生体機能物質工学実験 II

2‐X. (おまけ)予備実験の結果


はじめに

このページでは、2-1 から 2-11 までの実験を実際にやってみた結果をお見せします。
それは、皆さんが実際に作業をする際に、具体的なイメージを持てるように、と
考えてのことです。
このページはレポートの見本ではありません。
ここでは、ただデータを見せるだけで、結果の解釈や考察はなるべくしないようにします。
議論や考察は、皆さん、自分自身でじっくり考えてレポートにしてください。
 


RNA 抽出

2-1 で抽出した RNA (100 μl の DEPC処理水に溶かしてある)のうち、 10 μl を
1% アガロースゲルで電気泳動した結果です(図1)。

図1 


PCR

抽出した RNA からの逆転写によって合成した cDNAを鋳型にして、2‐3 の方法で
カリガネエガイのヘモグロビン(BvII) cDNA を増幅した結果です。 PCR 反応液
50 μl のうちの 10 μl を泳動しました(図2)。左のレーンが φX174/HaeIII マーカー。
右のレーンが PCR 産物です。

図2 


PCR 産物の制限酵素切断片のアガロースゲルからの精製

PCR 産物とプラスミド(pQE-30)をそれぞれ 2-4 のプロトコルどおりに制限酵素で
切断して電気泳動した結果が 図3 です。ゲルから各 DNA 断片を精製し、20 μl の
TE に溶かした後、5 μl 分を電気泳動した結果が 図4 です。プラスミド断片の精製は
2-5 のプロトコルどおりに Easy Trap で行いましたが、ヘモグロビン cDNA は
ズルをして、別のキット(QIAEX II)で精製しました。
図3 は左から PCR 産物、プラスミド、φX174/HaeIII マーカーです。
図4 は左から φX174/HaeIII マーカー、PCR 産物、プラスミドです。
 

図3    図4 


トランスフォーメーション後のプラスミドクローンの制限酵素チェック

2‐6 で PCR 産物と pQE‐30 プラスミドを連結し、それを大腸菌に導入しました。
2-7 では大腸菌のコロニーを拾って培養し、プラスミドを抽出・精製しました。
そして、2-8 でそのプラスミドを制限酵素で切断し、正しく PCR 産物が
組み込まれているかどうかをチェックしました。ここに示すのは、その制限酵素
チェックの結果です。大腸菌のコロニーは 2 個拾いました。
2-8 では、HindIII で切るというチェックだけをしましたが、ここでは、 BamHI と
SalI で同時切断した結果も示します(図5)。

図5 では 5 レーンあるうちの真ん中が φX174/HaeIII マーカーです。
左の 2 レーンは HindIII で切ったものを泳動しました。左からクローン #1、#2 と
しましょう。右の 2 レーンは同じクローン #1、#2 を BamHI と SalI で同時切断
して泳動しました
 

「あれ?」と思いましたか?

2‐8 のページで、XhoI と SalI で切った切断末端をつないだので、その箇所は
もう XhoI でも SalI でも切れなくなると言いましたね。でも、実は(黙ってましたが)
今回の実験で作ったプラスミドは、正しくできあがったものを、SalI で切ることが
できるのです。なぜでしょうか?(ヒントはあっちこっちにありますが、一番わかり
やすいのは 2-4「知っておかなければならないこと」の部分だと思います。
そこのセクションを”穴のあくほど”読んでみましょう。)
 

図5 

クローン #1 と #2 では、BamHI と SalI で同時切断したときのパターンが違いますねぇ。
気づきましたか?
 


リコンビナントタンパクの発現

2‐10 の方法にしたがって、拾った大腸菌クローンのうちいくつかを培養し、
IPTG でリコンビナントタンパクの発現を誘導した後、大腸菌全タンパク質を抽出して
SDS-PAGE を行いました(図6)。
  図では、左から、3クローン分のタンパクを泳動しています。上の 図5 で見たクローン
#1 と #2 はそれぞれ左から 2 レーンめと 3 レーンめです。一番左のレーンに流した
タンパクは、それらとは別のクローンのものです。右端は分子量マーカーで、
バンドのサイズは上から、94、67、43、30、20.1、14.4 (単位は kDa)です。

図6 


リコンビナントタンパクの精製

2-11 の方法にしたがってリコンビナントタンパクを精製し、SDS-PAGE を行いました。
図7 はその結果で、レーンは左から、以下のとおり。
(1) 分子量マーカー(図6 と同じもの)。
(2) 大腸菌を超音波で破砕してタンパクを溶出させ、遠心でくずを除去した後の粗抽出物。
(3) バッファー B 中で His-タグ付きリコンビナントタンパクを Ni2+-NTA ビーズに吸着させ、
   ビーズを沈殿させた後にとった上清。
(4) 1 回めの洗浄液(バッファー C)
(5) 2 回めの洗浄液(バッファー C)
(6) バッファー E' を加え、ビーズから上清中に再び溶かし出したタンパク。
   
図7 
 


どう? イメージはわいた?


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