total RNA の抽出/クオリティチェック

 実験の方法は,Chomczynski & Sacchi (1987) が発表した AGPC 法(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction 法)
を原理とした方法を用いる。ただし,詳細については,使用した市販試薬(RNA iso+ TAKARA社)の説明書に従っている。
 AGPC 法では、強力なタンパク質変性剤を含む水溶液中で細胞を溶かし,フェノール/クロロホルム抽出によってタンパク質を沈殿させる。
そのとき,溶液を酸性にしておくことで,DNA がフェノール/クロロホルム層(下層)に行き, RNA が水層(上層)に溶け込むことを利用して,
RNA を抽出・精製する。RNA iso+ は,細胞の溶解とフェノール/クロロホルム抽出が 1 ステップで作業できるように調合された試薬と予測できる。


★ 結果 ★

-吸光度測定による定量および純度測定
  測定のために超純水で希釈(6倍希釈)したが,器械に表示された数値は,原液に対する値である。

 1 班,3 班の「+++++」はバイオフォトメータの取説書によると「吸光度が高すぎる」というエラーであった。別の機器で再測定し,値を載せた。
 このことと 1 班,3 班のRNA 抽出がうまくいったかどうかとは,別問題である。泳動量と電気泳動の結果も合わせてしっかり評価して欲しい。

. . 再測定 発生段階 電気泳動量
1 班 濃度 (ug/uL) +++++ 1.5569 16 細胞期 1 uL
A260/A280 ----- 1.97
2 班 濃度 (ug/uL) 0.675 . 0.5 ug
計算
A260/A280 1.04 .
3 班 濃度 (ug/uL) +++++ 0.824 胞胚期
(B)
1 uL
A260/A280 ----- 1.87
4 班 濃度 (ug/uL) 0.489 . 0.5 ug
計算
A260/A280 1.81 .
5 班 濃度 (ug/uL) 0.433 . 原腸胚期
(G)
0.5 ug
計算
A260/A280 1.64 .
6 班 濃度 (ug/uL) 0.394 . 0.5 ug
計算
A260/A280 1.56 .
7 班 濃度 (ug/uL) 0.254 . プルテウス幼生
(P)
0.5 ug
計算
A260/A280 1.50 .
8 班 濃度 (ug/uL) 0.152 . 0.5 ug
計算
A260/A280 1.57 .
. . . . . .

-アガロースゲル電気泳動
  各グループの total RNA 水溶液をアガロースゲルで電気泳動した。M のレーンで泳動したマーカーは,二重鎖 DNA のマーカーであるため,
 RNA の鎖長を判定する物差しとしては使えないので注意すること。
  ただし,光の強さ(白くみえる部分)はそこにある核酸の量を反映していると考えてよい。強い光,太いバンドはそれだけ核酸の量が多い。


★ レポート作成のポイント

  
実験結果の説明として,上記の電気泳動写真および数値を使用し,抽出した RNA のクオリティチェックを自分たちでしてください。
 自分たちの班の結果を中心に述べるのが基本ですが,他班の結果も材料にして,濃度と電気泳動像のつじつまが合っている
 かどうかなど,考察してみてください。A260/A280 とは何なのか調べてみると深い考察ができるかもしれません。


★ 課題1
  今回の実習でやったアガロースゲル電気泳動は,RNA を正しく鎖長ごとに分離できる方法ではありませんでした。
  TAEバッファーにアガロース(1% w/v)を溶かし,固めたゲルを使い,TAEバッファー中で電気泳動しました。

  この課題で,「正しい方法」を自学で理解してもらいます。RNA をゲル電気泳動で分離する正しい方法について,説明してください。
 ただし,「○×○×法」のように単語で答えるのではなく,RNA の性質などについても触れながら,手順や使われる試薬などが
 「何ための手順なのか?」「その試薬にどんな効果があるのか?」が分かるように,でもなるべく簡潔に記述してください。




 2) 逆転写反応による cDNA 合成へ

 3) RT-PCRへ



TOPへ