生物学概論 I (物部キャンパス) 2008
10/28 の質問

第 4 回の講義(10 月 28 日)の質問への回答です。



分岐分類学と分子系統学

(竹内さん) 分類はすごく細かく区分されているけれど,最終的に多いもので何段階くらい
  区分されるんですか。
 〜同様の質問: 一丸君
 (答) スライドで紹介した分類の階層がさらに細かく分かれることもあります。例えば,「科」 という
  分類のすぐ上に 「目」 というのがありましたよね。でも,実際には一つの 「目」 に属する 「科」 の
  中で比較的近縁なものを集めて 「上科」 や 「亜目」 という分類群を設定することもあります。

(磯本さん) 有袋類げっ歯類とは分類の階層ではどこにあたるのでしょうか?
 (答) 哺乳類) の中には,亜綱として原獣類カモノハシとかハリモグラなどの単孔類)と
  獣亜綱(その他の哺乳類)があります。獣亜綱の中に,さらに下綱という分類階層があって,
  その段階で,後獣下綱真獣下綱があります。有袋類は,後獣下綱に属する動物のことです。
  一方,真獣下綱には,私たちに馴染みの深いほとんどの哺乳類が属しています。この中で
  げっ歯類にはの地位が与えられています。

(栗原君) 最節約原理は確立されているものなのか?
 (答) 原則としては正しいと思います。ただ,すべての形質についてこのような考え方が適用でき
  るかどうかは慎重に判断しないといけません。今日の講義で話した例では,葉緑体の起源となる
  細胞内共生は進化の過程で複数回起こったと考えられるわけで,ここで最節約原理を適用して
  しまうと,実際の進化の過程を見誤ることになるからです。

(三原さん) 系統樹は頻繁に改訂されるのですか?
 (答) いまでも頻繁に改訂されています。

(松崎さん) 細菌などの分類はあいまいな点もありましたが,動物の分類では分類しにくいような
  ところなどはないのですか?
 (答) いやいやたくさんありますよ。次回以降の講義で触れていこうと思います。


(尾崎さん) 「分岐分類学の考え方」 のスライドのときの,派生形質などの見分け方や,生物の
  分類方法の仕方が少しわからなかったです。
 〜同様の趣旨の質問: 大矢さん
 (答) ある形質が派生形質なのか原始形質なのかを判断するのは,実際難しいのです。
  そこを間違えたために,実際の系統関係を見誤ることもよくあります。それだけ,難しいのです。

(下山君) 細胞内の細胞小器官によって分類することも可能なのでしょうか。
 (答) 原生生物藻類などでは,細胞小器官の構造や内部の分子の構造が,しばしば分類の
  決め手になります。近縁の生物の間での分類となると,細胞小器官にはほとんど全く違いがない
  ことが多く,これが決め手になることはほとんどありません。
   あ。ミトコンドリアの DNA の配列で分類をする場合には,逆に,比較的近縁のものでないと
  使えません。

(坂部さん) 分岐分類学の説明には植物細菌などが登場しませんでしたが,この分類学に
  含まれるのは動物のみですか? その場合,植物における分岐分類学のようなものはあるん
  ですか?
 (答) 分岐分類学は動物限定の手法というわけではありません。ただ,今回からは動物の話題に
  なるので,動物を題材にして説明しただけです。もっとも,動物は形態的な多様性に富んでいる
  ので,分岐分類学のよい研究テーマになるのは必然かと思います。分岐分類学で細菌を分類
  するのは難しいでしょうからね。

(坂部さん) 摂食排泄が同じ場所で行われるか否かということは共有形質として認められない
  のは何故ですか?
 (答) どこかにそう書いてありましたか? 私は,そういう話をしていないと思いますが,何かの
  話をそういう風に受け取ったのかも知れませんね。実際どうなのか考えてみましょうか。摂食
  と排泄を同じ場所で行うということは,肛門の区別がない動物ということですよね。そういう
  動物としては,刺胞動物扁形動物があるかと思います。これらの動物たちは,確かに摂食と
  排泄が同じ場所で行われますが,そのことからこいつらが近縁だとは考えられませんね。
  逆に,肛門をもつようになって食物が一方向に流れるようになったということは,体腔をもつ
  動物に共通の特徴としてあげることはできるんじゃないかと思います。

