2016 生物学概論 II
12/6 の質問

第 1 回の講義(12 月 6 日)の質問への回答です。
「回答」 は 「解答(正解)」 とは意味が違うので,
そこは誤解のないように。みんなの質問への私の返事です。わからないことはわからないと書きます。
みんなの質問の中には,未解決の重要な課題もたくさん出てきます。何年後かに,みんな自身が
研究者になってそれを解決することになるかも知れません。ここに出てくる質問がそういうネタになる
ことを願っています。
 実際,今回も難しい質問や学問的に重要な質問がたくさんありました。私自身は分類学や系統学が
専門ではないので,十分に詳しい返事を書けていないと思います。また,間違ったことも書いてしまう
かも知れません。おかしいな(?)と思ったら,どんどん質問・反論をしてください。
 質問に答える中で,難しい用語をたくさん使うかもしれません。赤字にした用語は,わからないようなら
インターネットや参考書で調べてみてください。理解できない部分への再質問も歓迎します。また,
講義のときに配る質問票だけでなく,普段からメールなどで質問をくれてもいいですよ。
質問票は出欠確認
を兼ねていますから,必ず名前を書いて提出してください。

質問をくれた人へ直接返事を届ける気持ちをあらわすために,質問した人の名前を載せています。
「みんなで考えようね」 という意識を持ちやすいと思うのですがいかがですか?名前を載せて
ほしくない人は,質問票にペンネームを書いてください。その場合でも,名前は忘れずに!
質問票は出欠確認を兼ねています。
それから,名前については基本的に姓だけを載せていますが,
同姓の人が複数いる場合は名も書きました。みんなの名前と顔が一致するまでは名前を呼び間違え
たりすることもあるかと思いますが,おゆるしを。

湯浅先生のテストの点数がわかりますか(?)という質問がありましたが,わかります。採点が
終われば KULAS で連絡があるだろうと思います。そうしたら答案を受け取りに行ってください。



生物の分類と系統


(Yang 君) 生物分類におけるドメインの定義は何ですか。
 (答) 高校生物で教わる五界説では,生物を動物界植物界菌界原生生物界モネラ界
  5 つの界に分けています(原生生物界は多系統なので系統を反映していないんですけどね)。
  で,これらのうち,モネラ界に属する生物は原核生物で,それ以外の 4 つの界に属する生物は
  どれも真核生物です。ところが,その後たくさんの古細菌(温泉だとか濃い塩水だとかに棲む
  細菌)が発見されると,原核生物である古細菌が,実は他の普通の細菌(真正細菌)なんかより
  むしろ真核生物に近縁であることがわかってきました。つまり,原核生物と真核生物の間に
  線を引いて 2 つに分けると原核生物は単系統群ではないということになるのです(下図)。
  系統樹
  そのようなことから,今では真核生物,古細菌,真正細菌の 3 グループを「ドメイン」という
  階層に位置づけて界より大きな分類群としているのです。ただし,ここ数年の研究では,
  真核生物は,多様化した古細菌の中の一つの分類群から進化したものだということがわかって
  きました。これは,真核生物と古細菌の関係が,ちょうど鳥類と爬虫類の関係のようである
  ことを意味しています。系統分類学って,面白いけど大変ですね。

(小梶君) 系統樹において,真正細菌よりも古細菌の方が真核生物に近縁であるということ
  でしたが,具体的に類似点のようなものはありますか?
 (答) タンパク質のアミノ酸配列とか,酵素のサブユニット構造とか,古細菌と真核生物の
  共通点はかなり多いです。遺伝子のプロモーターの配列や転写開始の仕組み,翻訳開始の
  仕組みなどについても,古細菌は真核生物に似ています。

(岡崎君) モネラ界の「モネラ」の意味って何ですか。
 (答) う〜ん。ごめん。語源はわかりません。今日の講義でも話したように(そしてこのページ
  冒頭の Yang 君への回答に書いたように),モネラ界に属する真正細菌と古細菌が,実は
  単系統ではないことがわかり,「モネラ界」という分類群は,使われないようになってきました。
  なので,もう忘れてもいい単語かもよ(笑)。

