2013 生物学概論 II
12/24 の質問

第 4 回の講義(12 月 24 日)の質問への回答です




細胞膜の重要な役割

【重要】
(前田萌さん) 脂質二重層が出入りしにくいのは何故だろう。一番通り抜けやすそうなのに。
(中野君) なぜ H2O は CO2,N2,O2 に比べて細胞膜を通りづらいのか。
(羽賀さん) 細胞膜は O2,N2,CO2 は通過させるとありましたが,空気が通れるだけのすき間
  が細胞膜にあるのですか?
 (答) 細胞膜の脂質二重層を構成する脂質分子の隙間を,小さな分子は通りやすいのです。
  空気が通ると言っても,壁に開いた穴を風が吹き抜けるようなことを想像しないでくださいね。
  酸素などの分子 1 個が脂質分子の間をすり抜けるだけです。水は小さい分子なのですが,極性
  があるから,通り抜けにくいのです。脂質二重層の内側部分は炭化水素鎖で極性がありません。
  まさに水と油なわけです。。。

(西君) 脂質は生体膜の材料となりますが,やはり脂質の質(悪質・良質)の違いによって
  できた生体膜を比較すると,受容体と結合する割合や反応速度に違いが出たりするのですか。
 (答) 出ると思います。とは言え,生きている細胞の生体膜の成分はきちんと調節されていて
  少々のことでは質の低下はないだろうと思います。それはそれとして,細胞膜の脂質は細胞膜
  全体で均一というわけではなく,ところどころに特殊な領域があります。例えば脂質ラフト
  いう構造について簡単に説明します(下図)。

  脂質ラフト

  図は細胞膜の一部ですが,(2)の部分が他より厚くなっていますね。この部分が脂質ラフト
  です。ラフトは「いかだ」という意味です。ラフトの部分には飽和脂肪酸を含みます。細胞膜
  の他の部分には不飽和脂肪酸がたくさん含まれています。飽和脂肪酸の炭化水素鎖は曲がって
  いないので,その部分厚くなっており,また曲がっていないので膜を構成する脂質どうしが
  の隙間が狭く(脂質分子の密度が高く)なります。そのため,ラフトは他の部分に比べて
  流動性が低くなっています。膜結合型タンパク質や脂質分子は,膜上(二次元という制約は
  あるものの)比較的自由にブラウン運動をしているのですが,ラフトの部分では動きにくく
  なります。また,この部分にはコレステロールが多いのも特徴です。こういう部分には,特定
  のシグナル分子(細胞増殖因子ホルモンなど)の受容体と,その効果を細胞内に伝達する
  タンパク質が集中して存在しており,シグナル伝達の効率を高めるなどの効果を持っています。

細胞内外の物質の輸送

(佐竹さん) グルコーストランスポーターNa+ グルコース等方輸送体)は,Na+ とグルコース
  が一緒でないと細胞内に入れられないのですか?
 (答) そうだと思います。

(玉城さん) グルコーストランスポーター能動輸送は同時に行われるのですか? それとも,
  ある一定の濃度になると働き出すのですか?
 (答) グルコースの輸送も,Na+ や K+ の能動輸送も,基本的には細胞は常時行っている
  はずです。ただ,例えば,グルコースが細胞外にたくさんあるときには細胞膜上のグルコース
  トランスポーターの数が多くなり,グルコースが少ないときにはトランスポーターの数も
  少なくなるのだそうですから,活動の程度は高くなったり低くなったりしているのでしょうね。

(宮田さん) タンパク質の立体構造が変化することはあるのですか?
 (答) タンパク質が仕事をするとき,その立体構造は変化することがほとんどです。例えば
  グルコーストランスポーターは,Na+ とグルコースが結合した状態と離れた状態とで,異なる
  立体構造をとり,そのおかげで,細胞外のグルコースを細胞内に輸送できるのですよね。

(川口さん) Na+-K+ ATPアーゼは Na+ が細胞の外側と内側とでどのくらいの割合で存在する
  ようにはたらいているのですか。
 (答) 私たちの体内では,細胞外液の Na+ 濃度が約 145 mM,細胞内では約 12 mM です。
  一方,K+ の濃度は,細胞外液で約 4 mM,細胞内では約 139 mM です。おまけですが,
  細胞内にある ATP やアミノ酸,タンパク質の多くが細胞内の pH 環境では陰イオンとして
  働くため,バランスをとるため(?)に Cl などは細胞外に多く(116 mM),細胞内に
  少なく(4 mM)なるようにポンプで汲み出されているそうです。

