微細藻類によるバイオ燃料生産 

植物をはじめとする光合成生物は、「光合成」を行うことにより環境中の二酸化炭素を固定・利用します。 これら光合成生物の中でも、一部の微細藻類は、光合成をしながら、バイオ燃料として有用と考えられる脂質を 生産することが知られています。微細藻類によるバイオ燃料は、植物由来のバイオ燃料に比べて、桁違いに生産 効率が高いことが試算されており、またトウモロコシなどで見られるように食品との競合もないため、次世代 バイオ燃料として大変注目されています。
これまでに、一部の淡水産緑藻は、細胞内に多量の脂質を生産・蓄積する ことが報告されており、国内外でその応用を目指したプロジェクトが進行しています。その一方で、昨今の地 球温暖化などの気候変動に伴い、今世紀半ばには全地球的な水不足が極めて深刻となり、地球全体で20〜70億人が 水不足に直面することが予測されています(国連世界発展報告書)。 その際には、飲料水や農業用水源として 淡水資源をまず確保することが求められます。この様な予測を考慮すると、淡水の中で増殖する微細藻類よりも、 無尽蔵ともいえる海水を利用して増殖可能な海産微細藻類が、バイオ燃料の生産者として有利であると考えられます。 左の写真は、バイオ燃料を生産する海産微細藻類の例を示します。

 

 

  • 海産微細藻類によるバイオ燃料生産の可能性
  • これまでに、海産微細藻類の利活用に関するプロジェクトも国内外で始まっていますが、これらは主として 微細藻類が生産するトリグリセリド(中性脂質の主成分)を対象としたバイオ燃料生産を目指しています。 しかし、トリグリセリド由来の燃料は、分子内に酸素を有するため、石油系燃料に比べて熱量が不足しがちです。 その一方で、海産珪藻の中には、ジェット機や自動車燃料としてより有用と考えられる炭化水素を生産するものが 存在します(左図・右欄)。しかしながら、これらが産生する炭化水素量は少なく、生産コストに見合ったかたち での実用化は全く進んでいません。

     

     

  • 海産微細藻類によるバイオ燃料生産を実現するために
  • これらの海産微細藻類による、高品質なバイオ燃料の生産を実現するためには、燃料の生産性を向上させ、 生産コストの削減を図る革新的技術開発が重要となります。

    そこで本研究室では、この目的のために、新たな 遺伝子改良技術(特許出願中、下図参照)を開発しました。すでに、(独)水産総合研究センターと共同すること により、海産微細藻類に感染するウイルスより強力な遺伝子のスイッチ(プロモーターといいます)を取り出す ことに成功していることから、この強力に働く遺伝子のスイッチを用いて、バイオ燃料の生産に関わる遺伝子に 連結して、これを海産微細藻類に導入して発現させる実験を行っています。これにより、炭化水素高生産能を持 つスーパー海産微細藻の創生を目指します。

    さらに、京都大学大学院や東京大学大学院と共同して、これらの海産珪藻を用いて、太陽光を有効に 利用しながら高効率に培養可能なバイオリアクタ、ならびにその最適運転条件を解明・確立することにより、 バイオ燃料の生産性の向上を目指します。さらに本研究では、燃料油抽出後の藻体残渣から、 バイオエタノール等の生成や、珪藻土等の高付加価値を有する物質の獲得も目指すことにより、 コストに見合うバイオ燃料生産の実現を目指します。

     

     


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