(小梶君) 分類の階層のところで,しばしば図鑑等で見かける「亜目」がなかったのですが,
  それはどういうことですか?
(山崎さん) 科や目は,進化の系統をあまり反映しないと聞きましたが,科や目はどうやって
  決めるのですか。
 (答) 今日も「スズメバチ上科」なんてのが出てきましたが,所属する種の数がすごく多い
  というように,分類して整理しても,なおごちゃごちゃしてややこしい場合などに,追加の
  階層を用意してさらに整理しようとするわけです。特に昆虫は種の数がとても多いので
  そのような追加の階層が多くなりますね。科や目も,門や綱の内部の生物たちを分類して
  整理するために,似た者どうしをグループ分けするために設けられる階層です。それが
  必ずしも単系統になっていないことが多いのです。

(菊池さん) どうして鳥類が爬虫類に近縁だとわかっても,鳥類が爬虫類として分類されなかった
  のか。
 〜似たような趣旨の質問: 谷島君,永野君
(井上さん) シソチョウは動物分類学ではどこに属するのでしょうか?
 (答) 科学的に慎重に検証された場合には,できるだけ系統を反映する分類に修正するのが
  普通だと思います。現在では,鳥類を獣脚類亜目)の中の一つの分類群として位置づける
  考え方が徐々に広がってきているんじゃないかと思います。まだ十分に浸透していないという
  ことでしょうか。
   始祖鳥は現在の鳥類の祖先に近いと考えられていて,鳥類に分類されていますが,鳥類は,
  系統関係をしっかり反映させた新しい分類ではマニラプトル類という正真正銘の恐竜の中の
  一つのグループとして扱われています。

(三輪さん) オオカミとイヌが同種ということは,今度からイヌを見たとき,「あ,オオカミ
  がいる」と言っても正しいということか。
 (答) 恐竜の研究をしている人たちの中には,鶏肉を食べに行くときに「恐竜を食べに行く!」
  と言う人がいるそうですよ。それと同じでしょうかね。それを言ったときに友だちがどう
  反応するかは保証できませんけどね(笑)。
   ま,それは冗談として,イヌの中にもいろいろな品種がいますよね。土佐犬を見て「あ,
  チワワだ」と言ったら噛みつかれるかも知れません。そういう意味ではオオカミとイヌも
  交配可能とは言え,かなり違っていますから,それなりの名前で呼んであげた方が,
  彼らもうれしいかも知れませんね。

(高橋君) ワニとトカゲとヘビは,どうして違うとわかったのか。
 〜似たような種類の質問: 横田君,植本さん
(佐藤さん) 生物を分類する際に DNA 配列や生殖隔離を主に利用して分けるのか。他にも
  文不意に参考にする方法はあるのか。
 (答) 分類は,もともと形態(骨の形とか…)や生活の仕方(殻のある卵を産むとか…),
  代謝の経路の違い(例えば哺乳類は窒素を尿素の形で排出するのに対し鳥や爬虫類は尿酸の
  形で排出するとか…)など,体の外や内で見られるあらゆる特徴を基準として,似たものを
  グループにまとめるという方法で行われてきました。そのような特徴(形質)の中でも
  重要と思われることと,そうでないこと(よく収斂進化をするから似ていても当てに
  ならない?)とで重み付けをします。そうしてできるだけたくさんの形質を比較して
  どれとどれが近縁だという系統関係を決めるのです。最近は,それに加えて佐藤さんの
  言うとおり遺伝子(DNA)の塩基配列を比較して系統関係を推定したりもします。

(土井さん) なぜ系統的に近縁な生物(スズメバチとアリ,四足動物と肉鰭類)ほど
  外見的な特徴では似ていないことが多いのか疑問に思いました。
 (答) う〜ん。どちらかというと,近縁なものほどよく似ているのが原則なんですけど
  たま〜に,近縁なのにあまり似ていないものがいたりするわけです。進化のスピードは
  すべての生物で同じではありません。DNA に変異が入っていくスピードも,生物の系統に
  よって同じではないのです。それで,ワニは鳥と近縁なのに,むしろ鳥よりもトカゲに
  似たところが多い…なんてこともあり得るわけですね。