ATP とエネルギー

(ゆっこさん) 「ATP によってエネルギーを保存する」という印象を受けたんですが,ATP は
  比較的安定な物質なのですか?
(嶋田さん) なぜ ATP のリン酸を切り離すと大きなエネルギーが得られるのですか? 化学結合
  を切断するときにはエネルギーが必要になると思うのですが,得られるエネルギーはそれより
  ずっと大きいということですか?
 (答) ATP 分子中のリン酸どうしの結合はエネルギー的に不安定です。この結合を作るために
  大きなエネルギーが必要なので,逆に ATP のリン酸が切り離される反応は自発的に起こり
  やすく,エネルギーを放出する反応…ということになります。ここで,嶋田さんの言っている
  ことは正しいです。化学結合を切るためにはエネルギーが必要ですが,分解することによって
  それを上回るエネルギーが放出される場合には,全体の収支としては,エネルギーが放出される
  ということになります。教科書 p95 の図 4-3 の左側の反応ですね。また,細胞内では ATP の
  濃度が ADP の濃度よりかなり大きいので,反応は,ますます ATP を分解する方向に進み
  やすくなります。それで,実際,ATP が ADP とリン酸になる化学反応では,1 mol あたり
  10 kcal くらいのエネルギーが放出されるようです。一般的に,リン酸が何か別の化合物に結合
  しているようなケースで,そのリン酸を切り離すときには 3〜4 kcal/mol 程度のエネルギー
  しか放出されないようですから,ATP の加水分解は大きなエネルギーを放出すると言えますね。

(前田大志君) ATP は合成されてすぐ使われるから,基本的に体内には ADP が多いですか?
  1 細胞に何個くらいエネルギー源がありますか?
 (答) 細胞内の ATP 濃度は ADP 濃度の 10 倍くらい高いそうです。 ATP の方がずっと
  多いのですね。そして・・・エネルギー源を○○個で数えるかい? ちなみに,細胞内のグルコ
  ースの分子の数を(食後と食前で違うかも知れないけど,まあ平均値として…) 計算すること
  はできるかも知れませんね。でも,細胞は,グルコース以外のさまざまな糖をエネルギー源と
  して使うことができます。また筋肉や肝臓の細胞では,グルコースをグリコーゲンのような形
  にして保存しますよね。それに,タンパク質や脂質だって,分解してエネルギー源として利用
  することはできます(下の方の伊東さんや枝重さんへの回答を参照)。ですから,まあ,エネ
  ルギー源が細胞あたり何個か…という計算は無理でしょうね。

(廣田さん) エネルギーという考え方がよく分かりません。物質ではないということは分かります
  が,熱エネルギーや光エネルギーと体内で使われるエネルギーは同じものですか。
 (答) エネルギーというのは何らかの「仕事」をする能力のことです。ここで「仕事」という
  のは物理学で使われている「仕事」という意味だと考えてください(給料をもらえる仕事の
  ことではありません)。エネルギーは,光や熱,運動エネルギーや位置エネルギーなど,いろいろ
  なカタチをとることができます。特殊相対性理論では,質量が m の物質は,mc2c は光の
  速度)というエネルギーを持っているので,「質量」もエネルギーの一つのカタチと考えること
  ができます。
   ・・・で,難しいことは私にもわかりませんが,本質的には私たちの体の中で生命活動に
  使われるエネルギーも,物理学で扱うエネルギーと,何の違いもありません。ボーアの言って
  いたことは正しいです。

【重要】
(河原さん) ATP,ADP はわかるのですが,それ以上(リン酸が 4 つ以上)というのは聞いた
  ことがありません。ADP にリン酸は結合して ATP になるのに,ATP には結合しませんよね。
  どんな仕組みで制限しているのでしょうか。
 (答) これは重要な質問ですよ。なので教えてあげない(笑)。試験問題に出そうかな〜。
  この質問に答えるためのヒントを書くので,みんな,考えてみてください。
   さて,ADP にリン酸が結合して ATP になりますよね。この化学反応って,ADP とリン酸
  を含む水溶液中で(or 細胞内で)自然に(自発的に,自動的に)起こるでしょうか? いいえ。
  起こりません。それでは,ADP にリン酸を結合させているのは何モノでしょう? 今回の講義
  のスライドにも,その仕事をするモノが登場していますね。それでは,ATP とリン酸を含む
  水溶液中で,ATP とリン酸が結合してアデノシン四リン酸(?)が生じる化学反応は,自発的
  に起こると思いますか? そうだとしたら,やはり何モノかがその仕事をしないといけませんね。
  でも,そういう仕事をするモノは,細胞中にあるんでしょうかね?

