研究テーマ



(1)光学活性な酵素モデル硫黄架橋多核錯体の自己組織化と立体特異性に関する研究

 含硫アミノ酸であるL-システインやD-ペニシラミンの高い反応性および錯イオン中における水素結合の形成やメチル基による立体効果などを利用し、絶対配置の反転を伴う立体特異的な多核錯体の合成を検討する。
 ルブレドキシン類似のMS4骨格を有する非対称型二核錯体の立体選択的な合成法を確立し、立体選択性が水素結合の形成と架橋硫黄原子を仲介とした二つの金属間での電子の偏りに起因していることを明らかにする。

     


(2)微量で効果を発揮する抗菌性金属錯体の開発に関する研究

 銀イオンは高い抗菌性を有することが知られているが,ハロゲンイオンの存在あるいは,熱・光などによって,抗菌作用が低下することが欠点である。その欠点が銀イオンを多核錯体中に担持させることにより解決できることを期待した。
 含硫配位子を持つ銀多核錯体を合成し,得られた化合物の立体選択性や立体的・分光化学的特徴について明らかにするとともに,酸化還元能に関する知見を得る。
 多核錯体の抗菌性について,大腸菌(Y
1090)を用いた最小発育阻止濃度測定(MIC法)に基づいて,抗菌活性物質としての有効性を模索する。

   



(3)NO発生物質としての金属ージニトロシル化合物の合成と有効性に関する研究

 生体内で内生し、極めて重要な生理的役割を担うNO(一酸化窒素)が配位した金属錯体について、構造や性質を明らかにするとともに、NOを合成あるいは発生する化合物としての有効性を見出す。
 含硫配位子を持つモリブデンージニトロシル錯体を合成し,得られた化合物の立体選択性や結合異性などの立体的・分光化学的特徴について明らかにするとともに,酸化還元能に関する知見を得る。
 光照射による脱ニトロシル化・自己組織化反応について検討し、NO発生物質としての有効性を模索する。


     


(4)光反応を利用したチオカルボン酸錯体からの金属ー炭素結合形成に関する研究

 含硫黄錯体の光反応に対する特異性について検討し、ビタミンB12由来のメチルコバラミンの反応性についての知見を得る。
 チオカルボン酸部分を有する配位子を持つコバルト(III)錯体を合成したのち,水溶液中での光脱炭酸反応から、S-Co-CH
2三員環キレート環を有する有機金属錯体を形成させる。
 錯体の立体構造を明らかにし、分光化学的・電気化学的挙動および共存配位子などが光脱炭酸反応へ及ぼす影響についても検討する。



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