生物学概論 I (物部キャンパス) 2008
11/11 の質問

第 6 回の講義(11 月 11 日)の質問への回答です。

今回はいい質問が多いと思います。
一方で,「そういう風にできているから」 としか答えられないような 「なぜ・・・?」 も多いです。



軟体動物

(竹之内君) ウミウシの仲間に二枚の殻を持ったものがいるが,それは巻貝か二枚貝か?
 (答) ウミウシは腹足類,つまり巻貝と同じグループです。

(三原さん) 雌雄同体だと,どのように受精を行うのですか?
 〜似たような質問: 堀内さん
 (答) 講義で紹介したカタツムリの場合,雌雄両方の生殖器の開口部が体の同じ場所にあります。
  2 匹のカタツムリがいれば交尾が可能ですが,このときは,お互いに相手の体に精子を送るよう
  です。その結果,2 匹ともが受精卵を持つことになるようです。

(前薗君) 陸上で生活するかたつむりの幼生は,どのような形ですか。
 (答) いい質問ですね。トロコフォア幼生は水の中でないと生きられませんからね。カタツムリの場合
  卵胎生のものもいて,親の体内で大人と同じ形になるまで育ってから生まれるものがあるようです。
  卵を産むものでも,卵から孵化するときには既にカタツムリの形をしているようです。

(竹之内君) 写真のヒョウモンダコはオオマルモンダコか,外国種と思われます。ちなみに,ヒョウモン
  ダコは高知では意外に普通です。
 (答) 詳しいですね。教えてくれて,ありがとう。ヒョウモンダコというのは,ヒョウモンダコ属に属する
  何種かのタコの総称らしいです。外国産だというのは当たっているだろうと思います。この図の載って
  いる参考書 『生物学』 は外国の本なので。高知にはたくさんいるんですか。怖いですね。

(川崎さん) ヒザラガイもおいしいのですか?
 (答) 私は食べたことがありませんが,ちょっとネットを検索してみたら,食べられるみたいなことを
  書いてありましたよ。

(天間君) 子供の頃にカタツムリのカラは背骨みたいなものだから取ったら死ぬと親に言われてから
  ずっとそういうものだと思っているのですが,実際どうなんでしょうか?
 (答) 面白い質問ですが,私にはわかりません。試してみてください。簡単に実験できると思います。
  できるだけ本体に深い傷を負わせないように,貝殻を切り取ってみてはどうですか? 再生するか
  どうか・・・?

環形動物

(石井君) 環形動物は体節がそれぞれ機能的に独立していれば,どれか一つが機能しなくなっても
  そこを捨てるためなのか?
 〜似たような質問: 石川君
 (答) 捨てるかどうかは別として,比較的独立しているために,どれか一つが機能しなくなっても
  たちまち死に至るということがなくてすみますね。それはメリットだろうと思います。

(宮田君) 環形動物の体のつくりで,心臓が複数ありましたが,いくつあるものなのですか。血液の
  流れなどに,ヒトなどと違った作用をしているのでしょうか。
 (答) そうですね。血管の一部分がちょっと膨らんでいて,ここを絞めつけたり緩めたりすることで
  血流を作っています。どこかの研究室(実験室)にペリスタポンプという道具があったら見せて
  もらってください。あれと同じような仕組みです。

(栗原君) 環形動物の中の多毛綱の特徴である毛の役割は,多毛綱の中ですべて共通しますか?
 (答) 毛は,疣足と呼ばれます。ミミズのような這い回り運動をしたり,砂に潜ったりするときに,
  疣足が,体を固定する支点となります。それが基本の使い方だと思いますが,それ以外の使い方
  をする環形動物がいるかどうかは,私は知りません。

触手冠動物

(青木君) 腕足類は現在も生息しているとしたら,どこに生息しているのですか。
 (答) スライドで生きた腕足類の写真を見せましたよね。いまでも (数は多くないものの) 生きては
  いますよ。シャミセンガイとかチョウチンガイと呼ばれるグループが一般的で,の部分を砂に
  突っ込んで半分埋もれた状態でいたり,海の底の岩などにくっついているみたいです。

(磯本さん) 腕足類の移動方法はどのようなものですか? それとも移動はしない生物ですか?
  腕「足」類という名がついているぐらいですから,足が存在するのでしょうか?
 (答) 腕足類は,基本的に岩などに付着して生活し,這ったり泳いだりはしないと思います。
  砂に埋もれて生活する種では,掘り起こしたら,また砂に潜るくらいのことはできるでしょうね。
  私は実物を見たことがないので,もしかしたら結構動くのかも知れませんが・・・。腕足類の「足」
  というのは,「柄」 の部分を指しているのではないかと思います。

(栗原君) コケムシが持つキチンという成分の役割はどういうものですか? 節足動物も持つという
  ことは環境(海中)とは関係性がないということですか?
 (答) キチンは,旧口動物に広く見られる成分で,これを合成する酵素(その酵素をコードする
  遺伝子)を持っていることは,分類基準としてかなり重要です。新口動物はキチンを合成できま
  せん。キチンは,比較的硬くて,しかも柔軟な殻を作るために使われて,身を守るために役立って
  います。