【重要】
(西村さん) ATP 以外の物質をエネルギーとして用いる真核生物はありますか。
 〜同様の質問: 新武君
(林君) ATP だけでなく GTP,CTP,UTP もエネルギー通貨となり得ますか? どうして
  ATP がよく使われるのでしょうか。
 (答) GTP は,ATP と同じような方法でエネルギー通貨として使われています。今回の講義に
  登場した酵素の中では,クエン酸回路TCA 回路)の中で α-ケトグルタル酸スクシニル CoA
  に変換する酵素 α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼは,GTP を加水分解して GDP に変えて,
  そのエネルギーを利用しています。ただ,GTP のエネルギーを使う酵素は,ATP を使う酵素
  より少ないように思います。主として ATP が使われる理由は,好気呼吸電子伝達系で大量に
  合成されるのが ATP だから…でしょうか(理由になってない?)。

(貞方さん) グルコースを燃やすと熱や光としてエネルギーが放出されると言っていましたが,
  ホタルウミホタルの光もエネルギーを使うことで光っているのですか?
 (答) ホタルの場合には,ルシフェラーゼという酵素ATP のエネルギーを使って,ルシフェ
  リンという化学物質をオキシルシフェリンに変換します。反応の過程で,励起状態のオキシルシ
  フェリンが基底状態のオキシルシフェリンになるのですが,このときに光が放出されます。
  ウミホタルの発光も「ルシフェリン」と「ルシフェラーゼ」によって起こります。名前が同じで
  紛らわしいのですが,構造は全然違います。下図は,左がホタルの,右がウミホタルのルシフェ
  リンです。全然違いますね。。。
  ホタルのルシフェリン ホタル     ウミホタルのルシフェリン ウミホタル

(塩見さん) 体温グルコースの働きによるものだと考えていいですか。全く違うものですか。
 (答) 塩見さん,正しいことを言ってますよ。ただし,「グルコースが働く」という表現は
  ちょっと…グルコースなどの有機化合物を分解する働き…ということなら OK だと思います。
  例えば,講義で話したように,グルコースの粉に火を付けて燃やし,完全燃焼させると,二酸化
  炭素と水に分解し,その際に炎(光や熱)のカタチでエネルギーを放出します。私たちの体内
  では,酵素の働きで,放出されるエネルギーの何割かを ATP を合成するために使います。
  それでも 100% のエネルギーを ATP に変換することはできず,半分以上は,熱として放出
  されます。この熱は,ATP のようには細胞の活動に利用できませんが,体温を維持するために
  重要です。

(岩本さん) 植物が光エネルギーを利用するとありましたが,チラコイド膜光化学系 II 複合
  タンパク質中の電子が活性化され・・・とありましたが,どうして太陽光があたると活性化
  されるのですか?
 (答) 光エネルギーによって電子が励起された状態(エネルギーの高い状態)になるという
  ことです。詳しくは物理学の先生に尋ねてみてください。

(白井君) 週 6 で激しい運動をする人と,1 週間何もしない人だと,エネルギー消費の差はどの
  くらいありますか。ヒトは,何も動かなくてもエネルギーを消費します。しかし,やはり,週 6
  で激しい運動をしている人に比べると差はとても大きいと考えましたが,実際どうですか。
 (答) 差はあると思いますよ。どういう運動を何時間くらいしたらどのくらいのカロリーを
  消費するかは,調べたらわかりますよね。それもあくまで目安でしょうけど。。。白井君は
  運動をする人だから実感としてわかると思うけれど,同じ部活で同じ時間だけ汗を流しても,
  体の使い方によってエネルギーをたくさん使う人とあまりエネルギーを使わない人がいます。
  また,前回の質問 & 回答のページに書きましたが,ヒトが消費する全エネルギーの 20% 近く
  は,脳で消費しているそうですから,体をどれだけ使ったかと同時に,頭をどれだけ使ったかも
  全体のエネルギー消費に大きく影響しそうですね。。。

(河原さん) ATP のリン酸は 3 つすべて切りはずされることはないのですか。
 〜似たような趣旨の質問: 築地君
 (答) エネルギーの受け渡しとするときの反応は [ ATP ⇔ ADP + リン酸 ] のようにリン酸を
  1 個切り離す反応や [ ATP ⇔ AMP + ピロリン酸 ] のように,2 個のリン酸を(ピロリン酸
  として切り離す反応であり,リン酸を 3 つ切り離すようなことはしません。ただし,ATP を
  分解して排出する過程では,リン酸を全部切り離します。下の伊東さんへの回答の図 1 の
  左上の部分を見てください。アデノシン一リン酸AMP)は,イノシン一リン酸IMP)に
  変換された後,リン酸を切り取られてイノシンになっていますね。