(小田君) トラとライオンの子が繁殖できないことの調べ方が気になりました。
 (答) 可能ならば実際にやってみるのが正しいです。ただマイヤーの言葉の中にも
  「実際に(あるいはおそらく)交配し…」なんて書いてありましたよね。中にはきちんと
  確かめられていないケースも結構あると思います。

(磯江さん) イヌとオオカミ,ブタとイノシシのように交配可能な生物と,交配不可能な生物
  との間にはどのような違いがあるのか。
(山新君) 違う種どうしで交配し,できた生物は子を作れないとあるが,染色体数がうまいこと
  合えば,作ることは可能ではないのか?
 (答) 磯江さんの質問に対して,山新君が一つの答えを提示してくれましたね。山新君の
  質問は専門的で具体的で,よいですね。卵や精子ができるときには減数分裂をします。
  このとき,両親からもらった染色体のうち,ほぼ同じ配列の染色体(相同染色体)が寄り添い
  二価染色体になります。そして相同染色体の間では乗換えが起こります。この過程は卵や精子
  の形成に必須の過程であり,乗換えができないような突然変異体では卵や精子が正常に形成
  されません。異なる種の両親から生まれた子では,両親からもらった相同染色体の配列が
  あまり or 全然似ていません。場合によっては染色体の本数すら異なっています。これだと
  減数分裂のときに,個々の卵や精子への染色体の分配が正常にできず,結果として卵や精子が
  正常に分化しません。そういったことが雑種の子に生殖能力がない大きな原因の一つだと
  思います。山新君は「数が合えば…」と言いましたが,数が合っているだけでは足りません。
  やはり配列がよく似ていないとダメなんですね。

(春さん) テレビでオオサンショウウオのハイブリッド(日本のものと中国のものとの間に
  生まれたもの)がいるとありましたが,ハイブリッドどうしで交配すると何か問題はあるの
  でしょうか?
 (答) 日本産のオオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオは一応別種とされて
  いますよね。でも一緒にいれば自然に交配して子孫を残せるので,同じ種と考えた方が
  いいんじゃないかと思います。ただ本来,日本と中国に別々に住んでいれば交配することは
  あり得ません。生殖隔離が起こりはじめているともいえます。交流がなかったので,両者には
  互いに異なる特徴がいろいろとあります。それは,ヒトという 1 種の中にもいろいろな人種が
  あるのと同じようなものじゃないかと,私は思います。そうだとしても,人の商業活動(?)
  が原因で,日本固有の特徴を示すオオサンショウウオが,みんなチュウゴクオオサンショウ
  ウオとのハイブリッドになってしまえば,「地域個体群が失われる」のと同じことですから
  それはよくないことだと考えられているのだと思います。

(有吉さん) 違う種どうしを交配して,できた子が子孫を残せた場合,その子孫と交配で
  できた雑種の学名はどうなりますか?
 (答) イヌとオオカミは,昔は別種として扱われていました。しかし交配して子孫を残せる
  ことがわかりました。その結果どうなりましたか? 両者は同種だという結論になったわけ
  です。すると,「雑種」に新しい学名が与えられるのではなく,両者の学名が統一される
  という結果になるわけです。そもそも両者の間に生まれた子は種間の「雑種」ではないと
  いうことにもなります。

(春さん) もし,クローン人間が(人間でなくてもよいのですが)交配を行えたら,人間と
  して種に属すのでしょうか? それとも別の種になるのでしょうか?
 (答) クローン人間なんて作っちゃダメですよ(笑)。ヒトのクローンを作製することは
  禁止されています。なので仮定の話になりますが,クローンというのは同じ遺伝子型を
  もつ複数の個体に対する呼称です。そういう意味では,出芽で増えるホヤもクローンって
  ことになります。細胞分裂で増殖するゾウリムシの細胞たちもクローンです。自然に生まれる
  ヒトのクローンもありますよ。それは一卵性の双子です。本来 1 人のヒトになるはずだった
  1 個の受精卵がどういう理由でか(わかっていません)2 個に分かれて,2 人のヒトになった
  のが一卵性の双子です。1 個の受精卵に由来するので,基本的に遺伝子は完全に同一です。
  …で,仮に,ヒツジのドリーと同じように,ヒトのクローンが生まれたとしても,それは
  「あとから生まれたきた一卵性の双子」ということです。それが「人間じゃない」なんて
  ことはあり得ません。クローンとして生まれてこようと,それはれっきとした人間です。
  繰り返しますが,あくまで「仮に」の話ですよ。