節足動物

(則近さん) 節足動物の殻はキチンという多糖でできているということは,エビの殻ってカルシウム
  ないってことですか?
 (答) エビの殻も基本は昆虫と同じで,キチンとタンパク質でできています。甲殻類(エビ,カニなど)
  では,さらにそこに炭酸カルシウムが沈着して硬さを増しています。

(大矢さん) キチン質の外骨格をもつのが節足動物であるという話がありましたが,キチンに似た
  (少し構造が変化した)キトサンの外骨格を持つ生物もいると耳にしたことがあります。これらは
  キチン質という分類にまとめられるのでしょうか? それとも,それらを持つ生物は別の分類になる
  のでしょうか?
 (答) 大矢さんの質問はいつも難しいですね。キトサンは,キチンが脱アセチル化したものだそう
  ですね。殻の成分としてキトサンをもつ動物を,私は知りません。菌類の細胞壁にもキチン質が
  見られるそうですから,もしかしてそっちの方でキトサンを持つ種がいるのでしょうか。どんな
  生物がキトサンを持っているのかわかったら教えてください。上の方の栗原君への回答に書いた
  ように,キチンは,広くいろいろな旧口動物に見られます。ですから,節足動物だけがキチンを
  持っているわけではありません。

(大賀君) 節足動物の真体腔はどういう構造になっているのか。
 (答) 節足動物の真体腔はかなり退化していて,生殖巣を囲む小さな部分くらいにしか残っていない
  そうです。

(竹之内君) スズメバチミツバチは針を持っているとされ,アリは持っていないが,それでもスズメバチ
  とアリの方が近いのか?
 (答) 日本のアリは針を持っていないので,そういう風に思ってしまいますが,外国産のアリには,針
  を持つものが珍しくないそうです。

(本橋さん) スズメバチとアリとミツバチの話で,スズメバチはミツバチよりもアリと近縁であるとありま
  したが,どのような点からそう言えるのですか? 逆にミツバチは何と近縁になりますか? 現在では
  スズメバチとミツバチを一緒にくくっていると思うのですが,単系統の点から考えて,今後分類が
  変わることはありますか?
 〜似たような質問: 栗原君,高橋さん
 (答) 原著論文を探したのですが,見つかりませんでした。主として遺伝子の配列を見比べた結果と
  思いますが,何が決め手なのかは,今はわかりません。私自身もとても気になるので,もう少し調べて
  わかったら後でこのページに加筆します。
   膜翅目ハチ目)の中に,ハチ亜目細腰亜目)があり,その下にたくさんの上科があります。
  その中で,スズメバチ上科にはアリ科スズメバチ科の他にアリバチ科とかベッコウバチ科などが
  あります。ミツバチの方は,同じハチ亜目の中のミツバチ上科に属していて,ミツバチ上科の中には
  ミツバチ科の他に,アナバチ科,ヒメハナバチ科など,たくさんの科があります。こういう新しい分類
  が,既に結構受け入れられているのではないかと思います。

(尾崎さん) カマキリバッタは,以前は一緒に扱われていたのに,別系統になった理由とは?
 (答) これは DNA の配列からだと思います。カマキリについては,今でも,バッタなどと同じ直翅目
  含める考え方も残っているようです。新しい(おそらく DNA 配列からと思われる)系統分類では
  カマキリ亜目ゴキブリ亜目ゴキブリシロアリなど)などを網翅目という 「目」 に設定する考え方や
  それぞれを「亜目」 でなく 「目」 とする考え方もあるそうです。まだまとまってはいないみたいですね。

(森澤さん) 脱皮動物線形動物の名前がありましたが,線形動物も脱皮するのですか? するのなら
  一生に何度くらいするのでしょうか?
 (答) 脱皮の回数は種によっていろいろだと思いますが,カイチュウなどの比較的大型の寄生虫でも
  土の中に住む小さな線虫でも,だいたい 4〜5 回程度だと思います。

(杉野君) 節足動物以外で脱皮する動物はいますか? また,節足動物の中で,脱皮しないものは
  いますか?
 (答) すぐ上の森澤さんが書いているように,線形動物は脱皮をして大きくなります。節足動物の中
  では,脱皮しない動物はいないと思います。

(石田さん) 脱皮動物爬虫類両生類の脱皮の違いは,脱皮動物(節足動物)は脱皮回数が決まって
  いることと,ホルモンの違いだけですか?
 (答) 爬虫類や両生類では,表皮だけが脱げますが,節足動物などの脱皮では,体内の組織(例えば
  気管とか)も新しくなります。節足動物では特に外骨格が硬くて,脱皮をしないと成長できません。

冠輪動物,トロコフォア幼生

(三苫君) トロコフォア幼生には目がないのですか。もしそうであればどのように餌を摂取するの
  ですか?
 (答) トロコフォア幼生には眼点という,光を感じる器官があります。ただ,そんなに素早く器用に
  泳ぐわけではないので,その眼点が,餌を食べるのにどれほど役に立つのかはわかりません。