好気呼吸

(羽賀さん) 体内ではいろいろな酵素により C6H12O6 を完全に 6CO2 と 6H2O にできて
  いましたが,実際に砂糖とかを火で燃やして,灰にならずに CO2 と H2O にすることは
  できるのですか?
 (答) 不純物が混ざっていなければ,跡形もなく完全に燃やすことが可能ですよ。

(吉田さん) 「クエン酸回路」で高校時代ならってきましたが,なぜ「TCA 回路」とも言う
  のですか。
(野本さん) TCA 回路クエン酸回路だったとわ…。 ATP が ADP になったら,ADP は,
  ミトコンドリア内膜電子伝達系で ATP に合成される?
 (答) 「TCA」は「トリカルボン酸 tricarboxylic acid」の頭文字です。 トリカルボン酸
  とはカルボキシル基-COOH)を 3 つ持つカルボン酸のことです。今回の講義スライドの
  クエン酸回路のところを見てください。回路の始まりのいくつか(クエン酸と,その後の
  cis-アコニット酸D-イソクエン酸)は -COOH を 3 つ持っていますよね。それで…です。
   野本さん,正解! ADP は,ミトコンドリアで再び ATP に変換されます。ミトコンドリア
  以外の場所でも ADP が ATP になる化学反応は起こりますが,ミトコンドリアで生産される
  ATP が,量的には圧倒的でしょうね。

(松永君) よくクエン酸配合などと書かれた食品が売られていますが,クエン酸を多く含む
  食べ物を食べると何かメリットがあるのですか。
 (答) 食品に添加する目的は,好気呼吸とは関係ないと思います。どういう効果があるかは
  食品メーカーに尋ねてください(笑)。

(中西さん) NADH とは,具体的にはどのような物質なのですか。
 (答) 下図が NADニコチンアミドアデニンジヌクレオチド Nicotinamide Adenine
  Dinucleotide
)です。これに水素原子(H)が 1 個くっついたものが NADH です。

  NAD

  ヌクレオチドが 2 個連結した分子が基本で,図では下の方のヌクレオチドに付いている
  塩基がアデニン,上の方に付いている塩基がニコチンアミドです。

(鈴木君) スライド 21 で, 2NADH → 2NAD+ + 2H+ となっているように思うのですが
  化学反応式的には陽イオンしか放出していないのはおかしくないですか? それともこの図
  には電子が省略されているのですか?
 (答) その通りです。わかりにくい図でごめんなさい。電子は,ミトコンドリア内膜に結合
  したタンパク質の間を順繰りに受け渡されて,最後に水素イオンに返され,水が生じること
  になります。

【重要】
(清水君) 解糖で得られた 2 分子のピルビン酸は,どのようにしてミトコンドリアに運ばれ
  るのですか?
 (答) ミトコンドリアの膜にはピルビン酸 - H+ 共輸送体というトランスポーターがあり
  ます。このタンパク質の働きで,ピルビン酸はミトコンドリアの膜を通過して内部に運ばれ
  るようです。

(ジョーさん) 植物好気呼吸をしますか? また,そうであれば,植物は光合成の際に
  二酸化炭素と水を用いますが,好気呼吸で出たものをそのまま利用しているのでしょうか?
 (答) そのまま利用する分もあるだろうと思いますし,空気中の二酸化炭素や根から吸った
  水を利用する分もあるでしょう。喩えが適切でないかも知れませんが,私たちが呼吸をする
  とき,私たちの呼気の中に含まれる酸素や二酸化炭素や窒素などの分子のうち,どれだけが
  次に吸い込んだ空気の中に含まれているかを考えるようなものです。

【重要】
(松尾さん) 12/10 の宿題の解説で,原核生物ミトコンドリアを持っていないと言われて
  いましたが,ミトコンドリアがなくても好気呼吸ができるのですか。好気呼吸が行われない
  と生きていけないと思います。
 〜似たような趣旨の質問: 今井君
 (答) 好気呼吸をする原核生物はたくさんいます。そのような原核生物では,細胞膜上に
  電子伝達系酵素が並んでおり,クエン酸回路を動かす酵素は細胞質中に存在しています。
  効率を増すために,クエン酸回路を構成する酵素は細胞質の中でも細胞膜に近いところに
  存在しているらしいです。
   それと,「好気呼吸が行われないと生きていけない」というのは,普段から好気呼吸を
  して生きている生物に限られたことです。原核生物の中には好気呼吸をせず嫌気呼吸
  (乳酸発酵アルコール発酵)だけで生きているものもたくさんいます。嫌気性細菌の中
  には,酸素があれば好気呼吸も行えるようなものと,酸素がある場所では生きられない
  ようなものとがいます。嫌気性細菌というキーワードでインターネットを検索してみたら
  たくさんの実例が出てくると思いますよ。真核生物(原生生物)の中にも嫌気性のものが
  いるみたいですね。嫌気性細菌の代表的な例は破傷風菌ボツリヌス菌などです。