進化・突然変異

(藤木君) 人間は,地域によって黒人,白人などがいますが,やはり遺伝子によるものなの
  ですか? また,なぜ地域によって色が変わってしまったのだろうか?
(堀川さん) 目の色,髪の色が違う兄弟は,もともと親から受け継いだ遺伝子自体が違うの
  でしょうか? それとも,受け継いだ遺伝子自体は同じ,もしくは類似しているが発現する
  部位が違うためにそのような違いが生じたのですか?
 (答) 今日の講義で話したように,生物には偶然の突然変異によってさまざまな多型
  あります。肌の色も多型です。異なる性質をもつ個体は,環境に適応すると勢力が増すし
  環境が適さないと集団の中で個体数を減らしていきます。メラニン色素は紫外線を吸収して
  細胞のもつ DNA に傷がつかないように保護する役割を持っています。ですから赤道域の
  強烈な日差しの下では肌の色が濃い方が有利です。一方,北欧などの日差しの弱い環境では
  メラニンで保護する必要はありませんし,むしろビタミン D を活性化するためなどのため
  日光を積極的に浴びる必要があるので,肌の色は薄い方が有利なのです。
   兄弟でも,体の特徴が違うことは普通ですよね。それらの多くは遺伝子で決まっていて
  受け継いだ遺伝子の塩基配列が違うことに原因があるはずです。堀川さんの質問の中に
  「発現する部位が違うために…」という言葉がありますね。実は遺伝子がどこでいつ発現
  するかを決めるのも DNA の配列です。mRNA として転写される配列よりも上流側や下流
  側,あるいはイントロンの内部に,その遺伝子がいつどこで転写されるのかを決める配列
  があるのです。その配列はエンハンサーと言います。ですから,発現する部位が違うこと
  も,結局は親から受け継ぐ DNA の配列によって決まるわけです。

(三輪さん) 祖父や祖母に似ているとき,よく“隔世遺伝”というが,遺伝子は親から伝え
  られるのに,この考え方は正しいのか。
 (答) 隔世遺伝は,劣性の遺伝子にごく普通に見られる遺伝様式です。わかりやすいように
  血液型で説明しましょうか。父方の祖父の遺伝子型は AO,血液型(表現型)は A 型ですね。
  同様に,父方の祖母は O 型,母方の祖父は AB 型,母方の祖母は B 型です。みんな違う
  血液型ですね。さて,お父さんもお母さんも,遺伝子型は AO で,血液型は A 型です。
  その両親の間に生まれた子の遺伝子型が OO で,血液型が O 型です。ここで,子の血液型
  は,父方の祖母の血液型が隔世遺伝したものと言えます。隔世遺伝って,名前が大袈裟だから
  特別なものと思ってしまいがちですが,こんなの優劣のはっきりした遺伝子の遺伝では
  ありふれた現象ですよね。
  血液型の隔世遺伝

(永野君) 突然変異が環境の変化からおこることはないのか。
(長沼君) 突然変異は DNA にキズがつくことが原因であると習ったが,人為的に DNA に
  キズを入れて突然変異(さらには生物の進化)を促すことができるのか。
 (答) DNA に損傷を作るような因子はどれも突然変異の原因となります。それらは放射線
  活性酸素
,化学物質(発がん物質)などです。それらが作る DNA 損傷は,どれもすぐに
  修復可能なのですが,やはりある程度の頻度で修復の失敗がありますから,それらの要因に
  曝される機会が多くなれば,突然変異の危険性も増します。例えば,ヘビースモーカーは,
  吸わない人に比べて,肺の細胞が発がん物質に曝される機会がずっと多いですから,統計的に
  有意に突然変異が多く起こります。そしてがんになるわけですね。。。
   そういうことですから,人為的に DNA に傷をつけて突然変異を誘発することはできます。
  これは大腸菌や酵母,ショウジョウバエや線虫,ゼブラフィッシュなどで遺伝学の研究を
  するときに使われてきた実験手法でもあります。ただ,そのように突然変異を誘発しても
  生物が進化するようなことはありません。生物の進化はもっとずっと長い時間スケールの
  中で,一つ二つの遺伝子ではなく大規模な DNA の変化を伴うものです。実験室では再現
  できません。