(川村君) 植物と菌類で同じ物質の細胞壁を持つ生物はいますか?
 (答) いないと思います。

(山下さん) DNA 配列にもとづく新しい系統の決定には問題点,課題点などはないんですか?
  伝統的な系統分類の方が優れている点はどはないんでしょうか?
 〜同様の質問: 麓さん,栗原君
 (答) DNA 配列に基づいて分類をする場合,生物の種ごとに突然変異の起こる頻度(確率)が違わ
  ないこと,DNA 上のどこでも同じ程度の頻度で突然変異が起こること
が前提となりますが,実際
  には,生物の種によって突然変異の蓄積のスピードが違うことが明らかになっています。また,
  一つの種の生物が持つゲノム DNA の内部でも突然変異のスピードに違いがあります。生物が
  どんな環境でどんな生活をするかは実に様々です。それぞれの生活環境やライフスタイルによって
  「この遺伝子が重要」 という遺伝子が違っているはずです。その生物にとって重要な遺伝子に
  突然変異が起こると,死ぬ場合が多いために,長い年月を経た後でも,その遺伝子の配列は
  あまり変化していません(変化した個体は死滅したため)。それに対して,その生物の生活に
  それほど必要ない遺伝子は,同じ年月を経た後には,相当突然変異が蓄積している可能性が
  あります。 異なる種の生物では,たとえ近縁であっても生活環境に大きな違いがあったりします
  から,種によって各遺伝子の進化のスピードが違ってくることになります。こういった誤差(?)を
  十分に加味しないと,DNA 配列による系統予測は間違った結論を導くこともあります。実際,比較
  する遺伝子の種類を変えると,違った系統パターンが導かれることがあります。そういうことがある
  ので,実際に DNA 配列を比較するときには,できるだけたくさんの遺伝子の配列を比較して
  総合的に判断しないといけません。現在のところ,すべての生物種について,それほどたくさんの
  配列データが充実しているわけではないので,まだまだ DNA 配列による系統分類は始まった
  ばかり,どちらかというと補助的な役割をすることの方が多いと思います。ただ,DNA の配列を
  調べる方法はどんどん進歩しているので,今後ますますその重要性は増すと思います。

単系統と多系統

(船奥さん) 鳥類以外に単系統のものはいるのですか?
 (答) 哺乳類は単系統だと思われます。両生類も。別に珍しいことではないですよ。

(栗原君) は虫類鳥類と区別するには消去法しかないということですか?
 (答) そうですね。

(則近さん) 爬虫類と鳥類
 (答) そのとおりです。言えます。鳥類に関しては簡単なのです。問題は爬虫類の方なのです。

(神田さん) 系統を単系統側系統に分けるのはわかりますが,多系統というくくりを作る必要性は
  あるのですか?
 (答) きちんと説明をしなかったのでわかりにくかったですね。いくつかの種の生物が単系統群で
  ある場合に,それを一つの分類群にまとめることには意義があります。逆に,多くの場合,一群の
  生物たちを一つの分類群にまとめるときには,可能ならばそれが単系統であってほしいと,誰もが
  願います。また,爬虫類が側系統群であることはわかってしまいましたが,それでも,非常に特殊
  化した鳥類を仲間外れにして爬虫類を一まとめにすることには,意義はあります。これに対して,
  わざわざ進んで多系統的な分類群を設定することはありません。ですから,分類学の論争の中で
  “多系統” という言葉は,「誰それが設定した分類群が実際には多系統的であるから正しくない」
  というような批判的な文章の中で使われることがほとんどです。たとえば,「扁形動物門は多系統
  的であり,一つの門にまとめるのは適切ではない」 というような場合です。
 

収束進化(収斂進化)

(松本さん) 収束進化では,別の地域で同じような環境で進化したので,似たような形態を持って
  いると言われましたが,これらが交尾して子孫を残すことは可能なのですか。
 〜似たような趣旨の質問: 山崎君
 (答) 収束進化は,系統的に離れた生物群がたまたま似たような形態をとることです。なので,
  見かけ(姿)が似ていても,別のです。同じ種になったわけではありません。交尾して子孫を
  残すこともできません。

(松崎さん) 収束進化で,似た環境で別々の生物が似た形態をとるとありましたが,似た形態をとる
  というのは,その形態でいることでメリットがあるからなのですか?
 (答) そのとおりだと思います。

(吉田君) イクチオサウルスは,イルカのように海で生活するようですが,爬虫類なのにエラがある
  のですか?
 (答) 爬虫類に(えら)はありません。肺呼吸をします。ですから,定期的に水面に出て,空気を
  吸わないといけません(実際にそういう姿を目撃したわけじゃありませんが)。その点では,哺乳類
  であるイルカやクジラも同様です。彼らは息が長くて何十分も潜っていられますが,それでもやはり
  ときどき水面に出て肺呼吸をする必要があります。クジラが潮を吹くのは,水面で息を吐いている
  ところなんですよ。