(麓さん) トロコフォア幼生の特徴で,繊毛の輪があげられていたが,これは成長しても残るの
  ですか?
 (答) この幼生型をもつ動物は,成体になるときに変態するので,そのときに繊毛の環がなくなる
  と思います。

(北田さん) トロコフォア幼生ディプリュールラ幼生繊毛は何のためにあるのですか?
 〜同様の質問: 大石君
 (答) 一つは運動のため(つまり泳ぐため),もう一つは餌をとるため(口に向かって水流を作る
  ため)です。

棘皮動物

(山崎君) ヒトデの体は,ミミズのような隔壁がないように見えます。では,ヒトデはどのように体を
  動かすのでしょうか。体腔液筋肉以外の手段で体を動かしているのでしょうか。
 (答) これもいい質問ですね。棘皮動物は,体内に水管系というものを持っています。水管系は
  液体の詰まった管の集まりで,あっちこっちの場所から体外に向けてたくさんの管足を出して
  います。管足の付け根には膨らみがあって,これを収縮させると管足の中に液体が送り出され
  て,管足が伸びます。管足の先には吸盤があって,これでものの表面にくっつきます。水管系
  は,真体腔です。

(麓さん) 私たちが食べるウニは,どの部分(何を)食べているのか?
 (答) 卵巣あるいは精巣です。卵巣の方がおいしいそうですよ。

(川崎さん) ヒトデにも,ウニのように食べれる部分はありますか?
 (答) 上の麓さんへの回答に書いたように,ウニの卵巣は食用になります。しかし,ヒトデの卵は
  サポニンを含んでいて,渋い(苦い?)のだそうで,食用にはならないみたいです。

(船奥さん) ウニ五放射相称なんですか?
(則近さん) ナマコは五放射相称の特徴をもっているのですか?
 〜同様の質問: 磯本さん,蜂谷君
 (答) 上の麓さんへの回答に「卵巣」のことを書きましたが,ウニの体の中には卵巣は 5 つあって
  それぞれが卵を体外に放出する出口(生殖孔)を持っています。だから,体は完全な円形のよう
  ですが,五放射相称です。ウニを縦方向にギューっと伸ばしてそれを横倒しにしたらナマコの体
  になります。

(山中君) ヒトデクモヒトデはどういう違いで別々の綱に分けられているんでしょうか?
 (答) 両者を合わせて星形綱として,その中にヒトデ亜綱とクモヒトデ亜綱を設けるような考え方も
  あるくらいですから,元々は互いによく似たグループと見なされていたみたいです。ただ,例えば
  幼生の形態を見ると,ヒトデのビピンナリア幼生はクモヒトデのオフィオプルテウス幼生とあまり
  似ていなくて,ナマコアウリクラリア幼生に似ています。オフィオプルテウス幼生は,むしろ
  ウニのプルテウス幼生にそっくりです。成体の姿も,クモヒトデの脚(腕?)には関節があって
  かなりグニャグニャと自由に動きますよね。その他,形態的に見ても,ヒトデとクモヒトデには
  いろいろな違いがあります。

(則近さん) ヒトの幼生にも繊毛の輪は存在するのですか?
 (答) 今日の講義で見せたような形の繊毛の輪は存在しません。しかし,発生中の胚の体には
  繊毛をもつ細胞がところどころにあらわれます。それらのうち,神経管のところに生じる細胞が
  仮想的な新口動物ディプリュールラ幼生の繊毛の環に由来するのではないかと考えられて
  います。

その他

(宮本さん) また分類の話にもどってしまいますが,分類学からすると,単系統をなるべくつくりたい
  のですか?
 (答) そうです。でも,実際には無理です。無理やり単系統群以外許さずに系統分類をすると
  逆にとても奇妙な分類ができてしまいます。だから無理だと思います。

(松崎さん) 一度獲得した形態を失うときは,どのようなことが原因と考えられているのですか?
 (答) 環境の変化があって,新しい環境への適応が起こるときに,不要な形質は徐々に失われて
  行く傾向にあるようです。その形質が失われるような (というより,むしろ,発生のときにその
  形質が作られないような) 突然変異が起こったとしても,そのことが,その生物の生存や繁殖
  に不利にならないなら,結局長い時間の中で,そういった形質が失われていくということです。

(栗田さん) 肛門が一つ(口だけ)の生物と,きちんと口と肛門に分かれている生物とがいます
  が,・・・(途中省略)・・・どちらの方がより繁栄したりということはないのでしょうか。
 (答) どちらのグループの中にも,非常に成功している(繁栄している)動物たちがいます。
  どちらかが優れていて,どちらかが劣っているということはないと思います。

(栗原君) 亜門という分類がない動物もいるということですか?
 (答) それほど種の数が多くないには,亜門を設定する必要はないので,その場合,亜門
  という階層は設けられていません。




生 物学概論 I のトップページに戻る