ホヤの神経管形成
 

Nodal は,細胞表面の受容体と結合して,その細胞の活動に影響を与えるタンパク質です。
胚の中の Nodal タンパクを過剰にしたり,逆に Nodal タンパクが働かないようにしたりすると, 神経管が閉じなくなります (右図)。
ですから,Nodal の働きは,神経管の形づくりに必要であることがわかります。
Nodal の機能阻害
Nodal は cdx の転写を活性化する

Nodal は cdx という遺伝子の発現を活性化します。
上の 3 枚の写真では,cdx mRNA を青く染めています。染まっているのは,将来神経管になる細胞です。
Nodal を過剰に発現させると,本来 cdx を発現しない細胞が cdx を発現するようになります (真ん中の
図の赤い矢尻)。 Nodal の機能を邪魔すると,cdx は発現しなくなります (右の図の青い矢尻)。
このことから, cdx 遺伝子が発現するために Nodal が必要だということがわかります。
では,今度は cdx の機能を妨害してみたらどうなるでしょう?
ドミナントネガティブという手法で,cdx の機能を妨害すると,Nodal の働きが乱されたときと同じように,神経管ができなくなります。
右の図では,すべての神経細胞で発現する etr 遺伝子の mRNA を青く染めています。
上の写真は正常胚を背側から見たところです。 etr を発現する神経細胞が,背中側の正中線上に整然と並んでいることがわかります。下の写真は cdx の機能が邪魔されたときの胚です。神経細胞が正中線上に並んでいません。
この結果から,cdx が機能しなくても,神経細胞は分化している・・・けれども,神経管の形づくりは正常に行われない・・・ということがわかります。
cdx の機能阻害

cdx と同様に,Nodal によって発現が活性化する遺伝子はたくさん見つかっています。
その中には,細胞の運動や,形の変化に関わるのではないかと思われるようなタンパク質をつくる
遺伝子がたくさん含まれています。

これらの研究は以下の論文にまとめられています。
*Mita, K., Koyanagi, R., Azumi, K., Sabau, S.V. & Fujiwara, S. (2010) Identification of genes downstream of Nodal in the Ciona intestinalis embryo. Zoological Science 27, 69-75.
*Mita, K. & Fujiwara, S. (2007) Nodal regulates neural tube formation in the Ciona intestinalis embryo.  Dev. Genes Evol. 217: 593-601.

現在,私たちは,それらのタンパク質が神経管の形づくりにどのように貢献しているかを,調べようと
しています。