(竹之内君) 有袋類は何故,他の種の生物に外見がほぼ同じに見えるほどの分化ができたのか?
 (答) 特にオーストラリアのような環境では,他の大陸で普通に見られる哺乳類(真獣類)がいな
  かったため,同じような生態的地位を真獣類と争わなくてすんだことが大きいと考えられます。

相同と相似

(山本君) 相同についてはどうやって区別(判別)するのでしょう? DNA?
 〜似たような質問: 大矢さん
 (答) 相同か相似かは,DNA 配列からはなかなか判別できません。どちらかというと,近縁の生物
  どうし(あるいは祖先と思われる生物の化石)の間で形態を比較するなどして判断することが多い
  と思います。

無体腔,偽体腔,真体腔

(甲盛君) 真体腔と偽体腔の働きにちがいがあるのか。
 (答) 中に液体を満たしていて,これで機械的な強さと力を生み出すという点では共通だと思います。
  つまり,水の底を這いまわったり,砂に穴を掘ったりするときに使う力です。あと,真体腔動物では
  内胚葉消化器官など)に,体腔を囲む中胚葉細胞が接しているので,中胚葉と内胚葉の局所的
  な相互作用が可能となり,消化管の部域化(肝臓すい臓などの分化)が可能になったと
  言われています。。。ただし,偽体腔動物でも消化管の分化が全く見られないわけではありません。

(坂部さん) 偽体腔は分化していくと後々どのような器官になるのですか?
 (答) 偽体腔は,成体に見られる構造であって,何かに分化する “途中” の構造というわけでは
  ありません。

(前薗君) 血管を持つ動物は,体腔を持っていると言えるのですか。
 (答) 血管の内部は,起源をたどると初期胚における胞胚腔です。胞胚腔が直接体腔になる場合
  それは偽体腔なのですが,いわゆる偽体腔動物には血管は発達していません。むしろ,真体腔を
  備えた動物の大型化に伴って,痕跡的だった胞胚腔を血管として再編成して利用しているという
  ような感じです。ですから,血管を持つ動物は真体腔動物で,体腔を持っていると言えます。

(北田さん) 偽体腔動物でも,体液の流れをつくるために心臓のようなものがあるのですか?
 (答) 私がいま思いつく動物に関して言えば,偽体腔動物には心臓や血管のような循環系
  ありません。

(土屋君) 偽体腔と真体腔を同時に持つ場合はないのでしょうか?
 (答) 真体腔動物の多くは,血管持っています。すぐ上の前薗君への回答に書いたように,血管の
  内部の腔所は胞胚腔由来です。また,昆虫は真体腔動物ですが,血管は開放血管系で,血管
  から出た血液は血体腔と呼ばれるスペースに出ていきます。この血体腔も,血管とひとつながり
  ですから胞胚腔由来で,いわば偽体腔です。そういうわけで,真体腔を持つ動物の多くは偽体腔も
  持つと言えます。この場合 “真体腔を持つ” という形質を優先させて,真体腔動物に分類される
  のです。

(脇さん) 心臓のまわりにのみ(真体腔をもつ)というのは何故そのようになるのですか?
 (答) 心臓のまわりを囲む腔所は囲心腔といい,これは真体腔です。開放血管系をもつ動物の場合
  心臓を出た血管は,多くの場合すぐに血体腔に出ていきます。それで,囲心腔は,心臓とその周り
  の短い血管を囲むだけの小さな体腔になってしまいます。

(山中君) 偽体腔では物質の循環が悪いのでしょうか?
 〜同様の質問: 脇さん,栗原君,則近さん,石川君
(村上君) 偽体腔は真体腔に比べ,循環が悪いということですが,もし偽体腔をもったまま,その個体
  の体が大きく成長したら,その生物は生存できなくなるのですか?
 (答) 偽体腔しか持たない動物は一般に小さいので,特別な循環系や真体腔がなくても,効率よく
  物質を循環させることができます。だから平気です。つまり,不便だけど我慢しているというような
  ことではなく,必要がないから持っていないという方が正しいと思います。だから,偽体腔しか持た
  ない生物がそのまま大きくなったとしたら,効率よくものを循環させるには体が大きすぎて,困った
  ことになるでしょうね。

