研究紹介

イネにおける
誘導抵抗性発現メカニズムの解明

 オアカボノアカアブラムシがイネの根に寄生するとイネは生理反応として寄生部位を褐変させる。この褐変部位は硬化しており病害虫に対しての抵抗性反応と考えられた。イネへのアブラムシの寄生から褐変呈色までの寄生部の生理変化を、遺伝子レベル、酵素活性レベル、他者産物動態レベルで、網羅的に解析をおこなっている。
現在までのところトリプトファンからセロトニンを経てこの褐変が生じることが判明し、一時的に高濃度のセロトニンが蓄積することも判明した。セロトニンがアブラムシの生育を強く阻害することからセロトニンの蓄積が直接的にアブラムへの抵抗性として働いていることが明らかになりました

植物の誘導抵抗性の解明

 植物は自身の身を守るために様々な防御機構を備えています。この防御機構は、トゲを作ったり葉を固くしたりする「物理的抵抗性」、天敵を呼び寄せて加害者を退治する「生物的抵抗性」、毒や摂食阻害物質を生産する「化学的抵抗性」に分けられます。ところが、トゲや植物毒のような「常在性の防御機構」は、もし病害虫が加害しなければ無駄になってしまいます。この防御に使う資源を植物の生長に利用できれば他の植物との生存競争に有利になるはずです。そこで、植物は病害虫が加害した時に初めて、抵抗性を発現する「誘導性の防御機構」をいくつも保持していることが分かってきました。
農作物の誘導抵抗性をうまく引き出せば、農薬を使うことなく、病害虫防除をできるかもしれません。

天然資源からの有用化学物質の
スクリーニング ―創薬シーズの探索―

 自然界には様々な植物・動物・微生物が存在し、彼らは様々な化学物質を生産・蓄積・分泌しています。多くの場合は外敵から身を守るための武器であり自然の中で生き抜くための知恵の結晶ともいえるものです。我々人類はこれらを自然界から見いだし有効利用してきました。それが薬用に利用されてきたのが和漢薬であったりハーブであったりします。あまり知られてはいませんが農薬として使われていた植物もあります。
研究室では植物や昆虫さらには海産生物の作り出す有機化学物質を研究し、医薬品や農薬・健康食品へのシーズを探索しています。

ピーマンによるフラボノイド生産技術の
開発と薬用利用

 研究室ではピーマンの害虫抵抗性の有機化学的解明を行い、ピーマンの葉にフラボノイドが多量に蓄積することを見出しました。これが害虫抵抗性発現を担うことを解明するとともに、薬理学的な研究を重ねこのフラボノイドが花粉症や骨粗鬆症の予防や症状軽減への利用が可能であることも解明しました。
現在はフラボノイドの効率的な蓄積方法の開発や高濃度にフラボノイドを蓄積する品種の探索、商品化に向けた技術開発を企業と共に行っています。

アオスジアゲハの寄主選択

 アゲハチョウはグループごとにほぼ決まった植物を食草としています。このような寄主選択には、成虫の寄主への誘引、寄主への産卵、幼虫の摂食の各段階で、寄主植物に含まれる化学物質によって制御されています。ジャコウアゲハ族とアゲハ族の寄主選択因子の研究はよく研究されてきました。その結果から、アゲハチョウの食草進化が明らかになってきましたが、両族の中間に位置するアオスジアゲハ族の寄主選択因子は未解明のままであり、画竜点睛を欠く状態でした。 そこで、研究室ではこれの解明を目指して研究を行っています。

アブラムシの生活環と寄主の栄養

 アブラムシは野菜類をはじめとして様々な農作物加害する害虫として知られていますが、生活する場所を季節で変えたり、単生殖をしたり、仔虫を生んだり、虫こぶを作ったり、独特の生活スタイルを持ちます。さらにそれらをいくつも組み合わせた生活環を持つことからアブラムシの生活環はほとんどが未解明と言っても差し支えありません。
研究室ではゴールを形成するアブラムシを対象にゴール形成のメカニズムや寄生者に対する植物の応答について有機化学・分子遺伝学的な解明を試みています。

PAGE TOP