(西岡さん) エネルギー獲得のところで,好気呼吸ではグルコースが完全に分解されて,水と
  CO2 を生じるということでしたが,嫌気呼吸では,グルコースは完全に分解されないという
  ことですか? その場合,残ったものはどうなりますか。
 (答) 西岡さんの言うとおりです。嫌気呼吸では,グルコースは完全には分解されません。
  嫌気呼吸の例はたくさんありますが,酵母などのアルコール発酵では,ピルビン酸から
  CO2 が 1 個切り取られ,アセトアルデヒドを経てエタノールを生じます。私たちはその
  恩恵を受けてお酒を飲めるわけですね(あ。お酒は二十歳を過ぎてから〜笑)。また,
  私たちの筋肉などでは,急激な運動をするとグルコースが完全分解に至らず,ピルビン酸
  から乳酸になって,そこで反応が止まってしまいます。そのため,筋肉細胞の内部に乳酸
  が蓄積します。これが筋肉の疲労の原因となります。乳酸は肝臓に運ばれて,グルコース
  を再合成する材料に使われるそうです。

代謝経路のネットワーク

【重要】
(伊東さん) 代謝経路のネットワークのところで,アデニングアニン尿酸に,シトシン
  ウラシルアセチル CoA になるのは,それぞれプリン塩基,ピリミジン塩基だからですか?
  そうだとしたら環状の部分に関係があるのですか。
 (答) 伊東さん,鋭い!! そのとおりです。まずは下図を見てください。

  プリン塩基の分解  図 1: プリン塩基の分解

  プリン塩基は図 1 のように分解されて尿酸uric acid)になります。尿酸の構造はプリン塩基
  の構造と似ていますよね。一方,ピリミジン塩基は図 2 のように分解されます。ウラシルは
  β-アラニンNH2-CH2-CH2-COOH)になっていますね。その後は,β-アラニンアミノトランス
  フェラーゼ
によってアミノ基が切り取られ,マロン酸セミアルデヒドCHO-CH2-COOH)に
  なります。次にマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼの働きでアセチル CoA となります。
  チミンの方は,図 2 では,β-アミノイソ酪酸β-aminoisobutyric acid)になっていますね。
  β-アミノイソ酪酸はそのまま尿中に排泄されたり,場合によってはスクシニル CoA になって
  クエン酸回路にも持ち込めます。

  ピリミジン塩基の分解  図 2: ピリミジン塩基の分解

(枝重さん) 代謝が行われるときは,すべての物質(タンパク質)が TCA 回路を通るのですか。
 (答) 炭素を含む有機化合物の多くは,最終的に TCA 回路に入ることが多いと思います。
  でも,TCA 回路からは二酸化炭素しか出てきませんから,タンパク質に含まれる窒素分は
  ここからは排出できませんね。窒素は,尿素回路を経て尿素として排出されます(下図)。
  図中の化合物 7 が尿素です。ところで,尿素にも炭素は含まれていますよね。炭素は,そういう
  かたちでも体から外に出ていきます。

  尿素回路

前回の内容に関する質問・その他

(鹿野さん) 細胞の生死はどういう基準があるのですか? 体内の何かが細胞の死を確認したり
  何か作業したりするのですか?
 (答) 難しい質問ですね。後半の部分で何を尋ねているのか,私が正しく理解していないかも
  知れませんが,アポトーシスなどで死んだ細胞は,他の細胞(マクロファージなど)に食べられ
  ます。このとき,細胞が死んでいることを示す徴(しるし)は,細胞膜の脂質二重層の内側に
  あるはずのホスファチジルセリンが外側の膜にあることです。細胞が生きていると,ホスファ
  チジルセリンは,酵素の働きで外側の層から内側の層へせっせと移動させられているのですが
  細胞の機能が停止すると,それが均一化してしまい,その結果として外膜上にもホスファチジル
  セリンが多くなってしまうのです。

(橋本君) 解糖やクエン酸回路,電子伝達系のすべての反応を覚えるのは骨が折れますが,全て
  理解して憶えて反応を書けるようにするべきでしょうか。
 (答) いいえ。代謝や呼吸などの研究を専門にするのでなければ,そこまで憶える必要はあり
  ません。期末試験も「持込可」だし。。。





生 物学概論 II のトップページに戻る