2014 生物学概論 II
12/24 の質問

第 4 回の講義(12 月 24 日)の質問への回答です。


「それ,教科書に書いてあるよね?」というような質問が結構ありますよ。そういう質問にはできるだけ
答えないようにします。自分の質問に対する返事がないなあ〜と思った人は,教科書に載っていないか
調べてみましょう。

宿題(12/16)の解説を加筆しました。



宿題(12/16)の簡単な解説

(1) 糖,タンパク質,脂質,核酸(それぞれがどんな物質を含むかは各自調べようね)はどれも
  有機化合物です。「有機化合物」という言葉の意味がわからないから,どれがそれに当てはまるか
  わからない・・・という人もいるでしょうね。それならその言葉の定義を,『生物学辞典』や
  『生化学辞典』など,あるいはインターネット(Wikipedia とか)で調べてみようよ。
  PowerPoint ファイルに書いてある定義だけでは,二酸化炭素も有機化合物かと思ってしまうけど
  二酸化炭素は違います・・・。

(2) 「立体構造は,タンパク質が正常に機能するために重要である」だと,ちょっと物足りないね。
  どうして機能に重要なのかを,できるだけ具体的に説明してほしいな。
  PowerPoint のスライド 12,13,14 あたりをよく見なおしてみてね。そこら辺に書いてあることを
  理解して,噛み砕いて書いてくれたら OK。

(3) よくできていました。

(4) 「グリコーゲンが余剰のグルコースを貯蔵する」 ・・・貯蔵するのは「あとで使うから」でしょ。
  で,何のために使うかと言えば,メインは「エネルギー源」じゃない?  

(5) 基質特異性に関して具体的な説明をしてくれたら OK。

(6) 血液型を決める遺伝子は,やっぱりタンパク質をコードしているのだよね? どんなタンパク質
  だった?

(7) 二酸化炭素は,TCA 回路以外には,ピルビン酸がアセチル CoA になるまでにも生じますね。
  



細胞膜の重要な役割

(佐藤さん) カリウムイオンが細胞外に放出されてしまったら,人体にどのような悪影響を及ぼすか。
 (答) 「高カリウム血症」というキーワードでインターネットを検索してみたら,どんな症状が出るか
  わかると思います。調べてみましょうか。

細胞内外の物質の輸送

(和田君) 細胞膜上の物質のやりとりの際の,膜上のタンパク質と糖やイオンなどの物質は,どの
  ような結合をとっているのですか? また細胞膜の内側に入ったときに,何故簡単に切り離せるの
  ですか?
 〜似たような趣旨の質問: 礒村君
 (答) 結合は,第 3 回の講義のスライド(13 枚目だったかな?)にあるように,分子間力と総称
  されるいろいろなタイプの弱い結合でくっついています。形がぴったりフィットすると,そのような
  弱い結合が何ヶ所もできます。強く結合したと思ったら,今度はあっさりと手放してしまう…のは
  化学反応が進むのに伴って,酵素の立体構造が変化するからです。

(橋爪さん) グルコーストランスポーターは,細胞膜のある生物には全て存在しますか。
 (答) 全ての生物にとって,グルコースは最も重要なエネルギー源です。ですから,どんな生物も
  細胞外のグルコースを細胞内に取り込むタンパク質をもっているはずです。ただし,同じような
  アミノ酸配列で同じような立体構造のタンパク質が…というわけではありません。

(石塚君) ステロイドホルモン脂質で,細胞膜を通過できると思うんですが,そうすると,
  作られる場所から近い細胞ほど濃度が高くて,遠くなるほど濃度が低くなるんですか。
 (答) そういうことをしっかり調べた研究はほとんどないんじゃないかと思いますが,近いほど
  濃度が高いかも知れませんね。ステロイドホルモンは脂溶性で,水には溶けにくく,アルブミン
  などのタンパク質に結合した状態で血液中を拡散します。長い時間が立てば,近くと遠くで濃度の
  違いが少なくなるかも知れませんけど。。。