(井口さん) 突然変異は,紫外線等の刺激により DNA にキズがつき,それを治そうとして
  他の塩基に変わってしまうことで生じるものだが,体はそのキズをどのように,またどの
  くらいの時間をかけて治すのか。
 (答) 例えば,紫外線を浴びると DNA 中の連続したピリミジン塩基(多くの場合連続した
  チミン)の間に共有結合ができてしまいます。DNA の鎖の中で TT という塩基配列があって,
  その二つの T の間に共有結合があるなんて,正常ではありませんよね? こういうのを損傷と
  いいます。このような損傷は,通常,瞬く間に元通りに修復されます。チミン二量体の場合は
  これを見つけて共有結合を切る DNA フォトリアーゼという酵素が修復します。DNA の
  損傷には,二重鎖の切断,ヌクレオチドの(異常な)化学修飾,塩基の脱落など,いろいろ
  ありますが,それらはさまざまに異なる方法で修復されます。ここで全部説明することは
  できませんので,自分でも調べてみましょう。この授業の後半でも,少しそれについて
  勉強します。また,金曜 2 限の『分子遺伝学』(142 教室)では,来週(12/16)
  DNA の損傷と修復,突然変異などについて講義しますので,その時間に聴きに来てくれたら
  そこでは少し詳しく話をしています。
   「どのくらいの時間をかけて」という質問に関しては,実際の時間はケース・バイ・ケース
  でしょうから,「〇〇秒」というような具体的な数字では答えられません。

(堀川さん) 突然変異の話で,DNA に傷がつくと修復され,元通りになるが,塩基配列が
  元通りになるとは限らないとありましたが,これは複数のコドンが 1 つのアミノ酸を指定
  するのと関係があるのですか?
 (答) う〜ん。直接は関係ありません。複数のコドンが 1 つのアミノ酸を指定するという
  現象は突然変異ではありません。でも,例えば,遺伝子の翻訳領域でグルタミン酸を指定
  する GAG という塩基配列が,偶然の DNA の損傷と,修復ミスのせいで GAA という配列
  になってしまったとしましょうか。この GAG から GAA への変化は,突然変異です。でも
  この突然変異で,指定するアミノ酸は変化しませんでしたね。これは複数のコドンが 1 つ
  のアミノ酸を指定するという現象があるおかげ(?)で,事なきを得た…と言ってもいい
  でしょうから,そういう意味で,多少の関係はあると言えるかも知れませんね。

細胞説


(深澤君) 細胞の核を細胞ごと半分にしてしまったら,再生はできなくなりますか。
 (答) それはいい質問です。湯浅先生の講義で学んだ知識を駆使して,どうなるか予想を
  してみてください。期末試験の問題にしようかな〜(笑)?

(谷井さん) すべての細胞は細胞からつくられる,とありましたが,地球上に初めて出現した
  細胞はどのように誕生したのでしょうか。親となる細胞を持たない一番初めの細胞は例外
  ということでしょうか。
 (答) 鋭い! そのとおりです。最初の細胞がどのように誕生したのかは謎です。そのくらい
  古い時代で,また硬い殻も持たず,顕微鏡でようやく見えるような小さなものです。数も
  少なかったでしょうし。その痕跡を化石として見ることはほとんど不可能です。いろいろな
  理論や再現実験がありましたが,本当のところはわかりません。「化学進化」というキー
  ワードでネット検索をしたらいろいろな情報を見ることができると思います。