(川崎さん) 血管を持たない生物が紹介されていましたが,そのような循環系をもたない生物はどこで
  消化などをするのですか?
 (答) 消化をするのは消化器官ですよ。血管を持つ場合,消化管内で消化した栄養物を消化管壁
  から体内に吸収したのち,その栄養素を全身隅々の細胞にまで運ぶのが血管の一つの役割です。
  血管や心臓を持たない生物には小さい動物が多いです。小さい動物では,体内のすべての細胞が
  体の外側表面に近いので,消化管から吸収される栄養を直接受け取ることができるので,血管が
  不要なのです。

(宮田君) 偽体腔類の動物が真体腔類へと変化したり,進化したりすることはないのですか。偽体腔
  が真体腔になることとか。

 (答) 過去にはそういうことが起こっただろうと思います。いま生きている動物に関して,今後そういう
  ことが起こるかどうかはわかりません。

旧口動物と新口動物

(石井君) 新口動物がでてきたきっかけは何ですか?旧口動物の突然変異からでてきたのですか。
 (答) 新口動物と旧口動物の共通祖先がどんな姿だったのかについては,次回の講義でも少し考え
  ますが,実際のところはよくわかりません。ただ,おそらく,共通祖先は,今の分類群で言うような
  旧口動物と新口動物のどちらとも違った動物だったんじゃないかと思います。

(竹之内君) ヒトデには肛門があるのか?
 (答) ありますよ。

動物の多様性

(長尾さん) 海綿動物の写真を見てみると,アメーバのようですが,これはひとつの個体で動物なので
  しょうか? それとも集まっているのでしょうか? 個体だったら,あのアメーバのようなものの中に
  核は一つだけですか?
 (答) 海綿は大きいです。高知の海でも,両手で抱えるほどの大きさの塊になったりもします。でも,
  それは,たくさんの小さな細胞(それぞれに核を持っています)が集まってできたものです。その細胞
  の 1 個 1 個の大きさは,私たちの細胞とほとんど違いません。 ただ,個体の概念を適用するのは
  とても難しいです。実際,講義でも話したように,海綿にはきちんとした組織とか器官はありません。
  海綿をガーゼに包んですりつぶす実験を見たことがありますか? 細胞はとても小さいので,この作業
  で個々の細胞はすりつぶされることはなく,結果として,細胞がバラバラになります。そういう細胞を
  シャーレに入れて 10 日間ほど放っておくと,細胞が寄り集まって,また海綿の姿になるのです。
  こういったことからも,海綿の “個体” というものがはっきりした存在でないことはわかってもらえると
  思います。それでも,海綿は,動物であることには違いありません。

(栗田さん) 放射相称であることは,左右相称であることと比べてどのようないいことがあるのですか。
  また逆はどうなのでしょうか。分かれているということは,それぞれにとってよりいい方を選んでいる
  と思いますが・・・。
 (答) なかなか鋭いですね。また,「それぞれにとってよりいい方を選んでいる」 という考え方もとても
  よいと思います。私たち人間は,ヒトが一番優れていて他の動物は下等だと思いたがるものだから。
  さて,放射相称は,一般にクラゲのように水中を漂う生活とか,イソギンチャクなどのように岩に
  固着してプランクトンなどを食べる生活に適していると言われます。一方,左右相称の体は,水中
  を泳いだり海の底や地面の上を這いまわって,活発に獲物を探して捕まえる生活に適していると
  言われます。それで刺胞動物(イソギンチャク,クラゲなどの仲間)の祖先はもしかしたら左右相称
  動物で,彼らのライフスタイルに合わせるようにやがて放射相称の体を手に入れたのではないか
  という考え方もあります。

(森澤さん) 触手冠動物がどんな生物なのか,興味が沸きました。一番知名度が高い触手冠動物は
  何ですか?
 (答) 現代に生きている触手冠動物でもっとも繁栄しているのはコケムシです。海に行って,ロープ
  を引き上げたり,ブイをひっくり返したりすると,実にたくさんのコケムシを普通に見ることができます。
  そういった器物に付着して生活する動物の中では,ホヤやカイメンと並んでとても広い面積を占める
  (つまり繁栄している)動物です。 一方,過去の動物に注目すると,古生代には腕足類という動物
  が非常に繁栄していました。軟体動物ではないのですが,一見すると二枚貝のような貝殻を持って
  いるので,化石になりやすいということもあります。実際,世界中からたくさんの化石が見つかるので
  腕足類のどの種の化石が出たかで,その地層の年代を推定する基準にされたりもします(年代を
  知る基準となる化石を示準化石といいます)。腕足類は,今でも生きていますが,それほど目立って
  はいません。

