卒業研究および修士論文のテーマ

化学生態学研究室では生物と生物の関わり合いを分子レベルで研究しています。そのため、卒業研究や修士論文では、学生自身が希望する生き物を扱うことも可能です。希望があれば、教員と相談しながら生物種の選定や研究対象とする相互作用をについて決定します。勿論、既に研究しているテーマを引き継いで実施することも可能です。

研究室では分子生物学的手法と天然物化学的手法を中心に、酵素化学や有機合成化学、分析化学的手を学びます。また植物や昆虫の採集、栽培、飼育を技術や、データの統計解析法を学ぶことから、医薬品や食品関連企業、さらには化学や環境コンサルタント会社への就職が期待できます(公務員も含みます)。
以下に近年の卒論・修論の研究テーマを紹介します。

イネの抵抗性機構の解明

日本の農業の中心は稲作です。そのため数多くの研究者が長い間様々な研究を行ってきました。それにも関わらず未だに分からないことばかりです。特に多くの研究者がイネの葉や実(米)を研究していますが、根の研究はほとんど行われていません。研究室ではこのイネの根に焦点をあてて抵抗性のメカニズムを研究しています。イネのゲノムは解明されており、様々な遺伝子組み換え体が存在することとから、このテーマでは分子生物的な手法を用いた研究を行うことが多いです。そのため最新の分子遺伝学的手法やビックデータの解析手法を習得することができます。勿論、昆虫(アブラムシなど)やイネの飼育・栽培技術や分析化学、酵素化学、天然物化学の手法を学ぶことが出来ます。

  • イネ根に抵抗性を誘導するアブラムシ由来の新奇エリシター
  • イネ根におけるアブラムシの加害に対する抵抗性発現機構の解明
  • エリシターによるイネ根における抵抗性誘導に関する研究
  • イネの抵抗性メカニズムの解明~オカボノアカアブラムシの加害~
  • イネの害虫抵抗性メカニズムの解明~オカボノアカアブラムシのイネ根への寄生~

植物の誘導抵抗性に関する研究

農業の生産現場では莫大な量の農薬が使われています。化学農薬の使用の是非はいろいろな考え方がありますが、環境負荷がより少ない農薬の開発が求められているのが事実です。これへの答えの一つは植物がもともと保持していた抵抗性を利用することです。この抵抗性をうまく引き出すために、研究室ではエリシターを用いた害虫防除の技術開発を、分子レベルを対象にした基礎研究から、圃場へ展開する応用研究まで幅広い研究を行っています。この研究では植物の栽培技術や分析化学、天然物化学の手法を学ぶことが出来ます。

  • スイートピーへのジャスモン酸処理によるハスモンヨトウ幼虫に対する摂食阻害活性に関する研究
  • ジャスモン酸処理によってピーマンに誘導される抵抗性に関する研究
  • イネにおいて殺卵物質を誘導するセジロウンカ由来の新奇エリシター

地域の植物からの有用化学物質のスクリーニング―創薬シーズの探索―

我々が使用している医薬品や農薬の90%以上は、もとを辿れば自然界に存在する有機物質に行きつきます。実は世界中の製薬会社や化学会社が新たな薬の開発の為に莫大な資金と人的資源を投入して、自然界から「薬の種」を探索しています。そのような創薬シーズは何もジャングルの奥地や海底深くにばかりあるわけでなく、身の回りのありふれた動植物にも含まれています。研究室では植物の生長阻害や、害虫の生育阻害・忌避活性をターゲットに創薬シーズを探索しています。成功すればこれらは農薬になりうるのですが、農薬のみでなく医薬品や健康食品に発展することもあります。研究では分析化学や天然物化学の手法を主に学ぶ他、昆虫や植物の飼育栽培技術を学びます。また、野外で様々な植物を採集し同定することから植物分類の基礎も学びます。一攫千金を目指してみませんか?

スクリーニング

  • 高知県野生植物からの創薬シーズの探索~コセンダングサからのダンゴムシ忌避物質~
  • 高知県産野生植物のダンゴムシ忌避活性に関する研究
  • 植物の生理活性物質の研究~ダキバアレチハナガサからの植物生長阻害物質の同定~
  • 植物の生理活性物質に関する研究
  • 植物の生理活性物質に関する研究~高知県野生植物の昆虫成長阻害活性と植物生長阻害活性~

開発・発展

  • 農作物による有用二次代謝産物生産技術の開発~光条件とフラボノイド生産~
  • ピーマン由来のフラボノイドの産業利用方法の開発

その他

研究室はいくつかの研究プロジェクトに参加している他、様々な研究機関や研究室と共同研究を行っています。そのため、前述とは少し異なった研究を行うことがあります。以下にその例を紹介しますが、天然物化学や植物生理に関わることならば様々な研究テーマが設定できますので、学生の皆さんも気軽に相談してみてください。

  • 害虫発生状態を可視化するためのセンサーの開発
  • 泥炭に含まれるセメント固化阻害物質の解明と改善
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