ATP とエネルギー

(迫田さん) ATP のリン酸のうち 1 つが切れて ADP になると高校で習いましたが,2 つ切れると
  何になるんですか。また,1 つ切れるだけでも大きなエネルギーが出ますが,2 つも切れると
  エネルギーが余ったりはしないんですか。
(川北さん) ATP のリン酸を 1 個ずつ切る際に出てくるエネルギーの量は,1 回目に切るときと
  2 回目に切るときと同じ量ですか?
 〜同様の質問: 宮川君
 (答)  アデノシン三リン酸ATP)からリン酸が 1 個外れたものはアデノシン二リン酸ADP),
  さらに 1 個外れたものはアデノシン一リン酸AMP)です。通常は,ATP からリン酸が 1 個
  とれて ADP になる反応か,ATP からリン酸が 2 個つながったままとれて AMP になる反応の
  どちらかが起こります。ATP から ADP が生じる反応では約 30 kJ/mol(約 7.3 kcal/mol)の
  エネルギーが生じます。一方,ATP から AMP が生じる反応では約 45 kJ/mol(約 11 kcal/mol)
  のエネルギーが生じます。

(山口真優葉さん) グルコースの分解にエネルギーが使われていますが,アデノシン三リン酸の分解
  でも同じように ATP は消費されますか。
 (答) ATP を分解するために ATP を利用するということはありませんね。

酵素のはたらき方

(松本君) 酵素が ATP を分解してエネルギーを取り出し,そのエネルギーでグルタミン酸
  アンモニアを結合させてグルタミンを合成していますが,どのように,取り出したエネルギー
  を用いてグルタミンを合成しているのですか?
 (答) う〜ん。私のもっている化学の知識では上手に説明できません。酵素の活性中心で,
  ATP とグルタミン酸とアンモニアは非常に接近した場所にあります。ここで,ATP のリン酸が
  切りはずされ,そのリン酸が一度グルタミン酸と結合した中間体ができます。この中間体は不安定
  で,このリン酸とアンモニアが交換されて,グルタミンができます。ここで起こる反応の化学に
  ついては,化学の先生に尋ねてみてください。

(米津さん) 教科書に「ATP の共役反応」とありますが,ATP の加水分解は発エルゴン反応ですが
  吸エルゴン反応は何なのでしょうか?
 (答) すぐ上の松本君の質問と,それに対する回答を読んでください。グルタミン合成酵素は,
  グルタミン酸とアンモニアを結合させる吸エルゴン反応を進めるために ATP のエネルギーを必要
  とします。ですから,ATP の加水分解とグルタミンの合成を「共役」させ,ATP の加水分解で
  得るエネルギーをグルタミン合成に利用するわけです。

(山口輝君) ATP 以外で,高いエネルギーを持っている物質は,どのようなものがあるのでしょうか?
 (答) 質問の意図にいくつかの解釈が可能かと思います。細胞内で,エネルギーの必要な化学反応を
  酵素が進めるときに,そのエネルギーの供給源として ATP と同様に使える分子があるか(?)と
  いう質問でしょうか。それなら,例えば ATP でなく GTP も,いくつかの場面で使われています。
  また,細胞内の ATP を安定的に供給するため,エネルギー備蓄(?)のために働く分子もあります。
  例えば,私たちの細胞内にはクレアチンリン酸という分子があります。ATP がたくさん合成されると
  ATP の一部は ADP となり,そのリン酸をクレアチンが受け取ってクレアチンリン酸になります。
  ATP がどんどん消費されるような場面では,クレアチンリン酸のリン酸を ADP に結合させて ATP
  を作り,減っていく ATP を補給します。クレアチンとリン酸の結合も高エネルギーの結合です。
  無脊椎動物ではクレアチンリン酸の代わりにアルギニンリン酸などが使われています。これらに
  ついては,海洋生命・分子工学コースの鈴木先生と宇田先生が研究しているので,質問してみては?
   山口君の質問が,分解したときにたくさんのエネルギーを取り出せる,エネルギー源となる物質
  という風に解釈するなら,多糖脂質などを分解すれば,たくさんのエネルギーを取り出せますよ。

(D 君) グルタミンを合成する際,ATP はいくつ使われるんですか?
 (答) 1 分子のグルタミンを合成するために 1 分子の ATP が使われます。

(松本君) 酵素は触媒をするタンパク質だと思いますが,活性化エネルギーを下げるだけで,最初の
  物質よりも大きなエネルギーをもつ物質が作れるのがなぜかわかりません。
 (答) 一般に,材料に用いる分子(基質)より複雑な構造の分子(反応生成物)を合成する場合には
  その反応にはエネルギーが必要ですよね。そのエネルギーは,多くの場合 ATP などから供給され
  ます。このとき,基質と ATP がもつ化学エネルギーの総量が,反応生成物と ADP がもつ化学エネ
  ルギーの総量より多いです。つまり,全体的に見れば,反応の前より後の方が,物質のもつエネルギー
  の総量は減ります。減った分は熱などになって失われていきます。これでだいじょうぶ?