(上野君) 軟体動物体節が本当にないかどうかわからないのですか?
 (答) 一般には,軟体動物には体節構造はないと言われています。しかし,原始的な軟体動物である
  ヒザラガイは,体の前後方向に直列に 8 枚の貝殻をもっていて,その貝殻の数に合わせて,鰓を
  持っています。それで,もともと軟体動物には体節構造(繰り返し構造)があったのではないかと
  考える人もいるのです。

(中尾君) 様々な系統樹を見たが,生きた化石といわれるアンモナイトシーラカンスは一体,何動物
  なのでしょうか。
 (答) アンモナイトは白亜紀の終わりに絶滅しているので,“生きた化石” ではなく,文字通り化石で
  しか,お目にかかることができません。ちなみに,アンモナイトは軟体動物で,現生のオウムガイや
  イカ,タコなどと一緒に頭足類)に属します。シーラカンスはれっきとした魚類硬骨魚綱)です。
  ただし,現生の条鰭類(ごく普通に見られる硬骨魚類)とはちょっと系統が違い,肉鰭類亜綱)と
  いう位置づけになります。胸鰭や腹鰭の付け根部分に腕のような構造があるのが特徴です。
  ちなみに,硬骨魚類(綱) の下に条鰭類と肉鰭類があるという構図になります。そして,陸生の脊椎
  動物(つまり,両生類,爬虫類,哺乳類,鳥類)は,肉鰭類の子孫ということになります。

(石田さん) 節足動物の種類が多いということでしたが,それは分布の広さなどによる環境適応能力
  によってなのですか? それとも,構造(が単純?)によるもので変化(進化?)がしやすかったから
  なのでしょうか?
 (答) 自分で考えて質問をしていてよいですね。石田さんの考えていることは,両方とも正しいんじゃ
  ないかと思います。特に体の構造が(決して単純ということはないのですが),モジュール構造というか
  各パーツの独立性が高くて,ロボットみたいですよね? そういうことで,いろいろなバリエーションを
  作りやすかったのかも知れませんね。また,石田さんの一つ目の考え方については,昆虫類には
  体の小さいものが多くて,例えば 1 本の樹木の中の各部分といったような,小さな環境の違いだけ
  でもたくさんの種の昆虫の住み分けができていたりしますよね。そういうことが種数を増やす結果に
  つながったのかも知れません。

(白石君) 進化の勉強をしている中で,始祖鳥というのを勉強したのですが,あれはねつ造だと聞いた
  ことがあります。本当なのですか。
 (答) 本当かどうかを私が判定するのは困難ですね。専門家の目で化石を見てもらうしかないと
  思います。始祖鳥化石ねつ造説を主張した天文学者のフレッド・ホイルは,生物の進化について
  ちょっと変わった考えを持っていたので,いくらかは割り引いて考えないといけないかも知れません。
  始祖鳥の化石は複数箇所から出ているらしいですから,まんざらでっち上げでもないだろうと思い
  ます。とはいえ,(始祖鳥は別としても)功名心から化石をねつ造するという例は実際にあるよう
  ですから,気をつけないといけないですね。

(吉見君) ハンドウイルカとありましたが,私はバンドウイルカと憶えていました。どちらが正しいので
  しょうか?
 (答) もともとは,ハンドウイルカと呼ばれていたようです。
漢字では 「半道海豚」 と書くそうで,西日本
  で昔からそのように呼ばれていたそうです。バンドウイルカという呼び名もよく使われますが,こちら
  の方が後から使われるようになった呼び名だそうです。

(堀内さん) 私達ヒトのように進化してきた生物は多いですが,まったく進化していない原始的な生物
  も多くいます。進化したものとしなかったものには,どのような違いがあるのですか。
 (答) 長い間進化しなかった生物は,進化の歴史の早い段階で,既に完璧な体と,特定の環境への
  強い適応能力を身につけたものと考えられます。つまり,その生物が誕生以後現在まで生き続ける
  ために,それ以上変化する必要がなかったということです。進化し続けた生物は,新しい環境の
  変化に対応して新天地を求めて変化したものと考えられます。そういう意味では,どっちが優れて
  いてどっちが劣っている・・・というようなことではありません。

(三苫君) 動物の進化は無限なのでしょうか。地球温暖化などの環境変化に対応するように,人類
  は進化するのですか。
 (答) 化石記録などを見ると,動物の体の構造が複雑になり洗練されていくほど,可塑性は小さく
  なるようです。つまり,体のつくりが複雑化するほど,体のつくりを根本的に変化させるのが難しく
  なるということです。そういう動物は,環境変化に対応できずに絶滅するケースが多いようです。
  逆に,単純で原始的な体のつくりをもつ動物の方が,環境の変化に対応して進化することが多い
  ようです。




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