成された RNA にはさまざまなタンパクが結合します。それらと,核膜上に存在するタンパク
  との相互作用によって,核内の RNA は核外に放り出されます。

(上野君) リボソームのない生物はいますか?
 (答) いません。すべての生物のすべての細胞は,例外なくリボソームをもっています。

生物学の研究について

(高田さん) 顕微鏡で目に見えない世界を研究している方は,だんだん細かい世界を研究していかな
  ければならなくなっていくと思うのですが,自分が何を(何のために)研究しているのか全体が見え
  なくならないのですか?
 (答) 私自身のことは棚にあげといて,いい研究をしている人は,大事なことを見失っていないし,
  ある程度全体を見渡すことができていると思います。逆にそれができない人は,大した研究はでき
  ないと思います。科学が進んで私たちみんなの知識が全体として深くなるほど,専門は細分化して
  「一人が何でも知っている」 ということは不可能になってきます。それは仕方のないことだと思います。

(白石君) DNA 配列はどうやって調べるのか。
 (答) 詳しく説明すると長くなるので,下記の URL へ行ってみてください。私が担当している実習の
  web テキストの一部です。
  http://www.cc.kochi-u.ac.jp/~tatataa/tech2008/gene/sequence.html  

(山崎君) モネラ界の生物は,体の大きさが肉眼では見えないくらい小さいということですが,それ
  ほど小さい生物の DNA 配列を調べるにはどのような方法が使われるのでしょうか。たとえば,
  シロツメクサの DNA を調べたことがあるのですが,10 本ほどの個体から得られたのはほんの
  わずかの DNA でした。モネラ界の生物はシロツメクサよりももっと小さいですから,それだけ DNA
  解析をするためのサンプルを集めるのは大変だと思うのですが。
 (答) 具体的な問いかけで,とてもよいですよ。いま,モネラ界の代表として大腸菌を考えて
  みましょう。大腸菌の細胞 1 個はとても小さいですが,栄養たっぷりの培養液で培養すれば
  20 分に 1 回分裂します。すると,24 時間培養すれば,理想的には 272 個の細胞にまで増やす
  ことができます。 実際にはそれほどは増えませんが,それでも普通に 1 日培養していれば,
  おにぎりを作れるくらいのサイズ(作りませんけど)にまで増やすこともできるのです。

(吉見君) μm 単位の細菌の大きさはどのように計り定義されているのか?
 (答) 顕微鏡では,何倍に拡大できるかがわかりますから,顕微鏡で見た像の大きさから,本当の
  大きさを決めることができます。

(吉野さん) 今存在する顕微鏡で発見できないほど小さな細菌は存在するのか。
 (答) 現在の電子顕微鏡の解像度はすごくて,DNA などの “分子” ですら直接見ることもできます。
  ですから,どんな顕微鏡でも見つけられないほど小さい生物というのはいないと思います。

(松崎さん) グラム染色とはどのように行い,色がちがうことでどのようなことが分かるのか。
 (答) グラム染色の方法は,教科書類などを見てみてください。染料を用いた,ごく簡単な染色方法
  です。細胞壁のペプチドグリカンの違いによって陽性陰性の違いが生じるのです。グラム陽性菌と
  グラム陰性菌の区別は,細菌の分類に役立ち,またその細菌の性質を知るのに役立ちます。

(大矢さん) 生物の系統についてのお話がありましたが,そもそも 「生物」 とは何なのか,その定義が
  気になりました。人それぞれ思うところは違うのではないかとは思いますが・・・。
 (答) 自己複製能をする,代謝をする(外部から取り込んだ物質を分解して,自分の体を構築し,
  老廃物を体外に捨てる),外部の刺激に応答する・・・などいろいろな基準があると思いますが
  実際には厳密に線引きをするのは難しいですね。

(天間君) 先生は進化説を信じてますか?信じているのでしたら,そう思う一番の理由を教えて
  ください。ちなみに私はいまいち信じられないのです。
 (答) 進化は実験室で再現できませんからね。ただ,化石の記録(それぞれの年代から出る化石
  生物の形態の変化),それが出てくる地質年代の同位元素等を利用した推定,遺伝子の配列に
  見られる変異の記録など,いろいろな証拠は,進化が実際に起こったことを強く示唆していると
  思います。

授業の進め方について

(一丸君) ドメインのスライドのところに書かれていた薄い文字を見にくかったです。
 (答) 参考書の図をコピーしたときに薄い文字が見にくくなってしまいました。ごめんなさい。
  薄い文字は,読めなくても構わないというつもりで,書きなおすことはしませんでした。必要な部分
  だけ自分の字で重ね書きをしましたので,とりあえずそこに注目してくれたらと思います。
  授業で使う PowerPoint ファイルはあらかじめダウンロードして読んできてください。そうすれば
  薄い文字も(自分のパソコンで・・・あるいはそれを印刷して)読めるはずです。

(田村君) 宿題の(4)に関する説明がありませんでした。ネットで調べて書けばよろしいですか?
 〜吉田君の質問も同じ趣旨ですよね?
 (答) あ。ごめん! 講義の後半が駆け足になってしまって,そこのところをすっ飛ばしましたね。
  ネットや本で調べてみてください。ネットに関しては本と違って各々の記事に対して誰からも
  検閲が入っていないので,サイトによってはかなりいい加減なことを書いています。間違ったこと
  もたくさん書かれていますので,そのことを知って利用してください。




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