(川原さん) 先生のパワーポイントの「酵素の基質特異性反応特異性」の話で,黒い酵素と赤い酵素
  は同じ金庫に結合していたので,黒い酵素と赤い酵素は,同じ物質に基質特異性がある・・・でも
  反応特異性は異なる。基質特異性は酵素の活性部位の構造の違いでうまれると聞いたので,黒と赤の
  酵素は活性部位の構造は同じだと思うんですけど,それえは反応特異性は酵素のどこの違いで生まれる
  のですか?
 (答) う〜ん。専門的な質問ですね。しかも鋭い。確かに同じ基質と結合するのだから,活性中心の
  構造は似ている…と思いますよね。でも,実際には,どんな風に基質と結合して,どんな化学反応を
  進めるのか…によって活性中心を含む酵素の全体的な立体構造は違っています。よくわかる具体例を
  見せてあげられたらいいのですが…。何か見つけたらここに加筆しますね。

(野村君) 教科書 p108 に書いてある溶菌作用とは何ですか。文字通り菌を溶かす作用ですか。
 (答) 真正細菌細胞壁を構成する分子はペプチドグリカンと言いましたよね。憶えていますか?
  リゾチームlysozyme)はペプチドグリカンを分解します。そのせいで,細菌の細胞はとてもとても
  やわらかくなってしまい,ちょっとした刺激で壊れてしまいます。それで,細菌の細胞は簡単に破裂
  してしまうのです。それで「溶菌」と言われるわけですね。

好気呼吸

(長谷川君) CO2 や H2 が発生するとありましたが,CO2 は多少水溶性は持ちますが,大量には溶け
  ません。H2 はほぼ不溶性です。どのようにして運ぶのでしょうか。
 (答) H2 は気体の状態で発生するのではなく,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD)など
  の補酵素と結合した形で電子伝達系に運ばれます。CO2 は細胞から出たら,毛細血管の中の赤血球の
  ヘモグロビンに結合したり,他のタンパク質に結合した状態で,運ばれます。最終的には肺から外に
  吐き出されます。また,TCA 回路から出た CO2 の中には,炭酸イオンとして細胞内にとどまるものも
  あるだろうと思います。

(米津さん) 酸化的リン酸化の「酸化」は ATP が H+ を使って合成されるところから来ているので
  しょうか?
 (答) う〜ん。そうですね。考えたことがありませんでしたが,電子伝達系では,NADHNAD
  なりますよね。これは「酸化」です。また,そうして生じる水素原子は,酸素と結合して水になります
  よね。これも,水素側から見れば「酸化」です。だから・・・じゃないでしょうか。

(米津さん) NADH が電子をどのように持っていて,どんな風に酵素に渡すのかよくわかりません。
 (答) NAD と結合した水素原子は,水素イオンと電子に分離します。電子伝達系を構成する複数の
  タンパク質は,電子を次々と受け渡します。その過程で電子の持つエネルギーが徐々に減衰して
  そのエネルギーを利用して水素イオンが内膜と外膜の間に汲み出されるのですが,これ以上詳しい
  ことは私には説明できません。インターネットなどに画像もたくさんあると思いますので,調べて
  みてください。

代謝経路のネットワーク

(佐伯君) アミノ酸は分解されて TCA 回路に使われると言っていましたが,TCA 回路に使われない
  アミノ酸は存在しますか?
 (答) 生体を構成するアミノ酸はどれも,分解されていけば TCA 回路に入っていきます。