(在間君) ウイルスは光も熱も感じないのに,細胞の中に入ったことを感じるのはなぜですか。
(粟田君) ウイルスは,細胞の中に入って増殖を始める前,自律的に動くことはできないの
  ですか?
 (答) ウイルスは細胞の中に入ったことを「感じる」ことはできません。自律的に動くことも
  ありません。喩えが適切かどうかわかりませんが,動物を捕獲するためのバネ仕掛けの罠。
  動物がそれを踏むと留め具がはずれて脚をはさまれます。このとき,罠は,動物が踏んだこと
  を「感じた」わけじゃありません。動物が留め具を踏んではずしただけです。ウイルスは
  精巧にできていますが,自動機械のようなものです。細胞表面にくっつくと,細胞内に
  取り込まれ,細胞内に入ると自己複製のスイッチが入るのです。これも,詳しくはここで
  説明できませんが,わからなければ直接質問をしに来てください。

(加藤君) 私が死んだら,私の細胞も同時にすべて死にますか。
 (答) 縁起でもないことを言うんじゃありません(笑)。まあ,それはそれとして,ヒトが
  個体としての死を迎えると,心臓が止まりますよね。すると体の隅々まで酸素と栄養を
  運んでいた血流が止まります。すると間もなく,体中の細胞は酸欠で死んでしまいます。
  ただ,HeLa 細胞のように,体から取り出して,十分な栄養を与えるなど,適切に管理
  すれば,細胞はさらに長い期間生き続けることもあります。

(有吉さん) 細胞の死の定義は何ですか?
 (答) 一般的には,細胞が生きているか死んでいるかを見分けることは簡単ですが,
  「生命とは何か」を定義するのが難しい…ということは,「生きている」ことと「死んだ」
  こととの違いを定義するのも難しい…ということになります。
   例えば,細胞は細胞外から栄養を吸収して,老廃物を排出します。細胞が死ぬと,細胞膜の
  内と外の間で,そのような物質の選択的な行き来がなくなります。やがて細胞の中の秩序は
  失われて死んだ状態になります。ただ,例えば干上がった池などで休眠シストを形成する
  原生生物や,クマムシなどは,代謝を全然せず,細胞内外の物質のやり取りもせず…まさに
  死んだような状態になっています。高熱や放射線にも耐性を示し,真空にしても,レンジで
  チンしても死にません。それでも,水に戻すと再び動き出すので,そいつらは明らかに
  死んではいないのです。そうなると,「生きている」という定義を一生懸命考えても,その
  定義に当てはまらない…それでも死んでいない細胞ってのがあるわけで…難しいです。

(高菜さん) 分化する…ということは,胃の細胞と腸の細胞はまったく違うということですか?
 (答) 違います。ちょっと知識と経験があれば,顕微鏡写真 1 枚で,胃の細胞か腸の細胞か
  を見分けることもできるでしょう。そうは言ってもどちらも内胚葉性の,消化器系の組織の
  細胞です。例えば神経細胞や筋肉細胞などと比較すれば,胃の細胞と腸の細胞は互いによく
  似てはいると思います。

(谷岡さん) クラゲの仲間の中には細胞群体となっているものがいると聞いたことがあるのです
  が,それぞれ一つ一つは役割が分担されている細胞になっていると思います。この分化?して
  いる細胞も,切り離して適切な栄養を与えれば増殖できるのですか? その場合は完全な 1 個体
  になるのでしょうか。
 (答) う〜ん。クラゲは正真正銘の動物(多細胞生物)で,細胞群体ではありません。動物に
  一番近縁な原生生物襟鞭毛虫の中には細胞群体を作るものがいます。襟鞭毛虫は,カイメン
  襟細胞とよく似ています。下図は単細胞性の襟鞭毛虫ですが,この細胞が複数集合して細胞群体
  になっている種もあります。
  襟鞭毛虫 単細胞性の襟鞭毛虫(Wikipedia)

ホヤ


(藤木君) ホヤは出芽で増殖するが,どのようなときに増えるのか? また,死んでしまった場合
  生きているホヤと一緒にくっついている死んだホヤは分解されるのですか?
 (答) ほとんどいつでも増えています。後半の質問は,ホヤの種類によりますが,藤木君の
  言うように,老化して死んだ古い個体は分解されて新しい個体の栄養になる場合があります。
  そういうホヤの種があります。





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