(礒村君) 酵素がグルタミン酸とアンモニアを結合させてグルタミンを合成するのなら,オルニチン回路
  は相当な量のアンモニアがないと働かなくないですか?
 (答) そんなことはありません。グルタミンの合成といっても,細胞内の全ての窒素(アンモニアや
  アミノ基など)を吸収できるほどの量にはなりません。すぐ上の佐伯君の質問にもありますが,
  アミノ酸は分解されて TCA 回路に入り,エネルギー源としても利用されています。何でも,動物では
  エネルギーの 10% 以上を,アミノ酸の分解によって得ているそうです。そう考えると,相当な量の
  アミノ酸が代謝されていることになりますよね。ここで,アミノ酸の構造を思い出してください。
  どのアミノ酸にも,アミノ基が含まれていますよね(当たり前か〜笑)。一方,アラニンセリン
  システインなどはピルビン酸になるとスライドに書きましたが,ピルビン酸はアミノ基を含みません。
  アミノ基を安全に排出するために,オルニチン回路(尿素回路)はとても重要です。

(筒井さん) ATP は,アデニンがついたヌクレオチドですが,スプライシングで取り除かれたイントロン
  は,分解されていくと ATP として利用できるのですか。
 (答) 利用できます。ただし,講義中に話しましたが,ポリヌクレオチド鎖中のヌクレオチドには
  リン酸が 1 個ずつしかついていません。ですから,スプライシング後に分解されたイントロンから
  出てくるのは ATP ではなくアデノシン一リン酸AMP)です。さて,この AMP は,下記のような
  ヌクレオチド合成経路の一部になっています。図のちょうど真ん中あたりに AMP がありますよね。
  AMP は ADP を経て ATP となり,それで RNA の合成に使えるようになります。
  ヌクレオチド合成経路
(迫田さん) ヌクレオチドヌクレオシドなどは,何回くらいサルベージ経路で再び使うことができ
  ますか。一回だけですか。
 (答) 回数に制限はないと思います。再び使われるか,完全に分解されてしまうか,あるいは何か
  別な物質へと変換されていくか…。いずれにしても回数の縛りはありません。ちなみに,サルベージ
  経路という言葉は講義で使いませんでしたが,よく知ってましたね。サルベージ(salvage)は,
  「救出」とか「回収」という意味で,ヌクレオチドの部分分解産物から,再びヌクレオチドを合成
  することです。「節約経路」と呼ばれたりもします。

(溝渕さん) カルビン・ベンソン回路など,細胞で起こる反応は一瞬でおこなわれているのでしょうか。
  けっこう複雑な反応に思えます。
 (答) そうですね。速い反応もあるし遅い反応もあると思いますが,速いものは何百分の一秒とか
  何千分の一秒というような速さで進むと思います。

前回の内容に関する質問・その他

(林田君) 今日教わった体の中での化学反応の経路?を学べる学問領域は何ですか? 高知大学で
  勉強できるでしょうか?
 (答) 海洋生命・分子工学コースの生化学研究室(鈴木先生,湯浅先生,宇田先生)では
  酵素の働きや化学反応の研究をしています。一つ一つの遺伝子を gene といい,一つの生物が持つ
  全 DNA をゲノムgenome)と言いますよね。それと同様に,「代謝経路のネットワーク」の
  全体像はメタボロームと言います。メタボロームを理解しようとする研究はメタボロミクスと言います。
  もちろん,全体像を理解しようと思うと,個々の代謝経路の化学反応について,実験をベースに
  研究するのは難しく,多くの場合,バイオインフォマティクス(コンピューターを利用した研究)
  になりますね。メタボロームについて徹底的な研究をしていることで有名なのは慶応大学です。

(Y・S さん) 細胞を核ごと半分に切ったらどうなるか。 核を半分に切ったとき,相同染色体を,
  それぞれの核に一つずつ入れることができれば,どちらの細胞も生きていくために必要なすべての
  遺伝子をもつことができるので,両方の細胞が生きていくことができると思います。
 (答) その考え方はよいと思います。ただ,二倍体の細胞の場合,半分に切ると半数体になって
  しまいますから,それをどうにかして元に戻さないと正常に生きられないかも知れませんけどね。
  それと,何より問題なのは,核を半分に切ったときに,二つの断片に均等に相同染色体を分配する
  なんてことが本当に可能なのか…ってところですね。その実現可能性についてはどう思いますか?





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